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不妊症#11 費用や制度に思うことと、仕事の話

今は恵まれた時代だなと、つくづく思う。
クリニックには、仲間だろう患者が多くいる。
しかし、仕事や社会に戻れば、治療経験者や、身近にいた人は、まだまだ少数派なんだろう。

手術費用のこと

保険適応の子宮卵管造影とFT手術が、またまた同月だったのは、地味にラッキーだった。実質負担のトータルは10万円いかなかった(※年収を逆算してはいけません)。
通い始めは特に自費の検査も多く、費用がかさんでいたので、地味に嬉しかった。

あとは、マイナンバーカード。
高額療養費制度の申請時に、職場で書類を取り寄せるなり何なりしなけりゃいけないのかしらと憂鬱だったのに、びっくり、病院でマイナンバーカードをかざすだけで、手続きが完了してしまった。
待合中は、ほんまか?と疑っていたけど、お会計してみると、請求額はちゃんと10万以下になっていた。

マイナンバーカードェ…。胡散臭さは拭えないが、「あら、便利!」と思ってしまったらもうこちらの負けだ。手のひらくるりで、デジタル庁バンザイ!!の賛成派に一気になってしまった。

医療従事者も人

術後の再閉塞が怖くて、ずっと焦っていた。
ここまでで、治療開始から4ヶ月が経っていた。3回の人工授精と、連休と。ホルモン剤の影響で、生理周期は長め。残された期日まで、あと2ヶ月。

開院日と、自己のスケジュールが合わないのがもどかしかった。夜診してほしい…。朝以外も人工授精してほしいぃ…。

でもさ、そりゃわたしは夜も休日も休むんだから、病院職員さんだって休むよ。どんなに焦ろうとも、期限があろうとも、無理なものは無理。
それより、予約がどんなに混んでいても、排卵の都合で人工授精の枠をねじ込んでくれるじゃない。診察が閉院時刻をオーバーしても、閉店ガラガラと追い出したりしないじゃない。そっちに感謝しよう。

本当に無理なら、転院すればいいのだ。
恨むなら、排卵日をコントロールできない臓器の構造を恨むんや。人智超えてこ。

保険診療のこと

誰がいつなるのかわからないのが病気。
困った時にはもうそこにあるのが、社会保険。
いざ、自分がこうなってみると、皆保険制度のありがたみを再確認できる。

おかげで、人工授精の自己負担は、一周期で一万円程。それから、手術、人工授精ときて、駄目なら体外受精だな、と当たり前に考えられている。
恐怖はあれど、手段と費用とを天秤に掛けて深く悩むことはない。

また、職場のお姉様方に治療のことをちらほら話すと、口を揃えて言われるのは「今は保険が使えるんでしょ」。その通り。

治療費でゆうに何百万円を消費してしまう時代だったら、わたし自身は子なしを選択しただろう。元々結婚願望弱かったし、治療も出産もないなら、自分のタイミングで転職できるし、好きな旅行もできるし…。それならそれで全然ありと思えてしまう。

わたしが通う不妊専門のクリニックは、何時間も待たないといけない程に、いつも待合室に患者が溢れている。このニッチそうな一分野だけでも、それなりの売り上げに違いない。

わたしは、現状ですら、FTを勧められたのは技術認定とか実績作りのためもあったんじゃないかしら〜とか、ふんわり思う程には懐疑的な人間だ。これが自費診療の時代だったなら、政府のお墨付きがない診療だなんて、カモにされているんじゃないか?とか、あることないこと妄想して、
おそらく信じて通い続けられなかっただろう。

回数制限で区切りがあるのも、わたしは良いと思う。(適切な回数かとか、他分野の病気と適応の厳格さが違う気がするのは置いといて。)
治療を終えられる状態が、妊娠、出産だけとなると、上手くいかないとき泥沼に陥る。

これはわたしの考え方だが、
保険を使い切るとこまでやれば、やり切ったとと、ひとまずは思えると思うのだ。
「あと何回」の決まりは、客観的に現実を評価する機会として、今のところ機能してくれている。1消費ごとに泣いちゃうけどね。

(夫は違いそうなので、もしその時が来れば考えなくてはならない。)


とにかく、不妊治療が保険適応されたことで敷居が低くなり、治療へのアクセスが抜群に良かったから、今通院しようと思えていることは、間違いない。
方法を選べる30代前半で治療に臨めているのも、そのおかげ。

本当にありがたい時代に生まれた。

医療技術の進歩に感謝。
ガースー元総理に感謝。
それから、これがありきたりな治療になるように、声をあげてくださった先人方に感謝。



社会での認知度と職場

「隠してないから、聞かれたら答える。または、支障が出るなら自ら伝える」のマイポリシーに従い、検査終了と方針確定の時点で、チームの同僚1名と上司に伝えた。

手術しないと授かれないから、その日は仕事をほっぽって、どうしても休ませてほしいこと。極力当番日には穴を開けないので、突然の休みを承認してほしいこと。
授かるか体外受精中かは不明だが、最短で半年後には、何らかの体調不良や影響が出そうなこと。
高齢男性の上司だが、あっさりとOKを出してくれて一安心した。

ただ、どこかで「日付が大事なんだろ?必要なら当番も休んで良い」「早期に有能な交代要員を出す」と言ってくれることを期待したが、それはさすがに無理だった。自分としても、責任は果たしたいから良いんだけど。この両立したい思いが、後々、辛くなる一因にはなっていくのだった。

また、上司は産育休の方を危惧していた。
飛躍している。気が早すぎるぜ…。

職場としては、妊婦への配慮は慣れたものでも、不妊治療患者への配慮は、要望された以上のことはわからないのだろう。
昔に比べ、いくら治療の社会での認知度が上がったとはいえ、「不妊治療」「体外受精」のキーワードで勘づいて、想像してもらうことはできないのだ。

他の病気だって知名度がなければ、職場の理解を得るのが大変なのは一緒だ。
だから、この違和感は仕方ないと捨て置いた。
これが後になり跳ね返ってくる事態が起きたのだが、それはまた別の記事で。


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