新馬場新

小説家。日本SF作家クラブ会員。活動報告とかいろいろ。

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小説家。日本SF作家クラブ会員。活動報告とかいろいろ。

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冒険好きな少年が小説家に育ち、30歳になった話。

自己紹介 小説家の新馬場新です。 日本SF作家クラブの会員で、最近はSFばかり書いています。 著作などはX(旧Twitter)のbioを確認してくだされば幸いです。 さて、僕はついさきほど30歳になった。 30だ。 30なんて、子どもの頃には死よりも遠くに見えていた場所だった気がする。 なので、ここらで一度、半生を振り返ろうと思い、noteを開いた。 なにせ遠くまできたのだ。 十年前の今日、ハタチの誕生日に世界一周の旅に出てから、今に至るまでをおもしろおかしく綴ってや

    • 2024年春、SFイベントに出ます。

      出ます。なんと3つも。 ので、その情報をまとめました。 ①はるこん20244月20日(土)・4月21日(日) ※両日参加 ・会場:川崎国際交流センター ・出演企画  4/20(土)14:00~15:30  トーク企画「逆ダボス会議」  4/21(日)11:00~12:30  トーク企画「新人作家パネル」  及び、サイン会にも参加します! ②SFカーニバル4月27日(土)・4月28日(日) ※2日目に参加 ・会場:代官山T-SITE ・出演企画  4月28日(日)11

      • 2023年まとめ

        こんにちは。新馬場新です。 普段は小説を書いていますが、 ここでは2023年のまとめを書きます。 ヘッダーは今年刊行された小説2作。 『沈没船で眠りたい』(双葉社) 『十五年より遠くない』(ガガガ文庫) どちらも装画が美しいですね。 中身もおもしろいらしいです。 さて、宣伝も済んだところで2023を振り返っていきましょう。 2023年_月別の出来事1月 中学時代の友人の結婚式で神戸へ。 二次会の司会業も楽しく、最高の時間を過ごす。えげつない二日酔いのなか、大阪観光ではしゃ

        • 週刊少年マガジン原作大賞受賞しました

          受賞しました。 受賞作は以下の2作。2作同時受賞です。 両方とも奨励賞。正直悔しい結果ではあります。 とはいえ、担当編集さんはついてくれるみたいなので、この悔しさをバネに連載獲得に向けて頑張っていく所存です。 応募要項には「奨励賞は賞金のみ」という記載だったのですが、どうやら拾い上げをしてもらったようです。あるんですね、拾い上げ。小さいころから拾い上げが大好きなのでうれしいです。 あとそうだ。12月18日に新刊出ました。 『十五光年より遠くない』(ガガガ文庫) いま

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        冒険好きな少年が小説家に育ち、30歳になった話。

          「タイムマシンのレシピ」あらすじ

          「タイムマシンを作って欲しいの」 恋人の事故死を嘆く同級生、井沢から依頼を受けた濱田は、青春の全てを捧げてタイムマシン製作に取り組む。 二十年の時を経てタイムマシンは見事完成。だが、同窓会で再会した井沢に報告しても「覚えてない」と一蹴されてしまう。 ショックを受けた濱田はタイムマシンに乗り、過去へ向かう。青春をやり直すために…。 しかし、辿り着いた過去で、未来の自分が井沢の恋人を刺し殺す場面や、中学生の自分か何者かに撃ち殺される瞬間に遭遇してしまう。 真相究明のため、濱田はタ

          「タイムマシンのレシピ」あらすじ

          「月面ホームレス」あらすじ

          22世紀、月面都市へ降り立った青年〈泉宙〉は、人生の一発逆転を夢見ていた。宙には祖父から相続した月の土地があったのだ。 しかし、21世紀初頭に流行った月の土地の権利書は効力を有していないことが判明。慌てて仕事を探す宙だが、科学の粋を集めた月面に人の雇用はほとんどない。 空腹に耐えきれずゴミを漁る宙を救ったのはホームレスたちだった。プライドの高い宙は内心彼らを見下していたが、共に過ごす中で仲間意識が芽生えていく。 「何でも屋」として日銭を稼ぎ始めた宙は多くの人と出逢う。恋人を地

