見出し画像

アルムナイマネジメントが組織の競争力を左右する時代

みなさん、こんにちは。
戦略コンサルタントのアップルです。

近年HRテックがホットな領域で、この領域で新たなサービスを展開するベンチャーも多数出てきています。個人的にも注目している領域の一つです。

HRテックは、採用、育成、社員のモチベーションマネジメントなど多岐にわたりますが、その中の一つに会社の「卒業生」を対象としたアルムナイマネジメントという領域があります。アルムナイのネットワークを企業や組織の資産として有効活用していこうという取組です。「卒業したら赤の他人」という考え方を抜本的に変えていこうという流れですね。

アルムナイネットワークの活用は、企業はもちろん、学校、更には地方自治体にとってもすごく大事な視点になってくるのではないかとアップルは考えています。いわゆる「OB会」や「県人会」を形骸化させず、ちゃんと機能する価値あるネットワークにしていくことが大事で、そのポテンシャルは計り知れないように感じています。

このように面白い領域だとアップルは感じているアルムナイネットワークの活用について今回の記事では論じます。なぜ重要なのか?どういう価値があるのか?。このあたりが気になる方はぜひご覧ください。

主な想定読者は以下です。特に学校関係者や地域行政関係者の方のご意見や感想をお伺いしてみたいので、よろしければコメント欄までお願いいたします!

<想定読者>
・企業の経営者、コーポレート担当役員
・かつて在籍した企業とのつながりをうまく活用したいビジネスパーソン
・学校の経営者・校長、教育委員会など、教育に従事されている方
・県庁、市役所などの地域行政、県会議員などの地域政治従事者

人的資本が今後ますます重要になる

経済学で人的資本という概念があります。人的資本とは、人に宿った知識、ノウハウ、経験、技能などを総称したものです。経済学では、土地、資本、設備などに並ぶ生産要素の一つとして捉えられます。

この人的資本の生産要素としての重要性は、今後さらに増していきます。なぜなら「知識経済化」が進むからです。

一次産業(農業や漁業)や二次産業(工業)が中心だった時代は、生産要素として労働力や資本が重要でした。一方、これからの成長産業はITに代表される知識集約的なサービス業であり、そこで成長ドライバーになるのは新たな技術やビジネスモデルを生み出す力、すなわち人に宿る知識や知恵(=人的資本)になります。

土地や資本(お金)をたくさん持つ会社が強い時代はとうの昔に終わりました。これからの時代は人的資本を豊富に獲得・蓄積できた会社が勝ちます。

アルムナイマネジメントとは?

このように人的資本の重要度が増すという背景の中で、アルムナイマネジメントに注目が集まっています。

アルムナイという言葉、聞きなれない方もいらっしゃるかもしれません。

アルムナイとは会社の卒業生(退職者)で、アルムナイマネジメントとは、卒業後も卒業生との関係をキープし、会社・卒業生双方にメリットある関係を構築する一連の取組のことを指します。

社員は、会社にいる間に色々な知識を得たり、経験を積み、人的資本が高まっていきます。私が所属するようなコンサルティングファームはまさにそういう会社です。入社したばかりのコンサルタントと、入社して3年ほど経ったコンサルタントとでは、数倍も成果を出す力が変わります。そうやって育成され、人的資本が高まった人材が退職することは、会社にとって結構大きな損失になります。

だからといって、雇用の流動化が進む現代では、人材が辞めていくのを食い止めることもできません。

そこで、アルムナイマネジメントという発想が出てきます。

育てた人材がある程度辞めていくのは仕方ないとしても、「退職=会社との縁の切れ目」とするのではなく、「退職後も会社とつながり続ける」という方向にもっていくわけです。これにより、投資した人的資本が完全に蒸発するのを防ぐことができるので、人的資本の流出を最小化する取組と位置付けることができます。

アルムナイマネジメントの3つの価値

では、アルムナイマネジメントは具体的にどのような価値を企業にもたらすのでしょうか?

