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吉野杉リポート② 吉野杉の産地を訪ねて。500年続く木と人の歴史

総合建設会社の淺沼組は現在、築30年の名古屋支店をGOOD CYCLE BUILDINGとしてリニューアル中。その現場では「人にも自然にも良い循環を生む」というコンセプトのもと、様々なことに取り組んでいます。このnoteでは、プロジェクトに関わる人の思いや、現場の様子をリポートします!

淺沼組名古屋支店に取り付けられた、樹齢約130年の吉野杉の丸太がどこから来たのか?
吉野杉がどのような場所で育ち、そこではどのような人が働くのか?
実際にこの目で見たいと、奈良県吉野郡を訪ねました。

前回の吉野杉の記事

GOOD CYCLE リポーター、奈良へ行く。 

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近鉄奈良駅から大和西大寺駅で近鉄橿原線に乗り換え、橿原神宮前駅からは近鉄吉野線に乗り換えて「下市口」で下車。所要時間は2時間弱。

今回、ご案内してくださったのは、吉野で育林事業から木材の製造・加工、木造建築物の設計・施工・監理を行う吉野銘木製造販売株式会社の皆さまです。名古屋支店の改修工事において多くの吉野杉製品を納材されています。

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吉野銘木の代表取締役社長 貝本拓路さん

ちなみに、貝本さんの後ろにある木枠は何のためかというと。

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軒下に並ぶ燕の巣が。
まずは、事業所に案内していただき、吉野林業についてのお話を伺いました。

吉野杉がなぜブランドなのか?

吉野地方の造林は、500年ほど前に始まったと言われています。
最近では、「奥大和」と呼ばれることが増えた奈良県南部と東部。吉野は奈良県南部にあり、県土面積の約3分の2を占めると言います。山間の自然豊かな土地で、造林は年月をかけて受け継がれ、吉野杉の産地は自然と人の手によってつくられてきました。

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大きな吉野杉の丸太テーブルを囲んで、まずは貝本社長から吉野林業についてのお話を伺いました。

「吉野地方の中でも、吉野林業の中心地は川上村・東吉野村・黒滝村の3つになります。私たちの仕事の一つに、木材の市場に行って木の買い付けをすることもあるのですが、その際には産地を必ず確認します。というのも、どこの地域の木で、そこでどのように育てられたかということが実はとても重要だからです。一見しただけでは分からない質が、産地を知ることによって分かります。
中でも、吉野の3つの村の木は非常に信頼性が高い木と言えることができると思います。」

ーそれは、他の地域とどのような点が違うのでしょう?

「吉野は、独特な手法で木が育てられます。
まず一つには、最初に密植するということです。吉野の場合は、1haに約10000本の苗木を植えます。これは通常の植林の3倍以上の本数となるのですが、そうすることによって自由に育つことができないため、おひさまに向かって真っ直ぐに伸びます。
そして、もう一つの特徴は、枝打ちと言って、幹から伸びた枝を細いうちに底位置で打ち落とします。これによって、節がなく、また活発に光合成を行えないため、ゆっくりと木を成長させることで、年輪が詰まり、元末同大(もとすえどうだい)と呼ばれる良材を育てることができます。」

吉野林業の特徴は「密植多間伐」と「枝打ち」の2つが大きな特徴だと言います。密植によって、木が競争しながらゆっくりと育つ。そして、三色の状態から長い時間を掛けて木を間引いていくことが必要で、それを「多間伐」と言います。
1haに約10000本あった木が、200年経つと200本ほどになることもあります。
木は「適材」という言葉通り、その時、間伐されたサイズのものを選んで使っていくことが重要で、使うことが山を育てることになると言います。

そして、枝打ちを行うことによって、成長に負荷をかける。
「撫育(ぶいく)」というのは育林用語で、字の持つ意味としては可愛がって育てること。ただ、ここで「可愛がる」とは、実際には、手をかけて木にとって厳しい環境で育てることが良い木を育てることになります。

厳しい環境の中では、大きく育たず、年輪の細かい木がつくられます。
年輪で詰まっている方が、製材したときに非常に綺麗な木目が表れ、数寄屋建築や文化財で使用される美しい木となるのです。

こうして、日本の木材のトップブランドの一つである吉野杉は、500年もの年げつを掛けながら、人の手によって生み出されてきました。

「密植をするには、その後、覚悟を決めて手入れをしなければ良材にならないのです。」

人が世代を超えて手をかけることで、木が育ち、山が守られていきます。

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私が、吉野に向かう前に見た平城京跡朱雀門。改修には、吉野銘木さんが納材したということ。
その他にも、応接室には自社からの数々の感謝状が飾ってあり、吉野の木材が伝統的建造物に多く使用されていることを目の当たりにしました。

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「吉野大峰の山は10:30頃から霧が出ることが多い。山に行かれるならば、早く出発された方が良いですよ。」

社長の声に促され、実際に吉野杉を見ることができる山へ、今回は東吉野村へと出発しました。

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左から、淺沼組技術研究所の荒木朗さん、山﨑順二さん、立松和彦さん、吉野銘木製造販売株式会社の澤田常夫さん、田嶌伸彦さん

text,photo by Michiko Sato

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吉野杉の間伐材を使用した天井と、土壁の下地木ずり

淺沼組名古屋支店で建材として使用した吉野杉。端材はプロダクトとしてアップサイクルされ、現在マクアケにて応援購入が可能です。
収益は、吉野林業関係者と協議のうえ、持続可能な林業支援のために全額を寄付します。



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