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クレモナで、聴いて、食べて、感動して。Part.2

バイオリン編でもクレモナが登場しましたが、前後編に分けてクレモナの街歩きをご案内します。バイオリンだけじゃない、小さくて偉大なクレモナ。見どころが、ギュっと濃縮されている、美しい街です。

Part.1 

  1. クレモナの街歩き

  2. 食べても楽しい、クレモナ。

Part.2 

バイオリン博物館

クレモナは、バイオリンだけの街じゃないといっても、やはりアントニオ・ストラディヴァリは、街に欠かせない存在。彼の名の広場には、モダンな彼の銅像があります。

こちらにも、彼の銅像があります。ここは、バイオリン博物館前の広場。

広場には、バイオリンにちなんだオブジェがいくつもあり、博物館へ入館する、うきうき、どきどき感が、グンと高まります。

なのに、博物館は、思ったよりフツーな建物。

館内では、バイオリンの展示はもちろん、工房の様子を見学できたり、製作過程をスクリーンで追うことができるようになっています。

コンサートホール (Auditorium Giovanni Arvedi)

もしタイミングが合えば、強くオススメするのが、館内でのコンサート。

バイオリンをモチーフにした木造のホール。流線的で有機的な美しさに、心がグっと鷲掴みにされます。音響には、日本の永田音響設計の技術が活かされています。

音響に細心の注意を払い、見た目も美しい、こんなに素晴らしいホールを作ったクレモナに心から称賛します。

博物館に保管してあるバイオリンで演奏されるコンサート。警備員がいて、バイオリンに近づく人たちを、ことごとく阻止してました。

当日でも切符を購入できます。最後の段に、博物館のHPを案内しておくので、日程はそこからチェックくださいね!

バイオリン奏者のデイヴィッド・ギャレットが、このホールで、博物館所有のバイオリンの弾き比べをしています。おもしろいですよ!

博物館をあとに歩いていたら、煙がぼんぼん向かってきた。なんとも大きな鍋、というのか、大きなフライパンというのか、栗を焼いているところに遭遇。

猿カニ合戦では、栗がパーンと弾けるけど、焼く前に皮に切れ目を入れるから、おじさんの顔には、栗がパチーンと飛ばないから大丈夫。

梳毛(そもう)組合

前日に散策をしていて、見つけた、この路地。Via Lanaioli 羊毛通り。クレモナでも羊毛業が盛んだったことが伺える通り名。

洗礼堂に入ったときに、やはり聖人がいらっしゃいました。1510年に羊毛を叩く、梳毛(そもう)組合が信者会を結成し、自分たちの守護聖人であるビアジョ聖人を祀ったそうです。

聖人が右手に持つのが、羊毛を梳くための専用ブラシです。歯が長い!本物だと思います。

羊さんから生地になるまでの過程は、こちらで案内しています。→ イタリアの伊達男が着こなす、毛玉が特徴のカゼンティーノ生地。

大聖堂の正面に残る、1000年前の装飾。


さて、そろそろ、大聖堂に近づきましょう。日中の写真がない!ので、夜の大聖堂で、失礼します。大聖堂の隣の八角系の祠が、洗礼堂です。

全体を撮るのを忘れてしまうほど、吸い寄せられた、大聖堂のファサードの装飾。

マリアさまに捧げられた大聖堂なので、中央に幼児キリストを抱いたマリアさまがいます。足元の帯状装飾をじーっとみてみる。

1100年から1200年にかけて製作されたもの。装飾には、ただなんとなく、模様として彫ったものは一切なく、すべてに意味があります。なんだと思いますか?

12ヶ月の営みです。

昔の新年は、春始まりの3月からなので、右から3月〜8月までにする仕事。種を蒔いて、耕して、収穫して、麦をトントン叩いている風景(だと思う)。

こちらは、秋から冬にかけて。右から9月〜2月。葡萄の収穫をしてる!隣に計りがあるから、葡萄は売買されていたのかしら。

豚や羊を屠殺し、ハムやサラミに加工します。冬の貴重な食物です。隣では、甕(かめ)を手にして、何してるんだろう。うーん、わからない。左端は、畑を耕しているところかしら。翌月は種まきが待っていますものね。

ね、おもしろいでしょう。まるで当時にタイムスリップしたように、楽しめます。

目線を下ろして、正面扉。「よい、しょっ。」と柱を持ち上げている、ちびっこ預言者を発見。

なんでこんなところにまで、装飾するんだろう。中世彫刻が大好きなので、キュンキュンしちゃいます。

さらには、正面扉の左右の細長ーいスペースに、4人の預言者がいます。正面扉から大聖堂に入る時は、預言者達に見下ろされるのか。緊張しそうだ。

ドレットヘアのような、髪がモコモコの預言者。髪の毛もお髭も、ノミでウニウニ感をちゃんと出してる。職人さんの技が細かいです。

「は〜ぃ」みたいな、ちょっと軽めにみえる預言者。こういう顔の人、いるいる。行きつけの自転車屋の店主に顔がそっくりだ。

顔を上に向けると、ヤンキー座りしてる、彼も預言者かしら。幾世紀にも渡り、その姿勢でお疲れさまです。骨盤の歪みはなさそうですね。

こちらは、人魚かしら。獅子の胴体にワシの頭と翼のある幻獣グリフィンの、変形バージョン。胴体から繋がるタコのような足がグルリと体に巻きついています。

しかも、なにかを踏みつけて、タコ足も、なにかを掴んでる。捕らえられているのは、異端者かもしれません。

大聖堂のファサードが装飾されたのは、1100年から1200年にかけて。

1300年代は天国と地獄がメインの装飾となり、1400年以降は、どちらかというと絵画で、聖書の名場面が表現されるようになり、卓越した手法や技術で、素晴らしい芸術が生み出されます。