下図の通り、大きく3つの価値があります。
順に解説しましょう。

アルムナイの価値

①卒業生が会社の広告塔になってくれる
卒業生の人材は、最もその会社のことをよく知っています。そういう人材と卒業後も良好な関係を続け、会社に対するロイヤリティを維持することは、「自社のことをいい形で宣伝してくれる」という意味で効果的なプロモーションやブランディングにつながります。

②卒業生の再雇用(出戻り)につながる
卒業してぼしばらくたってから「やはり戻りたい」という人は一定の割合でいるはずです。その時に、アルムナイとして会社とつながり続けられていれば、卒業生からの「そろそろ戻ってみたいんですが」という声も拾いやすいですし、逆に会社側から「そろそろ戻ってこないか」という働きかけもしやすくなります。

つまり、投資した人的資本を回収しやすくなるわけです。卒業後に外で経験を積んだ分の人的資本もおまけでくっついてくるので、会社にとってはとても大きなメリットがあるでしょう。

③ビジネスパートナーが広がる
コンサルティングファームもそうですが、卒業して別の分野で成功を収めている方が多数います。これからの時代、ビジネスはエコシステム型となり、外部パートナーとの協業が前提条件になっていくと思いますが、そうしたとき、卒業生と関係をキープしておくことは、卒業生と協業するというチャンスを広げることにもなるでしょう。


「これらの3つの価値によって、組織の競争力が多面的に強化される」

これがアルムナイマネジメントが重要である本質です。
アルムナイマネジメントの巧拙によって組織の競争力が左右される時代が目の前まで来ているといってよいでしょう。

アルムナイマネジメントの代表例

アルムナイマネジメントを古くからしっかりやっている代表例を2つご紹介しましょう。

一つはマッキンゼーです。言わずと知れたトップコンサルティングファームですが、「マッキンゼー・マフィア」という言葉があるくらい、アルムナイネットワークを大事にしています。

様々な分野で活躍する卒業生がマッキンゼーの広告塔となり、ときにマッキンゼーに仕事を発注することで、卒業生がマッキンゼーというファームのブランディングや成長に一役も二役も買っています。元マッキンゼーの方が書いた「マッキンゼー流・・・」という本が多数出版されていることもこれを象徴しているといえるでしょう。

もう一つは、会社ではありませんが、開成高校。ご存じの通り超名門私立高校ですが、卒業生の方からOB会が非常に充実していると聞いたことがあります。様々な分野で活躍する卒業生がネットワークをつくりその中で情報交換やビジネスの話をしている。価値の高いOB会として機能しているようです。

企業に限らず、あらゆる組織で重要

現在はまだアルムナイマネジメントをしっかりできている会社は限られていると思いますが、今後多くの企業、さらにはその他の組織においても不可欠な取組になっていくと考えられます。

例えば、公務員離れの中、慢性的な人手不足にある中央官庁においても大事な取組になるでしょう。アルムナイマネジメントを通じて出戻りを増やすことは行政組織に民間の知恵やノウハウを取り入れる観点でも意義があるはずです。

また、競争力を強化したい大学や高校にとっても、形だけのOB会運営から脱却し、卒業生と強固な関係を築きそれを大学や高校の競争力強化につなげていく戦略的なアルムナイマネジメントが重要になっていくはずです。

さらには、地方創生を推進したい地方自治体も、自治体出身者との関係強化という意味でのアルムナイマネジメントの視点は大事になっていくと思います。東京一極集中やグローバル化が進む中、地方の優秀な人材が東京や海外に流出するのは止められないでしょう。それを前提とした上で、外に流出した優秀な人材とつながり続け、地元に貢献してもらう、地元と協働してもらうという視点が大事のように思います。

アルムナイの広がり

まとめ

今回の記事のまとめです。

・人的資本の重要度が増しつつある中で、アルムナイマネジメント、アルムナイネットワークの活用がホットな領域となりつつある

・アルムナイマネジメントの組織にとっての価値は3つ
  -①卒業生が広告塔になってくれる
  -②卒業生の再雇用(出戻り)につながる
  -③ビジネスパートナーが広がる

・企業だけでなく、行政組織、大学・高校、地方自治体にとってもアルムナイネットワークの活用は競争力を左右するファクターになってくる


今回は触れませんでしたが、アルムナイネットワークの活用にフォーカスしたベンチャーやビジネスも色々出てきているので、改めてそのあたりも紹介していければと思います!

最後までお読みいただきありがとうございました!

◆◆◆
感想、質問、意見などのコメント絶賛募集中です!(必ず回答します)
記事のコメント欄かpeingまで質問をお寄せください。
https://peing.net/ja/apple_ringo
 
twitterもよろしければフォローお願いいたします!
@apple_ringo_lcl


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?