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小さくて大きなプロジェクト( #道具とか家とか地域とか vol.1)

実は今、僕はひとつの「小さなプロジェクト」に取り組んでいます。いや、個人的には「大きなプロジェクト」なんですけど。

何をしているかというと「家」について考えているんです。

2023年が始まってすぐの1月6日(金)ぎふメディアコスモスで 道具とか家とか地域とか というイベントを開催しました。

今回は、このイベントの中でもお話しした、この僕にとっての「小さくて大きなプロジェクト」のお話をしていきたいと思います。

左からオゼキカナコさん、TENTアオキ、ミユキデザインの大前さん、末永さん



1.古いものを活かしてみよう


2020年の春ごろ。僕はじめウチの家族は、岐阜県の某所に三か月ほど住んでいました。コロナ第一波で小学校もお休みだったので、これを機にリモートワークを実践してみたわけです。

始める前は成り立つか不安だったんですけど、やってみると問題なく仕事ができちゃって。というのも、実はTENTクライアントワークの大半は、東京以外の企業さんばかりだったんです。

大阪がとても多い

なので、もともとオンラインで打ち合わせすることが多くて。むしろオンライン会議ツールの急速な普及のおかげで、リモートワーク以前よりも効率が良くなったんじゃないかと思えるくらいの状況でした。

こうなると考えちゃいますよね。
「ひょっとしたら住む場所を変えても仕事できるかも」って。

さて、ここでちょっと航空写真を出しますが

岐阜県の某所に、柿畑しかない小さな集落がありまして。
ここにヒゲじいこと僕の父親が住んでいます。

若い頃に名古屋に移り住んだ父と母は、15年くらい前に、自分達が生まれたこの集落に引っ越して

それからずっと、自分の手でオンボロ古民家を改修し続けてます。
この場所で、僕は3ヶ月のリモートワークをしたわけです。

そして、このヒゲじいの古民家の裏側にボロボロの鶏舎があるんですけど

ゴミ小屋みたいだったこの鶏舎を、ヒゲじいが掃除して整理して、薪小屋として使ってたんですね。

で、この薪小屋が、写真を撮ってみると、とても格好良い。

しかも方角も東西に長くて、つまり南向きの面がとっても広くて居心地が良いんですよ。

それでふと思いついちゃったんです。この鶏舎をリノベーションしたら、すごく良い家になったりして?って。

「リノベーションといえば!」ということで、まずは長野県諏訪市のリビルディングセンター東野さんに連絡してみました。

実は東野さんは僕の学校の後輩にあたる人なので(ちょっと緊張はするけど)声をかけやすかったんです。

さっそくオンラインで相談してみたところ、リノベーションして住むことは不可能ではないものの、建築は施工の人がいてこそなので「地元の工務店の人と繋がってる人のほうが良いと思う」とアドバイスをもらいました。

なるほど、たしかに。

今度は岐阜で家をリノベーションしたばかりのCOMULA野口さんに話を聞いてみたところ

野口さんの家
(ミユキデザインホームページより)

