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映画記事

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最近観た劇場映画について好き勝手書いてます
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#アニメ映画

もっといけ‼ どんどんいけ‼ 消されし者どもの存在証明 映画『犬王』感想

『シン・ウルトラマン』感想へ

 時は室町。日の本がふたつの天を戴いていた時代。
 異形の能楽師・犬王と、琵琶法師・友魚のバディが繰り広げる絢爛豪華な舞台劇。
 そのうねりは人々の熱狂を呼び、やがて将軍・足利義満の知る所となる――

 予告

 圧巻。圧巻である。
 音と光、エモーショナルな歌声にアニメーションの快楽。
 中世日本にロック・ミュージックをブチ込み、謡い上げるは顧みられることなく忘れ

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存在すら定かではない‟真相” 『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』感想

「2021年シネマランキング ベスト10」へ

 漫才のような会話、周到に仕込まれた伏線、衝撃の展開――おそるべき脚本力と、Youtubeと連動したメディア展開で話題になったTVアニメ、オッドタクシーの劇場版続編。
 オペレーション・オッドタクシー実行の少し前。
 一連の‟事件”に関わった人物たちへのインタビューにより、「真相」に別の角度からの光があてられる。

予告

 オッドタクシーとは、ざっ

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出揃う役者、仕掛けられた爆弾 映画『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章』感想

『シン・エヴァ』感想へ
『第1章』感想へ

 19世紀末ロンドンで繰り広げられる美少女スパイアクション第二弾。
 共和国にて開発された新兵器‟ケイバーライト爆弾”3発が何者かに盗み出され、王国に運び込まれた。
 一方、王国では第3王位継承権者リチャード王子が帰国。凱旋パレードの最中、銃撃されるという事件が起きた。
 ふたつの事件に関連があると睨んだコントロールは、チーム白鳩に新たな任務を課す――

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アスカ派の私がアヤナミレイ(仮称)に惹かれたワケ 映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』感想

『プリンセス・プリンシパル 第1章』感想へ

 公開からずいぶん時間が経ってしまったけれども、さすがに本作に関しては何かしら書いて残しておかねばならないと思う。
 というのも、半ばを終えた時点で「あのエヴァが終わった」ことは、日本のアニメ界、映画界含めてもっとも重大な事件のひとつであるからだ。
 長く続いたシリーズが、きちんとしたかたちで完結するというのは紛れもない偉業であり、庵野監督や制作陣のみ

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世紀末ロンドン、少女たちの行き着く先は⁉ 映画『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第1章』感想

「2020年シネマベスト10」へ

 時は19世紀末。壁により東西に分かたれたロンドンは、各国スパイの暗躍する舞台となっていた。
 革命扇動事件の影響で王国でのスパイ狩りが激化する中、共和国のスパイ組織「コントロール」に属するチーム‟白鳩”は、王国宮廷内のモグラこと‟ビショップ”との接触を命じられる。
 二重スパイの疑いのかかるビショップは、白鳩のアンジェ、プリンセスと深い関わりのある人物であった

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友の残した足跡を追って 映画『ミッシング・リンク』感想

『ウルフズ・コール』感想へ

 ‟世界最高峰”――この手の言葉は、わりかし安易に使われることも多いので、話半分に受け止めるという人も多いんではないかと思っている。
 しかし、掛け値なしにこの言葉にふさわしい、素晴らしい作品を数々世に送り出してきた映画制作スタジオも存在するんです。
 それが、スタジオ・ライカです。
 ライカが手がけるのは、ストップ・モーション・アニメ。
 人形を少しづつ動かして撮影

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細部に宿る神を聴け 劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』感想

『ワンハリ』感想へ

 2018年のテレビシリーズ開始直後から、その圧倒的な作画クオリティが話題になり(「作画カロリー」という言葉を私は本作で知りました)、シリーズ終盤にさしかかる辺りには「泣けるアニメ」としての地位を確固たるものにした京都アニメーション(以下、京アニ)作品。
 原作はKAエスマ文庫より刊行された暁佳奈の同名小説。
 本作は二本目の劇場版にしてシリーズの完結編となります。
 京アニ

