映画『プロメア』感想

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 夏を前に、とんでもなく暑苦しい映画が公開された。
 監督・今石洋之、脚本・中島かずき、制作はトリガ―によるアニメ『プロメア』である。
 今石×中島タッグによる作品ではテレビシリーズ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』に続いて三作目。
 とにもかくにも「熱い」作風が特徴で、前二作のファンならば間違いなく楽しめるであろう作品に仕上がっている。

 予告

 物語は自治共和国プロメポリスにて、バーニングレスキュー――消防隊とレスキュー隊を兼ねたような組織――と、発火能力を持った人間・バーニッシュの過激派、マッドバーニッシュの対決から始まる。
 決死の消化&救助活動のさなか、誰よりも熱い「火消し魂」を持つレスキュー隊員・ガロ(松山ケンイチ)は、マッドバーニッシュのリーダー・リオ(早乙女太一)と出会う。
 この二人の対立を軸にストーリーを展開していくのかと思いきや、これはまだ序章。
 過激派と思われたリオの素顔、繁栄を謳歌する自治都市の闇、司政官クレイ・フォーサイト(堺雅人)の真の目的などが畳みかけるように開陳され、問答無用で観客を巻き込んでいく。

 ノリと勢いは完全に『グレンラガン』『キルラキル』を引き継ぎつつ大幅にパワーアップしており、過去作を思わせるキャラクター、キャストも多々見られるため、ファンは安心してこの波に乗ればいい。
 ストーリーの構造も『キルラキル』に近い。要は、最初はいがみ合っていた者同士がむにゃむにゃして、最後はドーン!的なアレだ。
 ただし人物配置は結構ちがっていて、過去作の系統のキャラがそのままのポジションに落ち着いているかというと、そうでもなかったり。
 まあ、ちがう作品なんだから、その辺はちがっていて当たり前なので、フレーバー程度に思っていれば吉。

 中島脚本の特徴として、ある一個の信念を持った主人公(狂人ともいう)が台風の目となって周囲をブン回していく、というものがあろう。
 本作の場合はガロの「火消し魂」がそれで、すなわち主人公の世界のとらえ方であり、物事を極度にシンプルにしてしまう効果があり、それが先に挙げた「熱さ」や「痛快さ」に繋がっていく。
 ――とまあ、そんな理屈はおいといて、とにかくキャラもメカもグリグリ動き回るし、小ぎれいな建物はとりあえず壊す!とばかりに景気よく破壊。ロボは出るし、ゆでたまごさながらの謎理論やら、けれんみしかないド派手演出も相まって、映像と音による快楽がハンパないのである。
 是非とも音響の良い劇場で鑑賞するべし。

 俳優陣による演技だが、松山ケンイチはやや声が優しすぎる印象があったものの、概ね素晴らしかった。
 特に堺雅人に関しては、10人中10人が「ヤベェよ……」という感想を持つのではないかというほどの怪演ぶり。
 出てきた瞬間からもう胡散臭いし、後半ブチ切れながらいちいち武装の解説をしてくれるくだりなどは最高である。

 怒り、欲求、表現、スティグマ――様々なものを象徴するバーニッシュの炎は、押さえつければ噴き上がり、周囲を呑み込みかねない。
 本作のテーマを一言でいうと、「テメェん中にくすぶってる炎を燃やし尽くせ!」なのだろう。
 直接関係はないが、同様のテーマを扱った作品が三木聡監督『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(2018)である。

 MV

 ギャグセンスが独特で好みはわかれるかと思うが、楽曲が素晴らしいので興味を惹かれたら観てみるのもいいだろう。

                             ★★★★★

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