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【エッセイ】太陽のちから

 いつも冬の入り口に立って、あと少し、あと少しと念じるように思う。暗い朝に気が滅入る。昼間でも陽は低く、帰る頃にはすっかり暗い。
 もう永遠に明るい朝日で目覚めることはないかもしれないと思いながら、あと少し、あと少しと自分に言い聞かせる。
 あと少しで、冬至がくる。
 冬至をすぎたあとも、日の出はまだ少しずつ遅くなる。しかし、「冬至を過ぎた」という事実が私に救いを与える。太陽がちからを取り戻そうとしている。

 年の瀬の恐ろしいほどに冷えこんだ朝、日の出まえの空に明るい満月が浮かんでいた。
 暗い居間はまだ少し寒い。父と母と姉が、ストーブにあたったあと厳重にまかなって馬を放しに出ていった。裏口のガラス戸はしばれあがり、すりガラスのようになっている。
 一年でいちばん日が昇るのが遅い時期だ。

 新年を迎えて安堵するのは、無事に年末を乗り越えたからだけではない。暗い時季を耐えぬき、やっと明るい朝に向かうことへの安堵だ。
 明日の夜明けは今日より少し早い。
 それを知っているだけで、心が晴れて穏やかになるようだ。
 光がさす。ちいさな希望が私に宿る。
 ようやく、明るい朝が戻ってくる。

 冬が深まるにつれて鬱々と落ち込んでゆく気持ちは、ここで一度回復する。
 次の季節にはまだ遠いが、残りの冬もたぶん、光があればなんとか耐えしのぶことができるだろう。
 やっぱり私たちには、少なくとも私には、太陽のちからが必要なのだ。

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