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地域の挑戦者インタビュー Vo.7 株式会社児島技研 代表取締役 尾﨑祐一さん

今回お話を伺ったのは、実践型インターンシップを活用し、地域の高校生と地域の企業を結び付ける異業種交流会を開催された株式会社児島技研の代表取締役である尾﨑祐一さん。インターン生と企画した「児島しごと博」は今年で2年目となりました。
 実践型インターンシップを受け入れた経緯や、受け入れに対するメリットや大変なことを中心にお話していただきました。

尾﨑祐一さん  倉敷市児島出身。創業者である父親の影響を受け、鳥取大学工学部で土木を学び、総合建設会社である戸田建設株式会社に入社。2019年4月に地元に戻るとともに、児島技研に入社、社内勉強会の開催や意欲的な人材採用に取り組み、社内の活性化に向け、奔走する。

父の会社を受け継いだ際の不安と決意


〇児島技研に入社するまでの経緯をお聞かせください。

まず、児島技研は父が創業した会社で、この9月で創業30年を迎えました。私自身、会社を継ぐことは強制されていませんでしたが、ずっと父親の背中を見て建設業のやりがいや面白さを肌で感じながら育ったため、建設業界を志望し、大学に進学しました。
  大学卒業後は、すぐに児島技研に入社するのではなく、一度外の会社に出ました。「外の会社で学んで、それを持ち帰って、児島技研で活かす」ということをやりたかったからです。7年間外の会社で経験し、当時の社長が還暦を迎えるタイミングで「そろそろ児島技研に戻ってきてほしい」という要望を受け、会社に戻ることを決意しました。


〇会社を受け継いだ時のお気持ちをお聞かせください。

自分で色々な役回りをしなければいけないことへの戸惑いがありました。前職では、現場監督として1年半ほどの期間で、配属された現場を管理していくことだけを考えていました。しかし、児島技研は大企業ではないため、一人で何役もしなければなりませんでした。会社の営業項目を頭に入れつつ営業をしたり、納品するために書類作成をしたり、人員不足であれば、作業服を着て現場に出ることも必要だったりします。色んな役周りをしなければいけない事への戸惑いが大きかったです。一方で、各営業項目のレベルアップを図り、「児島技研だから安心して任せられる」という会社にしていきたいという想いがありました。

課題は、知名度の低さから地元の若い人材が集まらないこと


〇実践型インターンシップを受け入れるに至った経緯をお聞かせください。

実践型インターンシップ自体は、実践型インターンシップを取り入れたことのある企業から紹介されて知りました。取り入れたきっかけは、若い地元の人材がなかなか集まらないという課題を解決したいという想いがあったからです。
 原因として知名度の低さがありました。台風や暴風雨時にすぐに出勤できる体制を整えるために、地元の人材が必要でしたが、県や市が主催する合同企業説明会に参加しても、自社のブースに来てもらうのは難しく、なかなか採用に結び付かない現状がありました。
 そこで、児島地域で独自の異業種交流会を開催することを計画しました。大規模の企業説明会で児島地域の企業が注目されないのであれば、独自の異業種交流会を開催し、会社の認知度を向上することで、採用につなげていこうという考えです。また、児島技研がリードして開催することで、児島技研だけでなく、児島地域の他の企業も巻き込み、地域の活性化に繋がるという考えもあります。


〇実戦型インターンシップの話を持ち掛けられた時は、どう意思決定されましたか。
 社員に負担がかかってしまうという懸念や、やったことがないことをやる不安がありました。
 しかし、3年前にこの会社に戻ってきて会社を中身から変えていこうと思っていた時期だったため、「このチャンスを逃したら次はないかもしれない」という考えが強くありました。「こういう話を持ち掛けられたということは、今やりなさいと天から与えられているものだ」と捉え、覚悟を決めました。
 また、実践型インターンシップを取り入れることで会社に刺激を与えられるとも考えました。採用活動は、総務や人事がするものという考えが社内にありましたが、採用は社員全体で考えて、一人一人が採用活動に協力し、会社全体で社員を育てていくといった考えを社内に浸透させていきたいと感じていました。


