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映画・読書・美術館、グループ展作品制作進捗など

3月前半に観た映画と読んだ本、行った展覧会、そして作品制作の進捗について綴ります。


【映画】「落下の解剖学」

人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。事件の真相を追っていく中で、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ〈真実〉が現れるが――。

公式サイトのSTORYより

カンヌ・パルムドール賞受賞、そしてもうすぐ発表されるアカデミー賞の5部門にもノミネートされているフランスの長編映画です。

公開前から話題でしたが、私はてっきりこの映画は「法廷ミステリー」でキャッチコピーにある「事故か、自殺か、殺人か」のいずれかの真実が物語の中で明かされ最後はそうだったのか!的な衝撃エンディングで終わるのかと思っていました。
たぶん、私だけでなく多くの人がそう思ったに違いありません。
「結局何だったのか」みたいな評価をする人もいますが、それは普段私を含めハリウッド映画の影響を受けすぎてしまっているのかもと思いました。この映画はそんな単純なミステリー作品ではありませんでした。

どんなに仲の良い夫婦でも元は他人同士、ケンカすることもあります。とりわけ同業な二人の場合仕事における考え方がずれることも普通にあるはずです。片方の仕事が上手く行っていることもあればもう片方が上手く行かず二人が一緒にいればぶつかることもあるでしょう。
だからといって殺人までおかすでしょうか?
タイミング悪く夫婦間が上手く行っていないときにこんな落下事件があったら自分も容疑者にされてしまうのでしょうか?
容疑者にされたらこんな風に法廷でどんどん追い込まれていくんでしょうか?
もし自分がこの映画で無実の妻だったとしたら裁判って怖いなと思いました。弁護士も妻の「私は殺してない」という発言は裁判では関係ないといっています。じゃあ、本当に殺してないのに殺したことにされる=冤罪になる可能性だってあるわけですよね。

運悪く無実の妻が容疑者になってしまったという映画なら、妻の心情を主観描写し最後は真実を見せるのかも知れませんが、この映画のユニークなところは妻(サンドラ)の本当の心の内を明かさないところです。
なので、普通なら同じ妻として同情してしまいそうな場面でも「え?今サンドラはどういう気持ちでいるんだろう?」と考えてしまいます。
もしかして、思っている以上に夫のコトを憎んでいたのかなとも考えてしまいます。
見ている側にはこの事件の真実が本当に見えずらいんです。

法廷でも物的証拠が出てこないので、検察側も弁護側も状況を見て想像して語るしかありません。
つまり、話の捉え方によってサンドラが怪しく見えたり無実に見えたり、映画が進む中でコロコロと見え方が変わっていくんですね。
この辺りは映画の構成が素晴らしいなあと思いました。

そして映画の鍵を握るのが息子ダニエル。
皆さんは映画後半の証人としてのダニエルをどう思ったでしょうか?

映画は2時間半と長尺なのですが、私はあまり長さを感じませんでした。
それから出てる俳優さん(夫役と弁護士役の)二人がめちゃイケメンで素敵だったなあ(笑)

主演のザンドラ・ヒュラーは別のアカデミーノミネート作品である「関心領域」という映画にも出演しています。こちらはアウシュヴィツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族の暮らしを描いた作品でザンドラはヘスの妻を演じています。

愛犬スヌープ役のメッシ君も名演技でして、なんとカンヌで「パルム・ドッグ賞」を受賞しているそうです。(そんな賞、あったんや~カンヌ素晴らしい!)

この映画も劇場上映が終わったらストリーミングで観れるようになるのかもしれませんが、出来たら2時間半集中してみて欲しい映画ですね。
倍速再生にせず、登場人物の心情を想像しながらじっくりと自分で「事故か、自殺か、殺人か」を判断してみるのがいいのではないかなと思いました。

私的にこの映画の評価は★★★★☆でした!


