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『VR経済圏』の胎動~『VR✖SNS』は何をもたらすのか?~

 日経電子版の記事【フェイスブック、仮想現実のSNS「ホライズン」を開始へ】は、VRのSNSという新しいサービスに関するリポートです。



 仮想現実と交流サイトを結び付けると一体どのような世界が実現するのでしょうか?――この2つを結び付けることで生まれるイノベーションには、計り知れないポテンシャルがありそうです。

 そこで、具体的なサービスはさておき、一般論として『VR✖SNS』は何をもたらすのか、まず、その世界を構成する要素を、一般の『SNS』の場合と対比して考えてみます――

▶『VR✖SNS』の世界と普通の『SNS』の世界

『VR✖SNS』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・要素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『SNS』

バーチャル空間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リアル空間
(理論上は無限の広がりがあり
瞬間移動できる)

時間の流れはリアルと同じ・・・・・・・・・時間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リアルな時間
時間の設定は無限にありうる
(リアルな世界と昼夜逆転にしたり、
永遠に夜の世界とか、1日25時間の設定、など)

アバター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・主体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人間
(どんなキャラクターにもなれる)

バーチャルアイテム・・・・・・・・・・・アイテム(モノ)・・・・・・・・・・・リアルなモノ
(仮想なのでどんなモノでもあり)

リアルな世界と非連続に・・・・・・・・体験(タスク)・・・・リアルな世界と連続で
完結できる                   完結する

あり・・・・・・・・・・・対面感(交流する相手と対面している感覚)・・・あまりない

深い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・没入感・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・浅い

特定のバーチャルワールドで・・・・・・・・マネー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・通貨
だけ使えるコインが設定される
かも知れないが、現実の通貨と
1:1で交換される

(リアルの通貨にしろコインにしろ
セキュアでなくてはならない)  

バーチャル経済圏・・・・・・・・・・・・・・・・・・経済圏・・・・・・・・・・・・現実世界の経済圏
  
作ろうと思えばいかような世界・・・・・・・世界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・現実の世界
でも作れる



 このように対比してきて気付いたのは、遠い将来(意外と近いかも知れない)、『VR✖SNS』を使うのにに不可欠なVRデバイスが高度化して、ハンドトラッキングなどのテクノロジーを遥かに超えた、AIによって制御される究極の性能を獲得した時には、そこに、あの名作映画「マトリックス」のような世界が出現するのではないか、という事です。……それは大げさかも知れませんが、いずれにしても、VRデバイスの性能の進化に比例して没入感が増大していくことは間違いありません……。

 それでは、上記のような『VR✖SNS』の諸要素から『VR✖SNS』の世界を予測してみると――

▶『VR✖SNS』の世界とは?

(1)『バーチャル・ワールド』・・・VRとSNSが結び付くという事は、VRの
   中でコミュニケーションを軸とした活動が出来るようになる、という
   事で、それは、VRの中だけで体験を完結できる=『仮想現実の世界
   での生活』という全く新しい体験をもたらす
。つまり、人間の活動の
   場として新たに『バーチャル・ワールド』が加わる
ことになる。

(2)『世界のデザイン』・・・『バーチャル・ワールド』は、原理的には、
   デザイナーによってどのようにでもデザインできる。サービスに
   よって提供する『バーチャル・ワールド』をどのようにデザインする
   か、『バーチャル・ワールドのルール』がきわめて重要
になりそう
   だ。極端に言えば、アウトローな世界だってデザインできる。ゲーム
   ならそれでいいかも知れないが、実際の人間活動の場としての
   『バーチャル・ワールド』では、現実の世界での法律・慣習・倫理観
   などがそのまま適用されることが好ましい
のではないか。

(3)『バーチャル・ワールドのルール(対人)』・・・『バーチャル・
   ワールド』で交流相手である他人のアバターに害を与えてしまった
   らどうなるのか?例えば、ヘイトスピーチであったり、他人の
   アバターを消去してしまったりと、ありとあらゆる事が起きうる。
   『バーチャル・ワールド』であってもルールはきわめて重要

(4)『バーチャル・ワールドのルール(対物)』・・・例えば、他人の所有
   するバーチャルアイテムを不適切な方法で自分のものにしたり、
   コピーの禁じられているアイテム、バーチャルブランドの
   ファッションアイテムなどをコピーしたらどのように罰せられるの
   か?逆に言うと、『バーチャル・ワールド』で自分が所有している
   アイテムをどのようにしてセキュアに保管するのか


(5)『バーチャル・ワールドのルール(取引)』・・・『バーチャル・
   ワールド』には会社は設立できるのか?支店を置けるのか?
   『バーチャル・ワールド』でお金を稼ぐとはどういう事なのか?
   そのままリアルの世界に送金できるのか?

(6)『マネーと時間』・・・『バーチャル・ワールド』と『リアル・
   ワールド』を繋ぎ止める強固で共通の基盤は『マネー』と『時間』

   かも知れない。『バーチャル・ワールド』と『リアル・ワールド』で
   流通する『マネー』と『時間』をセキュアに同期させることで、
   『バーチャル・ワールド』の暴走を防げるのかも知れない。

(7)『バーチャル依存症』・・・リアルな世界と比べて『バーチャル・
   ワールド』は、自分の外観にしろ能力にしろ、自由度がきわめて
   高く、没入感も大きい
過度に深入りすることには、スマホ依存症
   などとは比べものにならない『バーチャル依存症』のリスクがあり
   そうだ
。依存症とまではいかなくとも、リアルの生身の自分と
   アバターとの乖離には十分に気を付けた方が良さそうである。
   アバターは疲れ知らずでも、生身の人間は疲労する……逆に言うと、
   アバターが疲労するようなデザインも必要かも知れない。



 よく考えれば、まだまだ指摘すべき重要なポイントがあるのかも知れません。

 確かなことは、『バーチャル・ワールド』は人間の新しい活動の場としての『世界』であり、文字通り桁外れに巨大なブルーオーシャンである、という事です。

 それが一つの『世界』であり、宇宙と並ぶ人間の新しいフロンティアであるのなら、そのポテンシャルを追求するのと同時に、その広大な『VR経済圏』にセキュアな環境が構築されることが必要だと考えられます。



#COMEMO #NIKKEI

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