出揃う役者、仕掛けられた爆弾 映画『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章』感想
19世紀末ロンドンで繰り広げられる美少女スパイアクション第二弾。
共和国にて開発された新兵器‟ケイバーライト爆弾”3発が何者かに盗み出され、王国に運び込まれた。
一方、王国では第3王位継承権者リチャード王子が帰国。凱旋パレードの最中、銃撃されるという事件が起きた。
ふたつの事件に関連があると睨んだコントロールは、チーム白鳩に新たな任務を課す――
冷戦時代、東西陣営がスパイ合戦を繰り広げていたことはよく知られ、創作の題材にもなることが多い。
近年でも『ブリッジ・オブ・スパイ』や『アトミック・ブロンド』といった傑作が発表され、それぞれ新境地を切り開いている。
プリンセス・プリンシパルは舞台こそ架空のロンドンではあるものの、明らかにその要素が色濃い。
王国と共和国を分かつ壁はベルリンの壁であり、今回登場した新兵器は核兵器に相当する。
背景にそうした緊張感を孕んだまま、これまで描かれなかったシャーロット以外の王位継承権者たちが出そろい、いよいよ王座争奪レースが本格化していくのが本作である。
ここで改めて、主役となるチーム白鳩のメンバー5人をおさらいしておこう。
アンジェ:頭文字A。無口で不愛想な天才スパイ。
嘘つきを自称し、日常的に嘘で他人を煙に巻くが、虚言癖問いうわけではない。彼女の嘘は、もっとも大きなある嘘を隠すためのものであり、同時に自身に与える罰なのだろう。
キャラクター原案の黒星紅白氏のフェチが迸るデザイン。スパイスタイル時のおみ足が素敵。
ベアトリス:頭文字B。下級貴族出身でプリンセスの友人にして侍女。
スパイとしては素人だが、人口声帯により様々な声を真似ることができる。デザインよりも設定がフェチ。
ちせ:頭文字C。女体化した石川五右衛門。
メンバー中もっとも近接戦にすぐれ、作中でも最強クラス。
黒星紅白氏のフェチが最も感じられるデザイン。
ドロシー:頭文字D。チーム白鳩の実質的リーダー。
スパイとしての技術ではアンジェに及ばないが、常識的であらゆる面でバランスが取れている。
特に色仕掛けはチームで彼女にしか使えず、実行の際は心なしかノリノリに見える。
スタッフにファンが多いらしく、その愛ゆえかつらい目に遭わされがち。彼女には幸せになってほしいという願いから自然発生した合言葉が「ドロシー、スパイやめろ」。ほんと、そうなってくれ……
プリンセス:アルビオン王国第4王位継承権者シャーロット王女。
ABCDときてEでないのは彼女がチームでもイレギュラーな存在ゆえ。
一見大人しく優しげだが、おそろしく強い意思の持ち主。
その壮絶な過去についてはTVシリーズを参照のこと。
全7章と発表されている劇場シリーズ。第1章がプロローグであるならば、第1章はいよいよ役者が揃ったという段階。
今回のメインストーリーは、消えた爆弾のゆくえと、それを使ったテロの阻止ということになる。
前回と比較するとアクション・パートの比重が大きく、特に劇場パートではとある人物の再登場も相まって楽しい。
しかし今作最大の仕掛けは、実はメイン部分にはない。パンフレットにも書かれているが、すべてが終わったと思った後に真の爆弾が爆発するのである。
個人的によかったと思うのはプリンセスがメアリーについて語るシーン。
そこではメアリーとアンジェが重なると発言しているが、同時にプリンセス自身にも当てはまる。
こうした裏を読ませる会話の巧みさは本作の大きな魅力である。
最後にもうひとつ。
改めておさえておきたいのは、シリーズ通して重要なキーワードとなっている「嘘」と「壁」だろう。
ふたりの少女の「嘘」から始まった物語は、いくつもの「壁」を破壊することで「真実」となる――
おそらくそれが、物語の目指す結末であろう。
しかし、状況が動き出したことで、その障害もはっきりと見え始めた。
具体的には、シャーロットよりも上位にいる継承権者たちである。
正面から敵対してくれる者はまだいい。
むしろ、心を許した相手と対峙せねばならなくなったとき、どのような選択が迫られるのか。
第3章は、順調にいけば来年公開。
期待して待つほかない。
★★★☆☆
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