友の残した足跡を追って 映画『ミッシング・リンク』感想
‟世界最高峰”――この手の言葉は、わりかし安易に使われることも多いので、話半分に受け止めるという人も多いんではないかと思っている。
しかし、掛け値なしにこの言葉にふさわしい、素晴らしい作品を数々世に送り出してきた映画制作スタジオも存在するんです。
それが、スタジオ・ライカです。
ライカが手がけるのは、ストップ・モーション・アニメ。
人形を少しづつ動かして撮影し、あたかも生きているかのように見せるという途方もなく手間のかかる手法で、『コララインとボタンの魔女』『パラノーマン プライスホローの謎』『KUBO/二本の弦の秘密』といった傑作を発表してきました。
その最新作が『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』です。
監督・脚本は『パラノーマン』を手がけたクリス・バトラー。
英国紳士ライオネル・フロスト卿は、伝説の生物を発見して世に認められたいという野心を持っている。
そんなある日、ビッグフットと呼ばれるUMAの一種、サスクワッチの生き残りと出会う。
タイトルにあるミッシング・リンクとは、人類が猿から進化したことを示す道の生物――ここではビッグフットのこと。
サスクワッチ最後の一人である彼――Mr.リンクの仲間を探すため、ライオネル卿は地球の裏側、ヒマラヤを目指す。
ライカ作品は、たまにホラーっぽい表現があったりするものの、基本的には全年齢向け。安心して家族で観られる映画です。
今回は特に、サスクワッチのMr.リンク君がとてもかわいらしく、彼がなにかやらかしたりするたびにニッコリ笑顔にさせられます。
一方で、彼の抱える孤独は身につまされるもので、「ほらライオネル、自分のことばっかじゃなくて、リンク君を励ましてあげなよ!」などと、思わず画面に向かって言いたくなったりもします。
勘のいい方ならお気づきかもしれませんが、目的地ヒマラヤに住むリンク君の同族はイエティと呼ばれ、そこにサスクワッチ最後の一人を連れていくというお話の構造は、『ドラえもん のび太の恐竜』とまったく同じです。
当然、目的地への到達と同時に立ち上がる問題もまた同じ。
果たして、ライオネル卿たちの取る選択とは?
ヒマラヤへの旅路は、ライオネル卿の亡き友人の手記を手がかりに征く旅です。
映画を観終わったところで本作の冒頭を思い返したとき、それが誰かの足跡《そくせき》を辿る旅であるとともに、もうひとつの大きな意味を持っていたことに気づくことでしょう。
とまあ、このぼかした部分が本作の大テーマであるなら、旧いものと新しいものの衝突、そして、その際には往々にして旧いものが駆逐されていくという小テーマもあります。
ライオネル一向の前に立ち塞がるダンスビー卿は、冒険家クラブの顔役でありながら、自分たちの価値観を脅かすとして新しい発見を消し去ろうとするという、グロテスクともいえる矛盾を抱えた存在です。
リンク君もまた、人間が生活圏を拡大したために滅びつつある種族であり、ダンスビー卿との対比がなされています。
しかし正直なところ、この部分に関しては掘り下げが足りない印象なので、それよりもストップモーション・アニメでアクションをやるとか正気の沙汰でないところを観て!って感じです。
荒れ狂う海に翻弄される船内でのアクションはまるでインセプションの一シーンなので。
どうしても気になるという方は、同じくビッグフットが登場する『スモールフット(2018)』という作品をおススメします。
異文化交流モノの大傑作であると同時に、新旧世代間の衝突という要素もしっかり盛り込まれています。
★★★☆☆
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