アバターの限りないポテンシャル
あの名作映画「アバター」では、最後に主人公が自分の人間としての体を離れて、アバターに完全に乗り移って幕切れとなります。しかし、この感動的なエンディングには、よくよく考えてみると重要な意味があります――不死性の獲得です――。もし、極めて高性能なアバターがあり、もし、完全に意識を転送できるのであれば、それを繰り返すことで、人間は、不死性を獲得することとなるのです……
日経電子版の記事【「幽体離脱」アバターが変える経済 最新技術体験ルポ】は、そんな事を考えさせてくれる、「アバターって本当のところ何なの?」という疑問に具体的なイメージを与えてくれるリポートだと思います。
この記事などから分かるのは、『アバター』というものを捉えるのに、類似の現象である『ロボットなどの遠隔操作』と『VRバーチャルリアリティー』との対比が有効であるということです――
▶対比を通して見る『アバター』
項目・・・『ロボットなどの遠隔操作』・・・『アバター』・・・・・・・・・『VR』
意識・・・自分自身の肉体にある・・・・・・アバターの中にある・・・自分自身の肉体
世界・・・・・・・・・リアルの世界・・・・・・・・・・・リアルの世界・・・・・・バーチャル空間
UX・・・・・・・・・没入感はない・・・・・・意識がアバターの中に・・・・・・バーチャルな
移ったような没入感 世界への没入感
こうしてみると、『アバター』の最大の特性は、意識が『アバター』の中に移ったような没入感で、『アバター』の置かれたリアルの世界に存在できる、という事だと言えそうです。『VR』と違って、活動の場はあくまでリアルな世界であり、『ロボットなどの遠隔操作』と違って、意識が対象物である『アバター』に没入して、成り切ってしまうのです。
このような特性の持つポテンシャルは、非常に大きいものがありそうです――
▶『アバター』のポテンシャル
①『アバター・イン』・・・没入感の高い『意識の伝送』=『アバター・
イン』を実現するテクノロジー、アバターの
ロボティクス・センシングなどのテクノロジーが
進化すればするほど、可能性が拡がる。
②『クローン』・・・あくまでSF的な話ですが、究極のアバターは自分自身の
クローンかも知れません。
③『コミュニケーション』・・・アバターが一般化する過程で、アバター(を
操作する人)とアバターと接する人との間の
コミュニケーション、インターフェースの
あり方が課題となってくると考えられます。
④『UX』・・・アバターの性能が高まり、生身の自分が体験するのと、
アバターを通して体験することの差が縮まっていけば、徐々に、
どこへでも行けて、様々な体験が可能となり、コストは別として
その特性を生かした様々なビジネスが生まれてくる、と考えられ
ます。
⑤『瞬間移動』・・・人間がアバターによって、疑似的な意味で、瞬間移動が
出来るということには、計り知れない意味があるのでは
ないでしょうか?熟練者が緊急事態の発生した現場に
瞬間移動で文字通り即座に駆け付けるなど、活用の範囲は
広そうです。
アバターが可能にする疑似的な『瞬間移動』など、そのポテンシャル、私達の社会・経済に及ぼす変化、影響には相当大きなものがあるのではないでしょうか。
現状は、あくまで『意識』の『没入感』に過ぎませんが、SFでのように、『意識』の完全な転送、『意識の移植』が実現するようなことがあれば、それは、画期的という表現ではとても足りない変化をもたらしそうです。
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