霧の中で過去をつかむ -須賀敦子のエッセイについて
【水曜日は文学の日】
私がエッセイを書いていて、誰の文体や作品が理想かと言うと、須賀敦子だという気がします。
彼女のような題材は持っていないし、書き方が違うのは自分で分かっている。でも、真似は出来ない理想としての規範みたいなものがあって、私にとって、ことエッセイに関しては、須賀敦子の一連のイタリアでの回想を書いた作品が、それにあたります。
須賀敦子は1929年生まれ。イタリアに渡り、イタリア人と結婚して、翻訳者として活動します。夫と死別し、1971年に帰国すると、