何でもないがある暮らし
様々な事情があり工事が終わる前から住むことになった我が家ですが
ついに、ようやく。
内装工事が完了しましたー!
工事中の状態から住み始めるのは正直言って不便でしたけど、現場で作業する人たちと挨拶したりお話したりできるのはとても楽しくて。
現場で顔を合わせて「やっぱりこうしたいけどできますか?」「ここの不具合をなんとかして欲しいけどどうしましょ」など変更や要望を伝えることもできて。
結果的に、微に入り細に入り神経が行き届いた家になったと思います。
そのぶん全体を取り仕切ってくれている大工のシマケン中島さんはもちろんのこと、たくさんのプロフェッショナルの方に苦労をかけてしまって。
感謝で頭が上がりません!(いつか現場の方々へのインタビューも行いたいと思います)
さてそんなわけで、今回はできたてホヤホヤの我が家を紹介していきたいと思います。
僕がTENTでプロダクトを作る時と同じように一つ一つアイドントノウして。「そもそも」に立ち返って進めました。
個人の家のことではあるんですけど考え方や創意工夫が、どなたかにとって何かしらのヒントになれば良いなと思います。
1.ウェルカム感のない玄関
まずは入り口から。
まるで倉庫の入り口のような人を寄せ付けないウェルカム感ゼロの玄関にしたい。そんな要望を積み重ねてできたのがこちらの玄関です。
結果的には「ウェルカム感ゼロ」って言い切るほど入りづらくはないですが、それなりに達成できた気がします。
なぜそんな玄関にしたのか?…答えは後ほど!
さて、玄関ドアを開けますと
中には大きめな土間があり、左手側が僕の仕事場になります。ちなみに突き当たりに見えるのはトイレのドアです。
2.リラックスではない団欒の形
こちらがワークスペース。壁面には有孔ボードとガチャ柱を融合した汎用性の高い収納システムを搭載しました。
この収納システムは僕たちTENTが下北沢でオープンしていた『TENTのTEMPO』の壁面からのインスパイアです。
子どもの学校の道具類から父ちゃん(僕です)の仕事道具までここに集約しています。(ちなみに木工作業場が家の外にあります。)
このワークスペースでは僕が毎日仕事をするのは当然ですが、子どもたちも宿題や工作をできるようにしました。
一家団欒(いっかだんらん)っていうと、みんなでまったりリラックスしているイメージ(たとえばテレビ見てるとか談笑してるとか)があります。
でも僕にとっては「同じ場所で、各々が好きなことに集中している」のが一番心地良いんですよね。
家族の会話も大事だけれど、作ったものを見せ合うなんてコミュニケーションも楽しいと思ってて。
最近は、小学校から帰ってきた子どもが「今日は何作ってんの?」って僕の仕事の試作を見たり触ったりしてます。けっこう褒めてくれるので嬉しい。
大人も子どもも関係なく、ここに来ると何か考えたり作ったりしたくなるって思えるような、そんな場所になっていけば良いな。
3.何でもない場所がある家
ワークスペースを抜けると、僕が「ブランク」と呼んでいる空間があります。
大きな窓は南に面していて、出入りしやすくなっています。つまり、この家の実質の正面はここ。
田舎の大きな屋敷の玄関って立派ではあるけど、実は家族はいつも勝手口しか使わなかったりするじゃないですか。あれすごく勿体無いと思ってて。
冒頭の「ウェルカム感ゼロの玄関」の答えがこれです。毎日使う場所こそ心地よく。そんな考えから、玄関を質素にして毎日使う窓を大きくしました。
さて、そんな大窓があるこのスペースを「ブランク」と名付けたのには理由があります。
家の間取りを考えるって言うと、部屋の役割がまずあって、そこに家具などが配置されます。たとえば、一番良い場所には「リビング」があって、テレビとソファセットが置かれるみたいな感じ。
でも自分にとってそれは本当に心地良いんだろうか。
僕にとってそしてうちの家族にとって、本当にワクワクするのは体育館のような倉庫のような、まだ何もないこれから何にでもなれるただの空間なのかもしれない。
ということで家の一番良い場所に「ブランク」を設けることにしました。
とはいえ、うちの奥さんから「ソファは絶対に欲しい」という要望も入って、折衷案として考案されたのが、このソファボックスです。
はじまりは「何もない空間が欲しい」であって、結果として収納ボックスにソファがめり込んだ形になったんですけど、結果的にほどよいおこもり空間みたいになって、とっても心地よくて。
目の前がひらけていることもあって、この場所でギターやウクレレを弾くと気持ち良いんですよ。
そしてこのソファボックス、ソファを解体すればベットにもなるので、カプセルホテルみたいな宿泊空間にもなります。
大工の中島さん渾身のライティングが最高に心地よいんです。
ちなみに、このソファの前にある空間。何もない「ブランク」は、常に何もないわけじゃなくて。たとえばここで洗濯物を干したり、奥さんはヨガしたり、子どもたちはおもちゃを広げてます。
いちおう名前が「ブランク」だと、都度片付けようと思うかもしれない。そんな期待もあります。
4.なんか作りたくなる食卓
ブランクを通り抜けると、奥にはキッチンがあります。
家族みんなが同時にアクセスできるようにしたくて。壁付けで横長なキッチンになりました。
子どもたちも料理を運んだりサッと手を洗ったりできるし。家族も、来客の人だって、調理や食器洗いに参加しやすいのでは、と思います。
ちなみに、右の小部屋のようなところには冷蔵庫やパントリーが集約されてます。(ここは友人の石子さんの家を参考にしました!ありがとうございます)
食卓を調理台として利用すれば、この部屋全体が「調理場」になるし、キッチンに食べ物を並べれば、この部屋全体が「食事会場」になるかもしれない。
子どもたちにとっても、食べるだけじゃなくて「なんか作りたいな」と思ってもらえる空間になると良いな。
5.こどもの秘密基地
最後にロフトの上も見てみましょう。
こんな感じで、大人にとっては使いにくい(物置にしかならない)きつい傾斜屋根の何もない空間です。
開放感のあるこの場所。上から下は見えるけど、下から上は見づらくて。実はこの家の中で一番「誰からも見られにくい場所」だったりします。
子どもにとって秘密基地みたいな場所があるといいなと思ってて。
家族の気配は感じつつ、ちょっと身を潜められる、つくられた「子ども部屋」とはちょっと違う場所。
なので、大人が入りにくい大空間だけ用意して、その中で子どもに自由に考えてもらうことにしました。
初日からさっそく、巣みたいな寝床を作って寝てましたよ。ロフトは暖かい空気が溜まりやすいので、寒い季節にはすごく居心地が良いそうです。
6.スタートはブランクから
「部屋割りは?内装材は?」
「ドアは?窓は?床は?」
「巾木は?窓台は?」
次から次へと迫られる選択に対応するので精一杯になる家づくり。
でも、家って住みながら変わっていくものだから。あとからの自由度を高めるために、まずはできるだけニュートラルな"何でもない場所"をつくりたいと僕は思いました。
この家なら『ブランク』がその代表なんですけど、たとえば内装材であっても、壁も天井も同色のペンキ仕上げ、床材は全部同素材のフローリングにしました。
何でもない空間、何でもない色。だからこそ何かしたくなる、作りたくなる。そんな家になっていけば良いなと思います。
ここで暮らして、僕たち家族はどうなっていくのか。
そんな実験をこれから楽しんでいきたいと思います。
こんな暮らしを始めた理由を、YouTubeで話してます。
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