【読書】「クララとお日さま」

AIを搭載したロボットのクララは、病弱な少女と友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作

あらすじより

イギリスの小説家カズオ・イシグロの2019年の長編小説です。
近未来世界で、クララは子供の成長を手助けするAF(ARTIFICIAL FRIEND)として開発されました。
AFが販売されてるお店のショーウィンドウからお日さまの光を沢山浴びて(AFの動力は太陽光)そして毎日人間を観察をしながら人間について学んでいきます。
ある日、クララはジョジ―という病弱な少女の家庭に迎えられることになりました。クララはジョジ―の幸せを願って毎日献身的に考え行動していきます。クララの「献身」は開発されたプログラムです。それがわかっていても物語が進んでいく中でクララもジョジ―と同じように幸せになって欲しいなと読者は思います。
映画「AI」では人間の子供と同じように嬉しい悲しい等感情のあるロボットでしたが、この小説の中のAFは自分の感情を表しません。
ストーリーはクララの一人称で語られます。クララはとってもポジティブなAFなんですよね。そして日々学習していく中で、次第にお日さまを願いをかなえてくれる神様のように思うようになります。病弱なジョジ―を助けてくれるのはお日さまなんだと確信をもって行動していきます。

クララは、自分の感情を表現すること以外はとても賢い人間のように見えます。
それに引き換え、AFの恩恵を受けている人間は・・・・・

小説を購入してから知ったのですが、この作品も映画化が決定しているそうです。(帯に書いてありました。)
AFはどんなふうに表現されるんだろう。分かりやすく描かれてしまうと人間と子供ロボットのただの感動話で終わってしまいそうですが、視聴者のターゲットを少し引き上げたら「わたしを離さないで」の映画のように素敵な映画になる気がするんですよね。(いずれにしてもheartbreakingなお話になるんでしょうけれど・・・)
クララのヴィジュアルもどんな感じになるのか興味深いです。

最後に、福田利之さんの表紙イラストがとても素敵だなあと思いました。


【美術館】「小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」

1960年代以降、欧米において従来のテキスタイルの概念を超えるような作品群が数多く登場しました。伝統的な技法を踏まえつつも、天然・合成繊維のみならず、金属や鉱物など様々な素材を取り込み、平面から立体へ、そして空間へと展開した作品群は、ファイバーアートと呼ばれ、その新たな潮流は、とりわけ1962年から1995年までスイスのローザンヌで開催された国際タペストリー・ビエンナーレを中心に世界へと波及していきました。

展覧会概要より一部抜粋

小林正和さん(1944 – 2004)はファイバーアートの日本におけるパイオニアだそうです。
今回の展覧会では、他のファイバーアート作家さんたちの作品と合わせた小林さんの大回顧展となっていました。

糸の弛みを生かして空間に浮遊しているかのような作品群且つ大きな作品が多いので、これはこうした展覧会でないとなかなか見れない貴重な機会だと思いました。
連続した糸を布のように扱った作品、細密な綴織の作品、カラフルな糸の集合体を配列した抽象画のような立体作品など、空間を生かしたスケールの大きな作品は本当に見応えがありました。

公式ページに設営の様子があるのですが、沢山の人の手によってひとつひとつの糸に生命が与えられたようでもあり、また天井からピアノ線のようなもので釣り上げるのもすごい!作品をみると展覧会開催のご苦労が分かりますね。

動画のサムネイルになっている作品MIZUOTO-99、こちらの作品に沿うように歩いていると心落ち着く気がして、ふと屋外で太陽の元で光と影、風が起こす糸の揺らぎを感じながら鑑賞してみたいと思いました。

展覧会は3月10日までとなりますがタイミング合いましたら是非足を運んでみて下さい。


グループ展作品制作進捗

さて私個人も現在、4月初旬のグループ展に向けて作品制作をしています。

私(DEDECO)は立体の額入り作品を数点出品します。
出品する作品は全て制作したアニメーションのキャラクターです。
また画廊さんでは関連アニメーションもご覧いただこうと思っています。

TITLE : FRIENDS制作中

久々の粘土作品制作。
目の手術をしたのでかなり手元が見にくくてちょっと苦労しています。でもやっぱり粘土コネコネ楽しいです。
立体のキャラクターとアニメーション、一緒にご覧いただけたら嬉しいです。週末には私も画廊さんへ足を運ぶ予定です。
詳細等はまたこちらのnoteでお知らせしたいと思います。

ではまた。


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