          「月面ホームレス」あらすじ

          「転生なんて、しないから」あらすじ

          「どうせ死ぬならさ、一緒に行こうよ、異世界」 現実に嫌気が差した女子大生の佳澄は、異世界転生を望みながら自殺を試みるが、偶然出逢ったフリーターの恭子に引き止められる。 恭子は佳澄に航空券を見せ「一緒に旅に出よう」と告げた。 思わぬ提案に尻込みする佳澄だが、一歩踏み出す決意を固める。 旅に出るにあたり、二人は三つの約束を交わした。 一つ、互いの事情は詮索しない事。 二つ、それ以外は遠慮しない事。 三つ、旅の間、互いに死にたいなんて絶対言わない事。 二人は日本を飛び出し、ひたすら

          「転生なんて、しないから」あらすじ

          「タイムマシンのレシピ」第3話

          夕暮れの商店街。 寂れたブティックから出てくる美玲。手には紙袋を携えている。 美玲、そのまま河川敷へ向かって歩いていく。 「おじさーん…」 「ここだ」 と、土手の茂みからぬっと顔を出す濱田。 びくっと身を強張らせる美玲。 「…はい。これ」 と、面倒そうに紙袋を手渡す美玲。 「助かる。さすがに血の付いた服だと目立つからな」 濱田、紙袋を受け取り、中から服を取り出す。 替えの服はプレゼント用の包装で包まれている。 「……なんだ、この包装は」 「お父さんへのプレゼントっていうテイ。

          「タイムマシンのレシピ」第3話

          「タイムマシンのレシピ」第2話

          夕暮れの河川敷。 「は?」 と、振り返る濱田。瞠目している。 数メートル先に頭から血を流した少年が倒れている。傍には項が開いたままの『アインシュタインへの道』が落ちている。 「…僕?」 と、濱田、地に伏した少年にゆっくり歩み寄る。 「間違いない。中学生の僕だ。たしかにあの日、ここを歩いた記憶もある〈心の声〉」 屈みこみ、少年の顔を確認する。 「指紋は……平気か。僕自身だしな」 と、手を伸ばし、頭の傷。呼吸、脈を確認する。 「午後4時38分、死亡確認」 河川敷に立つ柱時計にちら

          「タイムマシンのレシピ」第2話

          「タイムマシンのレシピ」第1話

          『区立世田ヶ谷中学校』と刻まれた門柱。 寂れた外階段。 「タイムマシンを作って欲しいの」 踊り場で女子生徒が男子生徒に縋りついている。 井沢啓子と濱田俊夫の二人。 「え…?」 詰め寄られた濱田、両手に本を数冊抱えたまま呆然とする。 『アインシュタインへの道』という書籍をはじめ、どれもが物理学のモノ。 「数学オリンピックに出たんでしょ?なら理科すごい得意ってことじゃん」 と、井沢、さらに詰め寄る。 「り、理科と数学は違うよ…もちろん僕も個人的に興味はあるし作ってみたいとは思っ

          「タイムマシンのレシピ」第1話

          「月面ホームレス」第3話

          「地球に帰らせないでって…どういう意味だよ」 と、宙。 少年は俯いて答えない。 「お子様よぉ。黙ってちゃわかんねえよ」 「…ノア」 少年が呟く。 「お子様じゃない。僕はノア。ノア・ジャックマン。パパが僕を地球に連れて行こうとするんだ」 顔を上げ、宙を見る。 「初仕事が家出の手助けかぁ…」 宙、頭を掻き、 「で、こいつは?こんな綺麗な青い目の犬、初めて見たぜ」 と、隣の犬を見る。 「セントリーっていうんだ。目が青いのは宇宙犬だから」 「宇宙犬か。実物は初めて…」 宙、息を呑み、

