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まちづくりの小さな一歩。

誰でも、自分の立ち位置から、小さな「まちづくり」を
始めることができるのではないか、と考えたことを綴ってみたい。

はじめに

「まちづくり」というと、多くの人が関わる大きな事業のように感じ、
自分には扱えるようなプロジェクトじゃない、と怯んでしまう。

遠い存在に思える、「まちづくり」の切り口は、
実はとても幅広く、誰でも自分の立ち位置から、
小さな「まちづくり」を始めることができるのではないだろうか。

いつかそれらの小さな営みが集合体となり、
魅力的なまちにつながったらいいな、と思うのである。

名称未設定のアートワーク

1.建物オーナーが始める小さなまちづくり

建物オーナー(大家さん)ができるまちづくりへのアプローチは、
とても幅広い。
最も上流工程で、適正に予算をとり、デザインを決め、
入居者を誘致し、何十年と建物を管理しつづける。

例えば、不動産屋さんと組んで、
街へ開いたテラス席のあるカフェをテナントに入れる。
これもまちづくり。
また、建物の外観を定期的にメンテナンスし、綺麗に保つのもまちづくり。
新しい建物をつくるときに、デザイン性の高く、まちに開いた建物を
つくるのもまちづくり。

週末の散歩や通勤の合間に目に入る風景に、素敵な建物があると、
その街で暮らす人たちの暮らしが少しだけ楽しくなるだろう。

2.飲食店舗の運営者が始める小さなまちづくり

よい街には、よい飲食店がある。
そして、よい飲食店がある街には、人が集まる。
というのは、私の個人的な持論だけれども、

1軒の感じのよいコーヒースタンドができると、
少しずつ、人が集まり始め、
人が集まり始めると、新しい店が増える。
そしてまた人が集まり、街が魅力的になる。

人の3大欲求といわれる「衣・食・住」の1角を占める
「食」に関わる飲食店の引き寄せ力は強力だ。
美味しそうにコーヒーと飲んだり、
友達同士・恋人同士で楽しそうにおしゃべりしたり、
そんな風景が、街での暮らしを豊かにすると信じている。

豊かな時間を過ごせる飲食店の運営そのものが、
小さなまちづくりである。

3.不動産屋さんが始める小さなまちづくり

私の勤める事務所のある町の一角に、この5年間で素敵なお店が数店舗開店した。
始めは、1軒の深夜まで開いててメニューが豊富でとても美味しい多国籍料理店。
2軒目は、雰囲気があり個性的な串焼きが楽しめる焼き鳥屋。
3軒目は、食材にこだわったフランス料理屋。
その後、初めての個人経営のカフェができたり、ナッツバーができたり・・・
これまでは、いわゆるサラリーマン向けの居酒屋か、背後にある高級住宅街の
マダム向けの品のよいレストランか、その2択だったのだけれど、
明らかに、違う客層に向けたお店が増え始めたのだった。

新しいお店が増えた背景には、近くにJRの駅ができたり、
徒歩圏内の駅が再開発されたりという地理的な背景もある。

だけど、想像してみるのだ。
町をつくるのは、その町で暮らすひと、働くひと、お店を営む人。
その人たちが生活する場所を仲介するのが不動産屋さん。
特にお店の場合は、1軒できると町の雰囲気は大きい。

私が働く町の変化を妄想してみる。(あくまでも妄想だ)

空室ができた建物オーナーさんが、不動産屋さんへ相談する。
不動産屋さんは、町の1年後、3年後・・・
町の将来のあってほしい姿を想像しながら、
一緒に町のビジョンを育ててくれそうなお店を紹介する。
不動産屋さんの町への想いを受け取った店主は、
町での暮らしがより豊かになるように、お店を営んでいく・・・。
すると、そのお店に集う人たちを見て、新しくお店を開きたい人が、
空きテナントを見て、不動産屋さんを訪ねる。
不動産屋さんは、町の既存のお店とバランスがとれるか、
店主は周りの店主と馴染めそうかなど、色んな視点で、次のお店を判断する。
と、つづく・・・