この素敵なお家はミユキデザインさんに設計を依頼したそうです。野口夫妻いわく「住んでいて全く不満がない」とのこと。

それはすごい。ミユキデザインさんを紹介いただき、一度、ボロボロ鶏舎を見てもらうことになりました。


2.古いものは古いまま

左が大前(オオマエ)さん、右が末永(スエナガ)さん

鶏舎を見ながらの立ち話としては「リノベーションすることは不可能ではない」との回答。

しかし「リノベーションと新築は、コスト変わらないですよ」という衝撃の事実が告げられました。

ミユキデザインの大前さん曰く「リノベーションはロマンはあると思うんですけど、鶏舎の外側に補強のための構造体をもう一層作るような規模になります」とのことでした。

そりゃあ、ニワトリさんのお家ですもんね…。

そこまでして古い鶏舎を残しておきたいんだっけ…。僕はだんだんテンションが落ちていきました。

それからしばらく経過して。

柿の手入れが大変すぎるという事で、鶏舎の北側にあった柿の木が父母により伐採され、柿畑が空き地になっていました。

いっそ、この空き地に建物を新築できるかも?そう思った僕は、さっそくミユキデザインさんに相談してみることに。すると

「空き地に新築の家を建てるとしたら。古い鶏舎はボロのまま使えば面白いんじゃないですか?」「鶏舎の屋根だけ残してピロティみたいにも使えるし。」

なるほど!それは思いつかなかった。

古いものを生かすっていうと、リノベーションとかアップサイクルとか言って手を入れようとするじゃないですか。僕もその意識に囚われてたみたいです。

古いものは古いまま使うという方法もあるんですね!それは面白い。
さっそく、ミユキデザインさんにプランを考えてもらうことにしました。


3.地域のためとか言いたい

さて、正式に依頼するにあたって、ミユキデザインさんのことをちょっと調べてみたら。

建築だけには収まらず、多岐にわたる活動をしている、ここ最近の岐阜の盛り上がりの立役者と言っても過言ではないような、すごい人たちであるということがわかりました。

柳ヶ瀬の「素敵だな」と思った店舗は
全部ミユキデザインさんの設計
月一ですごい盛り上がりの
サンデービルヂングマーケット
もミユキデザインさん達が仕掛けた

ここ最近、岐阜の空気が変わった感じはしていたんですけど、僕はとくに柳ヶ瀬商店街の盛り上がりがすごいなと思っていました。ミユキデザインさんはその中心人物であることがわかったんです。

社会や地域のための大きなことをしているミユキデザインさんに、僕は個人宅なんていう小さなことを頼んでいるのか!そう思ったからなのか、何なのか。

次にミユキデザインさんと会った時に、僕はこんなことを話していました。

「せっかく家を建てるなら、自分だけでなく周りの人も喜べるような場所にしたい。たまには地域のために工作のワークショップなんかを開催するかもしれない。」

そう、この時の僕は、ミユキデザインさんの活動にあてられて地域や社会のために何かしたいモードになってたんですね。

ちなみに、その時にミユキデザインはどう思ったんでしょう。


*******

左:TENTアオキ
中央:大前さん
右:末永さん

末永さん
わざわざ東京から引っ越してくる人だから、そういう事とかも考えてるんだなって。あとは、そういうこともミユキデザインには期待されてるのかなって思ってました。


大前さん
表に出てるミユキデザインのインタビューなんかだと、地域とか街のこととかが多いですもんね。まあ、記事には良いことしか書いてないんですけどね。

左:オゼキさん
右:TENTアオキ

オゼキさん
お互いに「意識が高い」感じになっていたんですね

アオキ
やっぱ「僕ら社会貢献したいじゃん?」みたいな。なんせ初対面なので格好つけちゃってた部分も正直あったと思います。


*******


さて、そんなインプットをもとに、ミユキデザインさんから数週間後にこんな提案がありました。

右側にパブリック領域があり、左側にプライベート領域があるイメージ。

ここちよく暮らしを開く。活動を広げるような、敷地や部屋の境界線を感じさせない計画。

鶏舎を「K(工作)舎」と言い換えて、そこも含む敷地全体を使って、外部空間や地域とつながる歩道を敷地内に作る。

そんな全体像を元に2つの提案があったんですけど、1つ目はこちら。

建物の中に歩道があって。「しごと領域」と「くらし領域」をゆるやかに分けている。続いて2つ目。

こちらも、大屋根で全体をつなぎつつ、建物内では歩道が領域を分けているイメージ。

これらの提案を見て、僕はものすごく感動したんです。僕なりに、これらのプランを言葉にすると、こんな感じ。

人と人や外と内など、開かれた「つながり」を持った、いくつもの交点からなる家。

なるほど!これは「地域とつながりを持ちたい」という僕のインプットに基づいた素晴らしいプランである!!と思いました。感動しました。

そして

提案から二日後のこと。
ものすっごいモヤモヤしてきたんです。あんなに良いって言ってたのに、良く思えなくなってきた。

そもそも半パブリックにしたかったんだっけ?
暮らしと仕事を分けたいんだっけ?

何のためにこんな場所で暮らすんだっけ?


そもそも青木家は、何をしたいんだっけ…

人と地域とつながりたい。
たしかに、そんなことを言った気はする。

でも、それが一番したいこと?
いや…したくないな…。



4.そもそもを見つめ直す

もう一度、我が家の暮らしを思い出してみよう。

青木家ってシンプルで、とにかく「つくるやつが偉い」みたいな空気が流れてます。それは、DIYでも工作でも、仕事でも同じ。

料理なんかもそう。子どもと作ったりするのも楽しい。

だから、青木家にとって大事なことは繋がりではないのだ。

我が家の暮らしにとって「つくる」は大切。
「つくる」こそが遊びであり仕事であり、人や社会と繋がるきっかけになった。

各々がそれぞれの場所で「つくる」に没頭し、その上で「やすむ」によって適度に繋がる。

つくるに囲まれた暮らし。

それは図にするとこんなイメージ。

仕事や勉強の「つくる」(右上)
畑やDIYの「つくる」(下)
料理の「つくる」(左上)

それらに囲まれた中央に「やすむ」が置かれる。

こんな感じの概念に住みたい。僕はそう思いました。
そう、概念に住みたい。

ミユキデザインさんからいただいていた最初の提案図面を参照しつつ、概念を図面に落とし込む検討を、僕のほうでも始めてみました。

果たしてどうなるか!
次回に続く。


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