一方、中世時代の装飾は、自由に想像を羽ばたかせているようで、ヘタウマな感じの表現など、見ていて飽きません。

正面扉のアーチ。1本として同じ装飾がない。現代と時間の流れは違えど、どれだけの製作期間をかけたんだろう。石を棒状に丸みをもたせて、そこに、装飾を施していったんだろうけど、いい仕事してます。

中世の教会のファサードでは、目にする機会が多い、このシーン。

アダム、大きな口を開けて、がぶりと、りんごを食べてる。
あ〜、禁断の実を食べちゃった。

そこで気がついた。

わたしたち、裸じゃない!恥ずかしいわ!
なにか、隠すもの!葉っぱがあった!

さ、さ、早く出てって、出てって。

天使に楽園を追いやられた、アダムとイヴ。

ああ、なんてこったい。これからどうすればいいんだ。

大聖堂の内部は豪華絢爛。

アダムとイヴの楽園を追われたシーンに別れを告げ、やっと大聖堂の内部に入りました。

わぉぉぉ

わぉぉぉ

天井も、たっかーい。
すっごーい。

口あんぐりで、感嘆詞しか出てきませんでした。なに、この、聖堂。どこに目を向けても、美しくないものが、ない。

1300年代くらいまでの装飾なのかと思って入館したのに、すごく豪華絢爛。簡素な石積みの外観とのギャップが激しすぎます。

どれだけ、この街は栄えていたのでしょう。周辺地域を含む人口約7万2000人のクレモナって、どんな街か、おさらいしてみました。

1000年代には、すでにクレモナ国があり、独自の貨幣を造幣していたようなので、それだけでも、権力のある国だったことがわかります。

クレモナの守護聖人「オモボーノ聖人」
が埋葬されている
地下礼拝堂の床面は、
古代ローマ時代のモザイク。

数ある権力争いや戦争に勝ち続け、1300年代は人口が8万にも膨れ上がり、世紀が変わると、ミラノ王国の一部となり、ヴィスコンティ家とスフォルツァ家がクレモナに高い文化をもたらしたようです。

カラフルで美しい。
1300年代のフレスコ画の天井。

その後、スペインの支配下に置かれたようですが、支配はゆるく、1700年代になると、オーストリアのハプスブルグ家の統治に入り、1865年のイタリア統一まで続きます。

その間に、バイオリン製作者のアマティ・ファミリー、グァルネリ・ファミリー、そしてストラディヴァリ、ベニスのサンマルコ寺院の学長を歴任したクラウディオ・モンテヴェルディを輩出しています。

ミケランジェロに影響を受け
筋肉ムキムキの聖人。

磔刑の後ろで、ライオンがこちらを見ているの、わかりますか?

目線を送る振り向き天使は、赤い帽子を持っています。

『ライオン&枢機卿の赤い帽子』は、ジローラモ聖人のアトリビュート。日本語ではヒエロニムス聖人とも呼ばれますが、ジローラモの方が、覚えやすいし、わかりやすい。

ちょっとお腹ぽっこりで、大人顔の天使。誰かの知り合いを描いたのかなぁ。

1500年代に描かれたフレスコ画は、すごい迫力。こちらは、正面扉上に描かれた、キリスト磔刑図。

風がビュンビュンと吹く音と、ワーワーという騒々しい人の声、そのなかで、我が子を見て倒れるマリア様。と、駆けつけるマッダレナ。まるで舞台が繰り広げられているような臨場感です。

左側はクレモナの大聖堂に描かれたもので作家はSojaro。右側はヴァティカン美術館所有のラファエロの描いた「キリスト変容」。

キリストが両手を広げる仕草も、天へ舞い上がるシーンも、似てる。当時の画家が、才能ある芸術家に影響を受け、自分の作品に取り入れたのが分かります。いや〜、おもしろいですね〜。

正面扉上の「キリスト磔刑図」を描いた、Pordenone(ポルデノーネ)は、両壁の一部も描いています。担当したのは、キリストが捕まえられ、拷問を受け、磔刑に合うまでのシーン。

漫画の吹き出しのように、丸い穴から上半身を乗り出している預言者に、場面を説明させているのが独特で、シーンとそぐわない感情で申し訳けないけど、眺めていて楽しい。

「なんと!」とか、「おぉぉ、なんてことだ!」なんてセリフを発しそうなジェスチャー。

右の預言者:「見いやっ!こんな酷いことをさせられている!」
左の預言者:「なんとも、酷いことをするもんだ」

いかがでしたでしょうか?

大聖堂がこんなにボリューミーだとは思いませんでした。

クレモナは小さな街だから、日帰りでも十分観光できますが、可能なら、一泊して、コンサートを楽しみ、食事を楽しみ、のんびり、街を散策すると、クレモナという街が、すっと、心のなかに入ってくると思います。

観光都市では、なかなか遭遇するのが難しい、人々の生活や、のんびりとした空気に触れたい方は、文化的にもレベルの高いクレモナへ足を運んでみてくださいね。

1粒で二度楽しめます(笑)ミラノから電車に乗り、早いものでは、約1時間で行けます。

最後まで読んでくださり、
ありがとうございます!

バイオリン博物館のコンサート日程はこちらから。
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前編はこちらから 
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