アリシネマ

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最近の記事

マルタイの女

3 信じれば人殺しも証言もできる  大御所女優が殺人を見てしまう。犯人はカルト信者で、女優は裁判で証言することになる。そして警官が、犯人から防護するため、一日中つきまとう。マルタイというのは警察の隠語で、対象者の意味らしい。そういえば、暴力団をマルボウ、警察庁をサッチョウ、警視庁をシチョウとか、警察関係は略語がいっぱいあった。今では絶対に使われることがないだろうが、キジルシってのもあって、キチガイのことだった。  信者もキチガイも、人を殺せるくらいの人は、何かしらを妄信

    • ひまわり

      3  これも古典中の古典で、中学生の頃に見て、陰鬱な記憶しかなかったが、今あらためて見て、やはり悲しみしかない。恋愛ものという評判も聞くが、むろん恋愛ではあるのだが、今のロシア・ウクライナの紛争下で見ると、反戦ものと見える。  イタリア女は、結婚した男が戦争から戻って来ず、ソ連まで探しに行く。そしたら、夫はロシア女と結婚し、可愛い子どもまでいた。女は戦時中からずっと男のことを思い続けていたのに、男はほかの女と一緒にいたと知って、とても平常ではいられない。 男も、戦争で記

      • 日本暴力団 組長

        3 ずるいことを臆面もなくできる奴が強い  大阪の組が全国に勢力を伸ばそうと、各地の組と手を結んでいく。各地区では、大阪の組の進出に対抗するため、地元の組の連合会ができる。大阪の組はその中の一つにうまいこと言って手下にする。そして、手下と地元の組が抗争を起こし、両組とも体力を失う。そこに大阪の組が出てきて、勢力下に置くという戦術だ。 汚い。けど、人を戦わせて漁夫の利を得るというのは、昔からの戦術だ。誰もがそうしたい。そうしたいけど、現実にはなかなかできない。できないのは

        • アイ・フィール・プリティ!  人生最高のハプニング

          4 自信に根拠などいらない  主人公の女は決して美人とはいえない。自信が持てず鬱々と日々を過ごしている。けど向上心は旺盛で、美しくなろうとジムに通う。そして、あの一か所でこぎ続ける自転車マシーンに乗っている時に転倒し、何のはずみか、自分がものすごい美人になったと思えるようになる。 周りの人には何も変わって見えないが、当人だけは自分が美人に見えている。それからこの女は憧れの仕事に応募して、見事採用される。彼氏もできる。仕事で社長に認められる。全て、自分に自信があるところか

        マルタイの女

          ビリギャル

          3 がんばった奴に結果が出るとうれしい  好きなことだけしてればいいという親のもとに育った娘が、大学までの一貫私立校に入り、好き放題してたら停学処分になり、ほかの大学を受験することにする。塾に入り、どうせやるならと、慶応を目指す。  他人事ではない。この娘は高2の夏休みに塾に入ったから、受験まで1年半。自分は高3の夏から勉強を始めて、浪人して東大に入ったから、やはり1年半。さすがに小4レベルの学力ではなかったが、地方の公立校で、成績は下位。最下位とは言わないまでも、下の

          RRR

          5  おもしろかった。インド映画は「踊るマハラジャ」以来だ。異例の大ヒットと聞いていたが、劇場で見逃した。テレビで見ても迫力があった。植民地での非道さが、いつだったか王室の人がインドに行ったのがニュースになってて、それほど禍根を残すほどのものだったことも想像できた。 主人公の2人が、両方ともひげを生やしてて、はじめのうちどっちがどっちだか分からなくなった。それでもアクションシーンの緊迫感で見飽きることがなくて、人が重力を超えて飛んだり飛ばされたりするし、野獣もCGなのが分

          バビロン

          3 時は移る、人は過去の自分に固執する  ハリウッド。一旗揚げようとやってきた女が、演技力が認められて女優になり、そしてスターになる。撮影所では監督が威張り散らし、大御所俳優は飲んだくれている。エキストラが怪我したり死ぬくらいなんでもない。槍が飛んでくると、危ないではなく、槍が新しいと文句を言う。いい映像を撮ることが最優先され、ほかのことはすべて犠牲にしてもいい。そこにいるみんながその価値基準で生きている。  そして無声映画からトーキーへ。映画の作りが変わり、かつてスタ

          スウィングガールズ

          3 関係に振り回されてる  高校で夏休みに補習を課せられている女子高生たちが、ジャズバンドを組むことになる。補修を受けている女たちの様子が目に入るだけでイライラしてくるようなクソ女たちだ。補習をさぼるために吹奏楽部の弁当を届ける役を買って出る。列車内でみんなが寝て乗り過ごし、歩いて弁当を持って行くが、そんなやつらだから途中でこぼしたおかずをもどしたりする。 案の定、弁当を食べた吹奏楽部員たちは全滅。代わりに野球部の応援をする楽団を、このダメ補習チームが組むことになる。当

