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95%サスティナブルな建築、実寸大の間取り体験、映像・3Dモデル生成AIの話(コンワダさん53週目)

 こんにちは、株式会社アーキロイドのコンワダさんです。今週も社内で話題になった事例(コンワダさん)からいくつかをご紹介します。バックナンバーはこちら

95%がサスティナブル建築「The Natural Pavilion」

―――概要
 全体の95%が再生可能なバイオベースの材料で構成された建築「The Natural Pavilion」に関する記事です。オランダにて10年に1度開催される国際園芸博覧会「Floriade Expo 2022」(フロリアードエキスポ)のために建てられたパヴィリオンで、設計はオランダ・デルフトを拠点に活動するDP6 architectuurstudioです。サーキュラーエコノミー(循環型社会)の理念を反映したサスティナブルな建築です。

 コンセプトとして、「サスティナビリティ」と「フレキシビリティ」の両立を掲げています。素材は、地域の木を中心に、農業や園芸から排出された残材から作られたか壁などバイオベースの材料、再利用ガラスを用いることで95%が再生可能なもので構成されています。また、接合部にはユニバーサル規格のスチール金物を用いた乾式工法とすることで、解体再構築可能にしています。接合部とプランの他にも、のこぎり屋根と木製のルーバーによって日射と温度のバランスを最適化し、設備をミニマムにする設計になっています。会期後はオランダ各所の自然保護区で展示スペースや映画館としての利用、2025年以降は持続可能な食のプロジェクト「Flevo Campus」の一部となるそうです。

―――この事例について
 95%という数字はインパクトがありますね。我々が暮らしている住宅やマンション、オフィスには、金属や合成樹脂といった非バイオベースの材料が多く使われており、バイオベースの材料は95%もないでしょう(体感値)。今後はこのパヴィリオンを見習い、全てバイオベースの素材にしていくべきかというと、そう単純ではありません。パヴィリオンは住居やオフィスではないので1人の人が長時間過ごすと言う前提はありません。私達の身の回りに使われている新建材と呼ばれるものの多くは、機能や性能が高かったり、コストが低かったり、メンテナンスが楽だったり、そういった合理性の中で開発されてきました。日本は四季が豊かな分、多くの地域が冬は寒く夏は暑いです。対策として国の主導のもと断熱性能を高める方向に進んでおり、中でも熱損失の大きな開口部はどんどん高性能化しています。空気が漏れ出ないように気密性が高まり、窓はペアガラスで樹脂サッシはどんどん重量化しています。一方で木製サッシも絶滅したわけではありませんが、全体で見れば総数が少ないので一般的にはコスト高になる傾向にあります。このように、今の”合理的な枠組み”の中ではバイオベースにサスティナブルに急転換と言うのは難しいですよね。しかし、今後は工業製品も脱炭素化、木材もFSC認証材など、今よりもさらに公明正大で持続可能なものづくりが求められます。再生可能な素材を取り入れながらもこれまでの機能性やコストパフォーマンスを維持もしくは”進化”させていくこと、持続可能な成長、が求められています。
 最近のコンワダさんでは、48週目で建設業がいかに産業廃棄物が多いかという話をし、52週目(先週)は農業って全くサスティナブルじゃない、という話題を取り上げました。The Natral Pavilionは農業や園芸から排出された残材を建物の素材に活かしており、この連載の流れを汲んだかのような事例ですね。
 また、プランのフレキシビリティや接合部の考え方は、日本の木造金物軸組工法(≒在来工法)に大いに通ずるところがありますね。在来工法は日本古来の工法で、今でも戸建住宅の大半は在来工法で作られています。910mmのモジュールをベース(910mm×1820mmが1畳)に、乾式で解体再構築可能なフレキシブルな工法で増築減築もお手の物です。日本の戸建住宅はこのパヴィリオンのようなサスティナブルとフレキシブルを両立する素養を存分に持っているので、これから戸建住宅がどの様な進化を遂げていくかが楽しみです。業界の1プレイヤーとしてもその変革に食い込んでいきたいと思います。

▼関連するコンワダさんはこちらから

その他の事例

実寸大間取り図投影「Lifesize Plans」@オーストリア

 Tweetに概要が全て詰まっています。これ、単純にすごい楽しそうですよね。私も体験したいです。
 VRだと視覚的な距離感はわかっても、体感的なことがわからなかったりしますよね。例えば手が届くのか、窮屈じゃないのかとか。素人であれば想像するより体感したほうが早いし、プロであっても実寸大で得られることはたくさんあるはず。
 このTweetで、森美術館の「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」で見たライゾマティクスの展示を思い出しました。

テキストから3Dモデル生成AI「DreamFusion」

 Stable Diffusionなどテキストから画像生成するAIが話題ですが、今回はテキストから3Dモデル生成するAIです「DreamFusion」です。先週は画像から3Dモデルを立ち上げる事例としてGoogleのLOLNeRFを紹介しました。→先週のコンワダさん

テキストから動画生成AI「Make A Video」byMeta

All of these videos were generated by an AI system that our team at Meta built. We call it Make-A-Video. You give it a...

Posted by Mark Zuckerberg on Thursday, September 29, 2022

 こちらはテキストから動画を生成するAI。社名変更したのにメタバースが…と話題になっていたMeta社からです。以前発表したMake A Sceneという、テキストから画像を生成するAIの延長として開発されていたようです。

まとめ

 今週も最後まで読んで下さりありがとうございます。なかなか途切れないAI事例。ここ2ヶ月位は本当にお祭りのように事例が湧いてきますね。
 トップで取り上げたThe Natural Pavilionは、是非リンクを踏んで元記事を写真だけでも良いので見てもらいたいです。製材しただけでペーパーもかけていないような軸組で、そのラフさとか生っぽさがあるんですが、機能的にも必要十分でコンセプチュアルな感じが伝わってきます。意匠的に云々というよりも、時代を現す建築だなぁと感ました。
 そういえばarchiroidのnoteが累計1000スキを突破していて嬉しくなりました。いつも読んでくれている(そんな方がいるかはわかりませんが)皆さんのおかげです。どうもありがとうございます。それではよい週末を。
(文責:つ)


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

【バックナンバー】こちら


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