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戦略コンサルタントの価値の源泉はどう変わってきているか?

戦略コンサルタントのアップルです。

戦略コンサルティング業界も、他の業界と同様「環境変化」にさらされます。環境が変われば、価値の出し方も変えていかないといけません。

近年の戦コン業界を巡る環境変化として、情報でサヤが抜きづらくなったという話があります。

・なぜ情報のサヤが抜きづらくなったのか?
・価値の付け方をどう変えていかなければならないか?

今回はこうした点について書きます。

”情報のサヤ” がバリューだった時代

戦略策定は「情報戦」の側面が強いです。市場を調査するにしても、競合を調査するにしても、質の高い情報が得られるかどうかが実効性のある戦略を策定する上で鍵となります。

情報戦の肝は何かと言えば、インタビューです。

誰でも購入できる業界レポート、新聞記事、ネット記事などのいわゆる二次情報は、それ自体の価値は低いです。なぜなら誰でも入手できる(=希少性がない)上、誰かが編集・加工した二次情報だからです。

質の高い情報をゲットするには、インタビューをして、生身の人間から有益な一次情報をとってくる必要があります。

アップルも一兵卒だったころは、このインタビューをやりまくりました。必ずしもリレーションがない人にもインタビューする必要があるので、会社の代表電話にかけて何とかアポを取ったりとか、セミナーに参加して名刺交換をしまくったりとか、そういう泥臭いことをして情報をかき集めていました。

ただ、そうして集めた情報が、プロジェクトのアウトプットの鍵になったのです。

つまり、
・クライアントがあったこともないような企業・人にアポをとり、
・インタビューで仮説をぶつけ、ディスカッションし、
・戦略策定への示唆を得る
ということが大きなバリューになったのです。

これを業界内では「情報のサヤを抜く」と言っていました。クライアントが知りもしなかった一次情報そのものが価値になったのです。

まだコンサルティングスキルがおぼつかない若手のコンサルタントは、何とかバリューを出すため、根性で駈けずり回れば何とかなる「情報のサヤを抜く」という戦い方をしていたわけです。

つい3年ほど前までは。
しかし、それが近年崩れつつあります。

”情報のサヤ” が抜きづらくなった背景

ここ3年くらいで、情報のサヤが抜きづらくなりました。

というのも、インタビューのマッチングサービスが台頭してきたからです。国内で最も有名なのはビザスクです。ビザスクには、いろんな業界のいろんなポジションの方が登録していて、ユーザーが「こういう業界の人にこういう話が聞きたい」とリクエストすれば、それに適した登録者を斡旋してくれるのです。

インタビュー1時間あたりいくらというフィーが発生して、そのフィーの一部をビザスクが手数料として抜くといビジネスモデルです。いわば、インタビューしたい人とインタビューを受けて小銭を稼ぎたい人とのマッチングサービスです。

これはすごく目の付け所がいいビジネスだと思います。駈けずり回ってアポを取る必要はなく、さほど高くはないお金(とは言え数万円)で解決できてしまうからです。どのコンサル会社も今や使いまくっていると思います。

ですが、これには落とし穴があります。クライアント企業も当然このサービスを使える点です。まだ事業会社にはビザスクのようなサービスを知っていない人も多くいる印象ですが、浸透してくると事業会社の担当者も当たり前のように使うようになるでしょう。

そうなったとき、これまで若手コンサルタントのバリューの根幹だった「情報でサヤを抜く」ということが非常にやりづらくなるわけです。

では、これからの価値の源泉は?

ではこれからの時代、戦略コンサルタントは何で価値を付ければよいのか?

一つはインタビュースキルです。これは昔から非常に大事なスキルなのですが、要は1時間のインタビューの中でどこまで深く掘り下げたディスカッションができるかということです。

インタビューというのは面白いもので、こちらの質問の投げ方によって、インタビュイーの答える内容は全然変わってきます。一時期「質問力」という言葉が流行りましたが、まさにこの質問力の高さが大事になります。

ビザスクのようなサービスの出現により、キーパーソンにアクセスする障壁は減ったとしても、その人からいかに深い情報や示唆を引き出すかはインタビュイーの力量次第です。この部分で戦っていく余地はあります。

もうひとつは情報の咀嚼力です。いわゆる思考力です。

戦略コンサルタントの仕事は、詰まるところ「インプット、プロセッシング、アウトプット」の3つをぐるぐる回しているだけだということを別の記事でお話したことがありました。

インプット:机上調査やインタビュー
プロセッシング:分析や考察、示唆の抽出
アウトプット:ストーリーづくり、スライドライティング

インプットのところでサヤが抜きづらいなら、プロセッシングの力で戦うしかありません。ここが肝であることは今も昔も変わりませんが、情報のサヤが抜きづらくなったからこそ、これまで以上に深い考察力を持つことが重要になると思います。逆に、考察力が弱いコンサルタントは、価値が付けられず淘汰されていくでしょう。

戦略コンサルタントを目指す人が留意すべきこと

このように、情報のサヤが抜きづらくなってきたことは、経験の浅い戦略コンサルタントにとっては「戦いづらくなった」ことを意味しています。足で稼ぐことがやりづらくなったからです。

そうすると、
・知人がすごく多くて、機動的にタダで有益なインタビューができる
・インタビューが最初からうまい(前職で営業をしていたとか)
・深く考える力が先天的に強い

といったような何らかの強い武器を持っていないと、この業界で生き残っていくのは厳しいという印象です。

戦略ファームは引き続き根強い人気がありますが、今回の記事で書いたような環境変化もあるということを念頭に、「自分の武器は何か?戦っていけるのか?」ということを自問自答した上で、飛び込むかどうかを考えた方が良いでしょう。

まとめ

今回の記事のポイントをまとめます。

・従来は戦略コンサルタントの価値の出し方に「情報のサヤ抜き」があった

・しかし、ビザスクなどのインタビューマッチングサービスが出現し、情報のサヤは抜きづらい環境になってきた

・そうした中、戦略コンサルタントの価値の源泉は、単に情報を仕入れてくるところから、インタビューで深い情報を聞き出し、その情報をしっかり頭で咀嚼するところへとシフト

・未経験者は価値が出しづらい構造になってきているということなので、何らかの武器もないまま安易に戦略ファームに飛び込むのは危険(価値が出せず苦しむことに)

コンサル志望者の方などの参考になれば幸いです!

今回はここまでです。
この戦略ファームの変化シリーズ。まだ書いておきたいことがあるので、第三弾を近々アップします!

最後までご覧いただきありがとうございました!

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