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靑生ふゆ
2024年2月23日 18:01
都市を渡る星空間シャトル始祖鳥の尾羽僕はけふ十三に成りました[nl057便をご利用の皆さま…]海はとうに干上がり、人々はかなしみの余りステーション建設に勤しんだ。ひとつの球体と燻鼠色の長方形の胴体を持ったステーションは、他の星々に遜色ない出来映えで、TVショウでその様子が映されると皆毎日のようにそれを喜んだ。(スムーズな乗降にご協力ください)音を発さないアナウンスが響き渡ってーーー
2021年11月3日 13:47
此処は月。 幾光年を越へて、やはり僕は戻ってきた。そう思って居たよ。 独り乗りのグリーンライト製宇宙船は故障している。月に暫くは暮らす定めだ。 僕はカプセルスイツのジップをしっかり口許迄上げ、立ち尽くした。方々を見る。「美しひところには、いつも海があるナア。」呟く。 凹凸が成した沢山の海。月の海達。 今僕は、そのうちの一つの砂浜に立っている。嘆きの海。昔の人は幾分も詩的だったのだな
2021年11月30日 08:29
モン氏は帰路についていた。月は細く、不安になる。三億光年の旅がやっと終わったというのに。 モン氏の帽子はボロボロになって、足は痛いが、家に帰るのだ!三億光年と二歳になった鼠が待っていてくれる筈だ。モン氏はそれを考えると目を細めた。 この長い間、ずっと本当の星を探していた。 それはモン氏がかつて生活をしていた、この青い月が上る惑星でもなく、どんな美しい星々でもなく、流星群でも、小惑星群で
2022年7月16日 15:47
月と木星間を往復するシャトル便137号に乗っている。渦巻状に配置された座席の内側の方、N54が僕の座席だ。 中央部に立った円柱型ロボットが機械音を発した。「リーーー…通信中。この便は行き先を変更し、第三宇宙ターミナルへ向かいます。」 真空睡眠状態にあった乗客が目覚め始める。N55、僕の隣で眠っていた君も。「睡眠が切れないわ。どうしたの?」「アクシデントみたいだ。今日は月へは戻れそうもな