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#夢
【短編小説】習作・夢の話・神社 もりたからす
私は小学生の姿で、早朝の境内に立っていた。曇天。集団登校の待ち合わせは石灯籠の脇と決まっているのに、班の仲間は誰も来ない。
斜向かいの八百屋から出てきた店主が、大銀杏の先端めがけ、空砲を放つ。スズメとヒヨドリが一斉に北東へ飛び立つ。
私はなぜだか彼に、花を贈りたいと思った。しかし境内にはヤマゴボウの実ばかりが成り、タンポポ一つも咲いていない。
振り返ると、石段の先、神社の中で独演会が始まって
【短編小説】習作・夢の話・炎天下 もりたからす
夏のことだ。母方の祖父がパイプをくわえて焦れていた。初めて見るそのパイプがブライヤー製だと、なぜか私にははっきりと分かるが、それが喫煙具であることには思い至らない。始終なにか固いものを噛んでいないと収まらないのなら大人というのは不自由だ、と考えていた。
祖父は車を出す準備をとうに済ませていた。それなのに、祖母と母とが姿を見せない。駐車場に待つ祖父は、いつもの麦わら帽一つで炎天をやり過ごし、しきり