          スウィングガールズ

          コーダ

          4 音がない世界  主人公の両親と兄は耳が聞こえない。家族で一人だけ耳が聞こえる主人公は、何の因果か歌がうまい。家族3人は歌が聞こえない。娘の文化祭に行って、周りの人が手拍子してるのに合わそうとして、手をたたくと外れてしまう。 この映画で、音が聞こえないのがどんなか、まったく分かっていなかったことを知った。たぶん見た今もほとんど分かってないに違いないけど、わずかでも感じられたのは大きな収穫だ。  映画が面白いかどうかを決めるのは、1割ストーリー、1割演技、8割音楽だと

          氷の微笑

          2 似た者は引かれ合う  殺人事件の容疑者になった女性作家と、捜査を担当した刑事が恋をする。その刑事も過去に人を射殺したことがあった。その事件を題材に小説家は作品を書こうとしていて、取材のために刑事に質問を重ねる。刑事は刑事で殺人事件の捜査のために小説家を調べる。 すると小説家の周りに、殺人事件を起こした人が何人も出てくる。刑事の元妻も大学の同窓で疑いがかけられる。小説家が犯人だと思って調べ始めた刑事は、次々と疑わしい人物が出てきて、小説家を疑いながらも関係を深めていく

          フェイブルマン

          3 外国の宗教事情は分からん  コンピュータ技術者の父は几帳面で律儀。元ピアニストの母は情にもろく感覚的。オープニングすぐのシーンで、息子に映画の良さを語るのに、父は1秒24枚の画が動くと説明し、母は感動すると話す。堅物の父がやっかいな人に思えるが、その実、母が不倫していて、まじめな父の人のよさが際立つ。  スピルバーグの自伝的作品と聞いて見たが、不倫、信仰、の2テーマが強く残った。  母親の不倫の相手は、夫の友人で、それだけでもダメな人だが、夫が栄転する時に、親友も

          フェイブルマン

          終電車

          3 ユダヤ人演出家が劇場の地下に隠れてた  戦中のパリ。ドイツに占領されていて、演出家の男は劇場の地下に隠れている。妻のカトリーヌ・ドヌーブがかくまいながら、脱出の機会をうかがう。そんな中でも劇場では公演が続けられており、寒さをしのぐためむしろ大入り満員なんだそうだ。  「戦時中」というと、爆撃におびえながら、明日をも知れぬ命をかろうじてつないでいるのかと思っていた。ましてやユダヤ人となると、息をする音にも敏感になるくらい神経を疲れさせてたのかと思っていた。 でも考え

          ハスラーズ

          2 なんだこいつら  世の中には悪い奴がいるもんだ。人をだました金で遊んで、楽しめている。 生活に困って盗みをする、ここまでは仕方ないと思う。でも、盗んだ金でぜいたくして、それが楽しい。不安も罪悪感もない。その精神状態が信じられない。 でも主人公も最初はいけないと思っていた。それがいつしか慣れて、派手な買い物をして、パーティして、笑っていられるようになる。人間、機縁さえあれば、どんなクソ野郎にもなれる。人間の中には、仏もいれば畜生、餓鬼もいて、その時にどの面が強く出て

          兵隊やくざ

          3 逃げは、空間的にも思考的にも  世の中の嫌なことのほとんどは人間関係だとされる。ストレスのもとは突き詰めれば人間関係で、中でも逃げ場のない家族関係が大きな原因となる。それが戦時中だと、国中が逃げ場のない人間関係になってしまう。  初年兵の勝新太郎は、もとやくざでケンカがめっぽう強い。上官に反抗的態度をとる問題児だが、教育係の上等兵も軍隊が嫌いで、なにかと勝新の味方をする。勝新が暴れるのは、上官が階級をかさに着て気ままな行動をする時で、反抗して暴れるのは当然と思える。

          ミンボーの女

          3 強者の横暴を野放しにする組織はつぶれる  ホテルに出入りするやくざを締め出そうとする。社員ではらちが明かず、専門の弁護士が関わることになる。録画カメラを設置し、恐喝や暴行の証拠を準備をする。金をせびろうとあの手この手でくるやくざに、弁護士はひるむことなく、怖がらないのは、相手を知っているからだと話す。 やくざは怖がらせるプロだ。弱いものに強く出る姿勢は、役者の演技と分かっていながらも腹が立つ。太鼓の音楽がすごく恐怖を高めてくれる。実際に暴力を振るうわけはないと思いな

          ミンボーの女

          シコふんじゃった。

          3 とりあえず、ふんじゃえ  この映画の時代、ナンパサークルというのがあった。夏はサーフィン、冬はスキーと、いろんなスポーツを楽しむっていう表向きだが、スポーツを本気でするわけもなく、なぜか他の女子大の学生がたくさんいたりして、その本当の目的は男女の出会いの場だったようだ。そんなサークル所属の、ナンパな主人公が、卒業単位のために相撲部に入る。 立教大という、あの時代、ミッション系と言われて女子にモテモテだった大学で、相撲という古臭い部は廃部寸前。なんとか頭数を揃えて試合

          シコふんじゃった。