〇具体的な取り組み内容について具体的にお聞かせください。

学生を2名受け入れました。2名は1か月間毎日出社し、イベント開催までの段取りに沿って進めました。児島地区のリサーチ→課題発見→企画立案→企業・学校へのプレゼン→イベント開催という流れです。
 学生2名と「児島しごと博」を企画し、11社、11業種の企業を集めた異業種交流会を実施しました。異業種交流会では、企業や業務内容の説明をただ聞くだけの内容にするのではなく、仕事や商品を目で見て、触れて体験できるワークショップの様な形で行うことで学生の皆様にも楽しんでいただける内容にしました。

企業訪問するインターン生

自社だけではできなかったことを達成。鍵は学生のフレッシュな考えと前向きな姿勢


〇実戦型インターンシップ受け入れのメリットをお聞かせください。

自社だけでは難しかったという想いが強いです。高校生に年齢が近い大学生の力を借りられたり、フレッシュな考えを取り入れられたりしました。

 一番感心したのは、相手が誰であろうと物怖じせず、課題解決に向けてリサーチしていく所です。2人は、他地域での成功事例を自ら調べ、異業種交流会で成功した青森県の高校にアポイントをとって会議をしました。
 大人だけであれば「学校の先生は忙しいため迷惑にならないか」と考えてしまいがちですが、児島地域のためにイベントを成功させたいという想いを先生に熱心に伝え、開催に向けてのアドバイスを頂くことができました。
 我々大人は、先入観や大人の常識で判断しがちな部分も多いですが、何事にもひるむことなくチャレンジする姿勢は、見習わなければいけないなと感じました。

 また、社員の意識も変化しました。社員とは、昼休みに一緒に縄跳びをするなど交流を図りました。社員とインターンシップ生が交流したことで、社内に「学生がこれだけ企業に力を貸してくれているのだから自分たちも頑張ろう」という一体感が生まれました。

〇反対に大変だったことをお聞かせください。

インターン生の中でも色んなレベル・性格の人がいることです。レベルや性格に合わせてフォローをしていきました。インターン生にとっても、社会に出てから必要な貴重な経験だったと思います。また、これは社員教育にも生かせると学べました。
 注意点として、「実践型インターンシップに参加した学生は受け入れ企業に就職してくれる」といった考えでは、いい成果は出ないと感じます。実践型インターンシップは企業が抱える課題を学生と一緒に解決する課題解決型のインターンです。今後、参加を検討している企業の皆様も、採用直結型ではないことをご理解されたうえで、課題解決によって会社にいい成果をもたらしてくれるといったスタンスで参加されるのがいいかなと思います。
 弊社の場合、インターンシップ終了後も定期的にインターン生とやりとりをしており、関係性が続いていることに喜びを感じています。2年目開催となったしごと博にもパンフレットの表紙作成をしてくれ、また開催日当日も遠方からかけつけてくれました。

〇最後に、現在力を入れていることや目標についてお聞かせください。

「児島しごと博」については、来年に向けて動いています。対象を、就職する学生だけでなく進学する学生にも広げたいと考えています。すぐに就職に結びつかなくても、大学卒業後のUターンに繋がれば地域の活性化が促進します。また、年次を落として1,2年生も対象にし、早い段階で繋がりを作ることも目指します。参加する企業数についても増やしていきたいです。
 本業では、他社では探しきれないトラブルを未然に防ぐことに力を入れています。弊社では、水道管や排水管の調査など、地面の下のインフラ調査をしています。インフラの調査というジャンルにおいてトップを走り続けることを目指したいです。そのためにも、営業項目を広げることや、既存の営業項目をレベルアップさせることに注力します。
 また、地域の安全を守るという仕事を通して、地域に支えられているという感覚になりました。これからも、本業の安全を守るということに加えて、地域に恩返しするために地域活性化に取り組んでいきます。

これからの児島しごと博について語る尾﨑社長(左)とインタビュワー髙木(右)

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