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【今週の1冊】2020年11月③『読書について』ショウペンハウエル著 斎藤忍随訳(岩波文庫)

読書を習慣化しよう!じゃあまずは読書について考えよう!と考え、言わずと知れた古典である本書にたどり着く。これから読書をしていこうという自分の背中を押してくれる金言が満載の本と思いきや、読んでびっくり!”読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。”多読は慎むべきである”など、ぱっと見では読書を否定しているようにも見える文言が目に飛び込んでくる。

最初は出ばなをくじかれたような気分になるかもしれないが、しっかり読んでいくと、読書をする際に注意すべきことについて非常に重要なことを本書から学ぶことができることがわかる。

私の解釈で一言にまとめると、要はあくまで自分の頭で考えることが最も重要なことであり、書籍の内容(他人の考え方)を鵜呑みにして自ら考える余地をなくしてはいけない、ということだと思う。

「多読を慎むべき」というのは、現実の問題に注意を向けることをせずに他人の考えに頼り切って自分が考えなくなることを危惧してのものだったのだ。

近年の読書術系の書籍などでは「答えはすでに誰かが本に書いているから、読書で一足飛びに解決しよう!」というようなニュアンスで読書が進められていることが多いように思える。もしかするとこう言った読書は、答えを常に外側に求め、自分で考える力を失っていくことにつながるのではないか。

とはいえ個人的には、様々なことが科学的事実として明らかにされている現代で、そういったいわば土台となる知識や考え方を抜きに持論を展開するのもそれはそれで全く的外れなことを考える危険があると思う。材料集めとしての読書はしっかりしたうえで、あくまで自分の頭で断片的な知識をつなぎ合わせ考えていくことが重要だろう。

本書は「思索」「著作と文体」「読書について」という3篇で構成されており上で述べた内容は主に「思索」で詳しく書かれている。ほかにも読書に関する非常に示唆深いことを学べるため、小手先の読書術や勉強術ではない、読書の本質について考えたい人はぜひ一読することをお勧めする。

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