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ゲインロス効果(Gain-Loss Effect)【憂世で生きる智慧】

ゲインロス効果とは(ゲイン効果/ロス効果)

ゲインロス効果とは、一貫した評価を受けるよりも、途中で評価が逆転する方が人の心に与える影響が大きくなるという心理現象。
この効果は、印象が上昇する「ゲイン効果」と、印象が下降する「ロス効果」に分類される。

ゲイン効果の例

ゲイン効果とは、印象が上昇することを指す。たとえば、次のようなケースがある。

  • 無くした財布が見つかる
    無くしたと思った財布が見つかると、その安堵感と嬉しさは非常に大きい。これは、喪失からの急な上昇による喜び。

  • 第一印象が悪い人が良いことをする
    例えば、初対面で感じが悪かった人が後に親切な行為をすると、その人に対する評価が急上昇する。この良い行為は、その人物全体の評価を大きく引き上げる。

ロス効果の例

一方、ロス効果とは、印象が下降することを指す。以下のようなケースが代表的。

  • 第一印象が良い人が悪いことをする
    第一印象が素晴らしかった人が、突然不誠実な行為を行うと、その人に対する信頼感が一気に失われる。この一回の悪行が、その人物全体の評価を大きく下げてしまう。

喪失と獲得の心理的インパクト

人間の心は、単なる一貫性よりも、変化の方に強く反応する
評価が一度下がった後に上がる、あるいはその逆の方が、記憶に残りやすく、感情的な反応も強くなる。これがゲインロス効果の本質であり、日常生活の様々な場面で見られる心理現象。

「ゲインロス効果」という心理学の概念は、一見複雑に見えるが、日常生活の中で非常に身近なものだ。例えば、私たちがレストランで新しい料理を試すとき、最初の一口が期待以上に美味しければ、その料理全体の評価がぐんと上がる。一方で、期待していた味に満たない場合、その料理の評価は急降下する。これがまさに「ゲインロス効果」だ。

この効果は、1965年にエリオット・アロンソンによって提唱された。
彼の実験では、他人からの評価が変化する過程での人々の反応を観察した。その結果、相手からの評価が良くなった場合(ゲイン)と悪くなった場合(ロス)で、人々の感情や行動が大きく変わることが分かった。特に、初めは否定的だった評価が好意的に変わると、評価の上昇幅は非常に大きく感じられる。この現象は、「初対面の印象が悪かった人が次第に好意的になった場合、その人に対する評価が飛躍的に高まる」という日常的な経験とも一致する。

例えば、職場で新しい同僚が入ってきたとき、最初は無愛想で距離を置いていると感じたが、時間が経つにつれて親しみやすくなり、協力的になると、その同僚に対する評価は非常に高くなるだろう。逆に、初めは親しみやすく見えたが、徐々に冷たくなっていくと、その人に対する評価は急降下する。

ゲインロス効果はビジネスの世界でも応用されている。顧客サービスの分野では、最初に問題が発生した場合、迅速かつ丁寧な対応をすることで、顧客の評価を高めることができる。例えば、オンラインショッピングで商品が不良品だった場合、迅速に代替品を送るか、全額返金を行うことで、顧客の評価は逆に上がる可能性がある。

このように、ゲインロス効果は私たちの感情や行動に深く関わっている。最初の印象や評価が変わることで、私たちの認識や態度が大きく揺れ動くのだ。この効果を理解し、上手に利用することで、人間関係やビジネスの成功に繋がるだろう。


エリオットアロンソンの名著

本書は、カルト問題、サブリミナル、ナチの宣伝技術等、多岐に渡る説得に関わる現象やテクニックを37の節に分けてどこからでも読めるようになっている。日常の政治や広告界での説得者の真の意図や資質を見抜くための知識を得る。原書名 AGE OF PROPAGANDA: The Everyday Use and Abuse of Persuasion
【目次】
1 プロパガンダの時代
第1章 日常生活のなかの説得
2 神秘的な影響力
3 思慮のないプロパガンダ、思慮深い説得
4 合理化に努める動物
第2章 説得のお膳立て―効果的な説得を行うために
5 言葉の魔術
6 頭のなかの絵
7 サダム・フセイン―現代のヒトラー
8 的確な質問をすること
9 「おとり」の力
10 事実もどき
第3章 伝達者の信憑性―本物とまがい物
11 信憑性の高い伝達者
12 チャンピオンが口にするものを食べる
13 信頼されていない場合の説得
14 信憑性を演出する
15 プロボクサーの姿が一一人を殺す―マスメディアに登場するモデルの影響
第4章 メッセージ―それはどのように伝達されるのか
16 パッケージ
17 自分を納得させる
18 すきまだらけの屋根裏と身近な勇士―鮮明なメッセージの効果
19 同じ広告が何度も繰り返される理由は 20 何も言うことがないなら、気を逸らせよう
21 一センチ獲得したいなら、ときには一キロ要求するのです!
22 プロタゴラスの理想―一面的な称賛と二面的な討論
第5章 感情にアピールする説得
23 恐怖アピール
24 グランファルーン・テクニック
25 罪悪感で説得する
26 花一輪をプレゼントすることの効果
27 これくらいなら・・・・・・
28 希少性の心理と幻の神秘
第6章 説得の戦略を打ち破るために
29 サブリミナル(識閾下)の魔術―誰が誰をたぶらかすのか
30 プロパガンダに抵抗する法―実際どのように宣伝に抵抗するのか
31 教育か、それとも宣伝か
第7章 情報戦略が失敗するとき―プロパガンダと社会
32 情報戦略の無効性
33 ニュースとは何か
34 ダイレクトメールによる説得
35 カルトの教祖になる方法
36 第三帝国の宣伝―不確実性のケース
37 ペイソの子孫たち

日常的な出来事から、夫婦間の言い争い、政治家の言動、嘘の記憶や冤罪まで――誰もが陥りがちな自己正当化の心理メカニズムを、心理学者のコンビが豊富な実例を交えながら平易に解説。


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