不動産屋のさじ加減1つで、町の一角のイメージや魅力度合いは
大きく変わってくるんじゃないだろうか。
と考えると、不動産仲介業というのは、なんともワクワクする仕事だ。

4.会社の総務担当者が始める小さなまちづくり

テナントである事業所の総務担当だって、
小さなまちづくりに参加できることがある。

例えば、窓際にカウンター席をつくってみる。
働く人にとっては、外の景色を眺めながら休憩したり、
打ち合わせをしたり、集中作業をしたり、気分を変えるワークプレイスができる。
町を歩く人にとって、建物の中で働いている人の姿が見えることは、
町の人の力で動いていることを想像させ、活き活きとした風景に見えるだろう。

また、近所の新しくできたお店の紹介のチラシを配るのもよいかもしれない。
働く人同士のコミュニケーションにもなるし、
お気に入りのお店ができたら、働く人たち少しだけ会社の環境を好きになるし、
その結果、町のお店を応援することにも繋がる。

時には、会社のCSRとしてゴミ拾いボランティアを提案するのも素敵だ。
単なる働く場所だった町の活動に参加することで、町への愛着が高まる。

町を育てるっていうのは、一人一人の日々の小さな行動の積み重ねかもしれない。

5.建築設計者が始める小さなまちづくり

設計者は、建物の外装や内装、外構を提案し、図面を書き、工事を監理する
ことで、まちの器をつくっている。

有名な建築家やインテリアデザイナーだけでなく、
設計事務所勤務の設計者、工務店や施工会社の中の設計者、
不動産会社の工事部門の設計者など、建築設計を職能としている
全てのひとの仕事は、まちづくりに関わっている。
どんなに小さな内装工事も、外壁の塗り替えも、植栽の植え替えも、
全てまちをつくることににつながっている。

上の挿絵にあるように、小さな3階建の建物のリニューアルをする場合、
・グレーの外壁を、明るいグレーとグリーンのツートンカラーに塗り替える。
・1階店舗の開口部を、自然の素材感があり、開放的な木製の引き戸にする。
・1階開口部に面して、テラス席を設け、外部と連続した座席レイアウトとする。
・1階の階段室の鉄扉を、ガラス戸に変え、人の活動が見え境界のあり方にする。

拙いイラストなので、うまく伝わらない部分もあるかと思うが、
1棟の建物が変化するだけで、町の風景が変わる、ということが伝わるだろう。
たった1軒、されど1軒。小さな建物の集積で町はできているのだから、
魅力的な建物ができればできるほど、町の風景は魅力的に変わっていく。

私自身、ベースの職能は建築設計者なので、発注者とまちづくりへの意識に
差があり、よいと思った提案が通らなかったり、
もっと町に貢献できる案があったのに、と悔しく感じた経験は数々ある。
ただ、費用を負担するのも、できた建物を長期間維持管理するのも発注者。
発注者が事業を無理せず継続できる範囲で、町づくりを粛々と進めていくのが、
設計者のあるべき姿勢ではないだろうか。

そして、少し手を加えればよくなる可能性に溢れた建物を見つけたら、
求められてなくても、こんな町になったらいいな、というビジョンを描き、
お金を出せる人たちに提案し、周りの人たちを巻き込み、実現するような、
町の変化を促す触媒のような動きができたらよいなあと思う。
これからの自分の仕事への期待を込めて・・・これからの設計者の姿。

さいごに。

実際には、上に挙げた他にも、行政や銀行、イベント主催者、ボランティアグループなど、まちづくりには、もっと幅広いのプレイヤーが関わっているだろう。
これはほんの一例の身近に考えやすい範囲での事例シュミレーションと考えていただければ幸いである。

あと1ヶ月は自粛モードが延長されるうようである。。
平日は在宅ワーク、週末は家におこもり。
出張での打合せ、県外への現地調査は、当面延期。
普段の50〜70%の行動量で過ごしているような毎日だが、
時間はたっぷりある。

この機会に、普段は忙しくて目の前のことに精一杯の人も、
自分の立ち位置からできる「小さなまちづくり」を
考えてみるのは、楽しいのではないだろうか。

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