自己と世界/宮元啓一先生【仏教をより深く理解するための予備知識】
インド哲学の世界に足を踏み入れると、「自己と世界」というテーマが非常に重要な位置を占めていることに気づく。特に、ウパニシャッドの哲学はこのテーマに深く根ざしている。ウパニシャッドにおけるアートマン(自己)は、個々の存在を超越した普遍的な自己として理解され、解脱という究極の目標に向かう重要な概念となっている。
しかし、仏教に目を向けると、そこでは無我(アナートマン)が説かれている。これは、自己というものが固定的な存在ではなく、変化し続ける現象の一部であるという考え方だ。したがっ