【創作】ファーストフード店にて【スナップショット】
今回のテスト、
素晴らしい成績だったね
もう進路は決めたかい
まだ悩んでいる
ゆっくり考えるといいよ
何かアドバイスは？
そうだな
こういうことを言うのは
変かもしれないけど
人生をやり直すことは可能だ
大事なのは
その時に心から望むことを
選択することだ
何かを間違えたとしても
自分が納得できるなら
きっと最終的にはいい方向に向かう
そう思って自分の道を選ぶんだ
そうなんだ
きっとそうだよ
君の心に従うんだ
じゃあ
父さんが母さんと結婚した時も
父さんは自分の心に従っていたの
それは答えるのが難しいな
父さんは母さんを本当に愛していた？
多分その時はね
どうしてそんな愛が消えたの
僕にも分からない
多分お互いに変わってしまった
でも母さんを愛していたのは
本当だ
それは嘘だよ
父さんは本当は母さんを愛していなかった
だって、今私が聞いた質問に
父さんは本音を答えられないでいる
どんなにいい思い出があっても
何かがそれを口にすることを
出来なくしているんでしょう？
それはどうだろうか
私は分かるよ
母さんは一緒にいて
こっちの心が休まる人じゃない
それは家事や生活のせいじゃない
他の子のお母さんを見てそれが分かった
新しいお父さんともうまくいっていない
私はああいう人が
世の中の普通だと思ってたけど
そうじゃないことに
最近ようやく気づいた
父さんが逃げたことも
逃げていない
法律では
ただの離婚かも知れないけど
やっぱり逃げたんだよ
私を捨てて逃げたんだ
こうやって月一回
ファーストフード店でしか
会えなくなったんだから
すまない
謝らないで
この前父さんと新しい奥さんが
歩いているのを見たよ
とても綺麗な人だと思った
とても幸せそうで
だから綺麗なんだと思った
今度子供も生まれるんでしょう
ああ、そうだ
初めて父さんが彼女を選んだ意味が
分かった気がした
あともう一つ分かったよ
私が望んでいるのは
母さんから離れることだって
それを実現するための進路にする
母さんを悪く言わないで欲しい
どうしてそう思うの？
罪悪感？
そうかもしれない
でも、世の中には
上手く生きられない人はいるんだ
苦しんで、何かに囚われて
束縛しか望まない人も
きっとそうだね
きっと君にもいつか
本当の意味で分かる
心で理解するようになる
僕が彼女と結婚したのは
同情ではないよ
でも僕は確かに何かを間違えたと思う
最初から間違えたのか
二人の努力が足りなかったのか
それは今でも分からない
だけど、やっぱり
そういう誤った選択をした僕もまた
僕自身だ
彼女には申し訳なく思っている
そんなことを思ってでも
人生はやり直しがきくなんて
私に言える？
ああ、何度でも言う
僕の人生は
失敗してしまったかもしれないけど
君には自分を試すチャンスがある
その時に、恐怖を抱かず
君が君自身を誇りに思ったままで
いられるように
僕は祈っている
何度でもやり直せるのだから
その選択で成功しようが
失敗しようが
そんなことは問題じゃない
君が君自身に忠実でいられるように
願っている
父さんはそうじゃなかった？
僕はそうではなかった
認めるよ
そういう風に生きてこなかった
自分の本当の思いを隠して
表面だけ無事平穏を装っていた
それに耐えられなくなり
途中から全てを壊して
もっとひどい事態を招いてでも
自分の人生を手に入れようとしていた
それで君や母さんを苦しめていた
だからこそ、君の選択を
どんな時でも肯定したいんだ
これは僕のエゴだよ
善良な人間になれなかった
僕のエゴだ
その言葉が聞けてよかった
多分父さんは
いい人なんだと思うよ
それはどうだろうか
私は父さんが私の父さんで
よかったと思う
いつか彼氏を紹介しても
怒らないで会ってね
とても楽しみだよ
僕は友達が少ないから
是非彼に友達になってほしいな
今の僕たちみたいに
そうだね
きっといい友達になる
そういう人を私は選ぶと思う
（終）
※【スナップショット】では
ワンシチュエーションでの
短いダイアローグや詩を
不定期に載せていきます。
今回はここまで。
お読みいただきありがとうございます。
今日も明日も
読んでくださった皆さんにとって
善い一日でありますように。
次回のエッセイや作品で
またお会いしましょう。
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