          「月面ホームレス」第3話

          「月面ホームレス」第2話

          バーのカウンターに座る宙。 「けっ…なにが居場所だ」 と、ビールを呷っていると、 「いいじゃねえか」と背後から声。 「一緒に飲もうぜ」 ナンパ男が女性に絡んでいる。 「ちっ…0.8Gだからって浮かれやがって」 と、宙、貧乏ゆすり。 「もちろん奢る。渋る理由なんて天の川銀河中を探してもないだろ?」 「私、天文学者じゃないから」 女性、微笑んであしらう。 「じゃあ今夜特等席で天の川を見せてやるよ。なぁに心配しなくていい。俺ぁ金はあるんだ」 「ねえのは品だけってか」 と、宙、空のジ

          「月面ホームレス」第2話

          「月面ホームレス」第1話

          灰色の月面。 墜落した宇宙船の残骸。背籠を背負い歩く人影。 「1kg350円〈モノローグ〉」 と、トングで屑鉄を拾う男(泉宙)。 「今日のチタンの買い取り相場だ〈モノローグ〉 」 と、宙、拾い上げた屑鉄に渋い顔。 「どれだけ需要があっても、月の鉱物から簡単に精製できる物質は安い〈モノローグ〉」 「おっ!」 と、宙、腰を屈める。 「このサマリウム磁石なんかは高く売れる〈モノローグ〉」 と、金属片を摘まみ上げ、嬉しそうな顔。 「こりゃ一杯ひっかけるか?」 くっくっくと笑うが、急

          「月面ホームレス」第1話

          「転生なんて、しないから」第3話

          「What do you have!」 と、警官A、佳澄と恭子に凄む。 背後の警官B、くちゃくちゃとガムを噛んでいる。 「 We don't know! It was handed to the boy over there.」 と、恭子、佳澄の前に立ち、言い返す。 (※ここから会話は日本語表記のみとします) 「少年がどこにいるって?」 と、警官A、鼻を鳴らす。 振り返る恭子と佳澄。少年の姿はもうない。 「ドラッグじゃないのか? 見せてみろ」 と警官A、顎をしゃくる。 警官B

          「転生なんて、しないから」第3話

          「転生なんて、しないから」第2話

          「だめよ!」 と、叫ぶ声。 沢木家のリビング。食卓で向かい合う佳澄と母。 少し離れたソファには父の姿。壁掛けカレンダーは6月。 「留学ならまだしも、旅行って…」 と、額に手をやり、頭を振る母。 「りょ、旅行じゃ――」 「旅行でしょ」 と、ため息を吐く母。 「だいたいその人、信用できるの? 佳澄、ちゃんと自分で決めたの?」 問われ、佳澄は唇を噛む。 「お母さんは昔からこうだ〈モノローグ〉」 【回想IN】 幼い佳澄。 デパートでお絵かきセットを母にねだる。 母は「ダメ」と言い、

          「転生なんて、しないから」第2話

          「転生なんて、しないから」第1話

          とあるビルの屋上。下には御茶ノ水のビル群が広がっている。 「死んだら、異世界に行けるらしい〈モノローグ〉」 落下防止柵の際に立つ沢木佳澄の姿。 肩にかかる長さの黒髪。薄手の灰色パーカー。 濃紺のジーンズ。白のキャンバススニーカー。 佳澄、下を覗き込む。髪がビル風になびく。 アスファルトの地面が遠い。ぐっと目を瞑る。 「…大丈夫。きっとアニメとか漫画みたいに転生できる」 と、佳澄、ぼそりと呟く。長い髪が垂れ、その横顔は窺えない。 佳澄の視点、アスファルトを映した視界が恐怖にぶれ

          「転生なんて、しないから」第1話