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深淵を覗く旅路 映画『メイドインアビス 深き魂の黎明』評

「2019年シネマランキング年間ベスト10」へ

 お待たせしました。お待たせしてます?
 前回は2019年ベスト10の発表だったので、実質今年最初の映画記事を書きます。
 今回扱うのは『メイドインアビス 深き魂の黎明』――原作はWebコミックガンマで連載中の、つくしあきひとのマンガ作品です。
『ゴールデンカムイ』『ダンジョン飯』と並ぶ「三大野外飯マンガ」にも数えられ、同時にそのかわいらしい絵柄と

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繋がりたいけど繋がれない 映画『フラグタイム』評

『アナベル 死霊博物館』評へ

 百合が好きです。
 ええ、もちろん。花のことではなく、女性同士のアレのほうです。
 けれど、どうしたことかここ最近、地獄のような百合作品に当たることが多く(そういうの大好物なクセに)、たまには癒されたいな~と思っていたところに飛び込んできたのが本作でした。
 原作はさとのコミック。監督・脚本は『あさがおと加瀬さん。』の佐藤卓哉。
 いや、この前作『あさがおと加瀬さ

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映画『天気の子』感想

『トイ・ストーリー4』感想へ

「セカイ系」と呼ばれるニッチなジャンルの代表的作家でありながら、2016年『君の名は。』でマイナーメジャーから一気に大メジャーの地位に躍り出た感のある新海誠。
 その新作『天気の子』を観に行くにあたって、ひとつの仮説をたててみました。

 “新海誠は、「正しさ」と「美しさ」が対立したとき、後者を選ぶ作家である。”

 もちろん芸術家なら少なからずその傾向はあるのだけ

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映画『トイ・ストーリー4』感想

『海獣の子供』評へ

 今年の下半期に公開される新作映画のうち、『JOKER』と並んで期待していたのが本作。
 というのも、おもちゃの一生を完璧に描き切った『3』のあとに、いったいどんな続きを用意してくるかと思ったら、出てきたのがフォーキーですよ!
 出自がおもちゃではない新キャラ。ちょっと、天才なんじゃないかと思ったほどです。
 ところが公開されるや、どうやら世間での評判は賛否両論。
 特に前作

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映画『海獣の子供』評

「2019年上半期映画ベスト10」へ

 公開からすこし時間が経ってしまったが、アニメ映画『海獣の子供』について語っていこう。
 本作は五十嵐大介の同名マンガが原作で、海や雨といった水の表現と、様々な海洋生物、それに主人公・琉花の体験する出来事を、圧倒的な音と映像で魅せてくれる一方、ストーリーに関しては難解という感想が多く見られる。
 原作は全五巻。枝葉のイベントや各キャラクターの掘り下げなどはか

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映画『プロメア』感想

『フォーリナー/復讐者』感想へ

 夏を前に、とんでもなく暑苦しい映画が公開された。
 監督・今石洋之、脚本・中島かずき、制作はトリガ―によるアニメ『プロメア』である。
 今石×中島タッグによる作品ではテレビシリーズ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』に続いて三作目。
 とにもかくにも「熱い」作風が特徴で、前二作のファンならば間違いなく楽しめるであろう作品に仕上がっている。

 予告

 物語は

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映画『響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ』感想

『ハロウィン』感想へ

 文科系の中の体育会系ともいわれる吹奏楽部に題を取り、美しい映像と音楽で魅せる一方、誇りと我欲のぶつかりあうドロドロの群像劇でもあった『響け! ユーフォニアム』の新作。原作は武田綾乃、現在は宝島社文庫から8巻まで刊行され以後続刊。
 テレビシリーズは第2期まで製作され、主人公・黄前久美子の一年生時代が描かれる。
 2016年と2017年にはそれぞれテレビシリーズ1期2期を振

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