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詩集『アプリコットジャム』

19
杏子とお砂糖、煮詰めました。
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2019年10月の記事一覧

【詩】November

11月が来る 君が遠くなる

君の温度を忘れそうで凍えた

11月が来る 塗り替えられてしまう

君の言葉をまた失うんだろう

11月が来る 嫌いな季節だ

僕の闇が 色をまた深める

11月が来る また11月が来る

11月が来るたびに君を忘れてしまうのならば

僕はもう死んでしまいたい

いかないで。

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【詩】still.

【詩】still.

君にとってはもう過去の話なのでしょう
腐敗した思い出 そんなものなのでしょう

どうしてそんなものに今もなお
私は期待しているのだろう
君の笑う顔が あの笑顔が
再び私に向けられることはないだろうに

いまでも好きなの

君にとってはその程度の恋だとしても
ここにある傷跡 いつまで残るのでしょう?

どうしてこんなものを今もなお
治す気にならないのだろう
君の笑う顔を あの笑顔を
忘れたとしたら生

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【詩】瘡蓋

安物のサンダルはすぐ指の皮が剥ける

その靴ずれ、お風呂で沁みた

大した距離、歩いてないのに

簡単に傷つけてくれるものね

瘡蓋になったその取るに足らない後悔

今朝なんとなく引っ張ってみた

痛みもなく綺麗に剥けた

簡単に治ってしまったりするものね

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ちなみに3月に寝ぼけた頭で古紙出そ

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【詩】君はいるのに、届かないんだ、永遠に。

【詩】君はいるのに、届かないんだ、永遠に。

宇宙を震わせて低く唸る音がした。
居場所は不明。向かう先は何処?
にわかに心がはやる。
此処にいる僕、嵐の前の静けさ、もしくは、杞憂。

まるで君。遠雷。

存在は確かなのに。
君の存在は此方に伝わるのに。
君の存在に心が動くというのに。
僕のことなんて見えてない。

まるで遠雷。君。

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【詩】満月

【詩】満月

満月はすべてを満たされて空に光を放っていた。

その光景、時が止まるような。
神々しさに息も止まるような。

満月になったらあとは欠けていくだけと
堂々と天に鎮座しているあの月も恐らく、
知っているのだろう。

その不安を見せないように
一点の翳りもないように
欠けていく運命を背負いながら
微塵もそんな素振りなく。

今夜だけは、かっこつけさせて。

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【詩】Typhoon Girl

【詩】Typhoon Girl

君は現れた それは突然
僕に近付いた 当然のように

よく泣いて 多々荒れて
一瞬見えたんだ 突き抜ける笑顔

振り回すだけ振り回したら
あっという間に去って行って

残されたのは立ち尽くす僕
散らかった胸の中 君の爪痕

もうどこにも君はいない

なのにどうしてこんなに痛いんだ

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台風が甚大な被害を残して
去って行った

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【詩】微熱

【詩】微熱

37.4の表示に特に驚くこともない

あたしは熱に強いから

少しの気怠さと熱感

ただそれだけよ

自分たちで望んで
自分たちの体温を上げることがある生き物

あの熱はあんなに浮かされて心地いいのにね

君に会いたいな

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微熱、という単語にほんのりと色気を感じるのは
わたしだ

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【詩】黒猫のメヌエット

【詩】黒猫のメヌエット

好きな人の前だって
思い通りにならなかったら笑えないわ

しかめ面のあたしを撫でて
甘えた声で鳴けるように愛して頂戴

気が向いたら、の話
貴方はあたたかいから
其処でお昼寝するのもいい

あたしが爪を立てても
嫌な顔すらしない貴方は
叱る代わりに撫でるから
しかめ面が直せないのよ

好きな人の前なのに
思い通りにならないんだから笑わないの

でもしかめ面を可愛がってね
そのうち甘えて鳴いてあげる

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