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アレクサンデル・ロバノフ:どこか笑える自画像(アウトサイダー・アート)

アレクサンデル・ロバノフ(Aleksander Pavlovitch Lobanov/ソビエト連邦・ロシア)、1924-2003)
ロシアのアウトサイダー・アーティスト。その周囲には、ソ連時代の情勢を背景にした自画像で知られる。
そこには、ソ連時代の背景や銃が頻繁に含まれ、ある意味、自己拡大する絵画なのかも知れない。
ただ、このロバノフのある意味(良くも)、ごくまじめにイッテいるところが、妙に笑えて、そして、観るものにグサリと共感を得るところがあるよだ。
そして、ロバノフは、まず、ファッションから入るのだ。それは、コラージュの時代になって一層、その「唯我独尊」的に盛り上がりを感じるのだ。

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Fig.まずは、コラージュ時代からのアレクサンデル・ロバノフ

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(c)Aleksander Pavlovitch Lobanov

1924年、モロガ(Mologa-ソ連のルイビンスク)で生まれた。そのロバノフは、6歳の時にかかった髄膜炎のために耳と口が不自由になってしまう。
1939年から、ロバノフはセルギエフ・ポサド(モスクワ州の都市)ある聴覚・言語障害の子どもたちのための特別寄宿学校に行くことになる。
1941年6月の独ソ戦の開始によって、ロバノフは、家族のいるヤロスラヴリに戻る。
ただ、その当時のロバノフは、反抗的で攻撃的な子供であり、支援とリハビリテーションへのアクセスを失ったロバノフは、1945年に家族が近くの都市ヤロスラヴリの精神病院に入るが、最初の数年間には、ロバノフの攻撃性と孤独な引きこもりは、より激しさを増したと言われる。
1950年、Afonino精神病院(Афонино)に転院、2003年に死去するまでAfonino精神病院で生活することになる。

1950年代のロバノフの概ね30歳時から、精神病院内で更生のための絵画による独自の芸術活動が始まった。
そこでは、多くは、ソビエト連邦の象徴でもあった、レーニン、スターリンなどと自画像だ。
そこには、ソ連に関するコンテンツや、銃をモチーフとするものが多く、アウトサイダー・アーティストらしく執拗なまでに同じモチーフに繰り返すが、ただ、構成と色彩バランスとの調和が絶妙な作品だ。
(ほとんどの作品は、42cm×29cm/29cm×21cm、これは、施設から与えられたサイズかも知れない)

そのロバノフは、半世紀以上にわたり、ほぼ、同じモチーフを繰り返したが、それは、なんと数百の作品にわたる制作した。
画材は、カラーインク、鉛筆、色鉛筆、マーカー等を使い続けたと言われる。繰り返すが、そこからは、インクの発色のバランスと構成は見事なまでだ。
まさに「アウトサイダー・アーティストは、その作品で評価したい」と言えるだろう。
絵画のテーマは、ロバノフの好みから、ほぼ逸脱しないが、その自画像では、事例と共に、ロバノフ自身がロシア革命のアイコンと同様に英雄化して描かれたり、また、ライフル銃、機関銃、剣等の様々な武器を持っているのだ。
そこには、狩猟犬や鳥や鹿などの動物は、ロバノフが他のハンターと共に描かれた作品もある。
そして、ロバノフは、彼を取り巻く精神科施設やスタッフに関する絵画も残している。1970年代に入ると写真を利用したコラージュ的な作品で、独自の芸術表現を生み出と言えるだろう。そのロバノフの写真の肖像画は、ロバノフが自演する、ロバノフの絵の類似系だ。-header

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(c)Aleksander Pavlovitch Lobanov

詳細に申し上げると、コラージュは、ソビエト共産党のシンバルマークや文言を飾りつけた、その私設舞台は、ボール紙で作った銃でポーズを決めている。
そこには、精神病院のスタッフが、協力的に銃を構えた姿や、その枠(私設舞台)を支え、写真を撮っている訳だ。
2003年4月、ヤロスラヴリ近くの精神病院で亡くなっている。

そのロバノフは、作品を人に見せようとはせず、肌身離さず、持ち歩き、いつも旅行鞄の中にしまい込んでいた。そこのこともあり、ロバノフの作品は他のアウトサイダー・アーティストと同じく、長らく注目されることがなかった・・・
1990年代後半に見出され、ヨーロッパ各地で展覧会が開かれるなど評価が高まっており、2007年にはスイスのローザンヌにあるアール・ブリュット・コレクションで、約200点の作品を集めたアレクサンデル・ロバノフ展が開催されている。

(追記)真剣なご本人には、申し訳ないが、どこか笑える自画像(より、コラージュ時代)だ。それにのっている病院のスタッフも楽しんでいるようにも感じられるのだが・・

アレクサンデル・ロバノフの映像
alexandre pavlovitch lobanov


Александр Робанов: фильм

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(今後のお知らせ)
このコンテスト #2020年秋の美術・芸術 は、コンテストの形式として、3名の入選はございますが、ある意味、ドクメンタ(カッセル/ドイツ-一人のディレクターによるキュレーション)の展示会ように賞はございません。そして、主催者は、多くの企画をされている秋氏のデレクションと、私(artoday)のコメント(評)で構成されております。         
それは、「そもそも美術エッセイは発表の場すらない」という視点や、小生(artoday)の、もっと、身近に気軽に、美術、芸術の裾野の広がりを願っての事でもございます。この間は、私のアート系コラムをランダムに、連載致しますが、入稿があり次第、応募作品にシフト致します。
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