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補助線が見える店(ツバメアーキテクツさんインタビュー)

2022年4月。
フルリニューアルして再始動することになった『TENTのTEMPO』。
(再始動の経緯はこちらの記事をどうぞ↓)


今日は、店舗の設計を担当いただいたツバメアーキテクツの千葉さんと藤本さんにお話を伺いたいと思います。

左から
TENTケンケン、TENTアオキ、藤本さん、千葉さん



ボーナストラックを設計したツバメアーキテクツ


アオキ
さっそくですが、ツバメアーキテクツさんって、どうやって結成された会社なんですか?


千葉(チバ)さん

僕と山道(サンドウ)と西川(サイカワ)の三人で、2013年10月に始めた会社です。

オープンしたてのTENTのTEMPO
店内でインタビューしました

千葉さん
僕と山道は東工大の同じ研究室の卒業生で。僕は大学で助手やってて山道はツクルバという、同じ大学の先輩の会社で働いてて。

で、もう一人の西川が事務所を辞めたタイミングで、三人で一緒にやろうかって感じで始めました。

千葉さん


アオキ
それは何歳くらいの頃ですか?


千葉さん
みんな27歳の頃ですね。最初は三人で八百屋さんの設計をやりました。旬八青果店っていう八百屋さんなんですけど。


アオキ
あれ?その八百屋さん、中目黒にありますよね。けっこうオシャレというか変わった感じの八百屋さん。

千葉さん
はい、それです。そこから徐々に仕事がいただけるようになりました。

ボーナストラックにはかなり初期の計画段階、2018年の年明けから参加していました。


アオキ
それはどのような経緯で?


千葉さん
うちの山道がチリのアレハンドロ・アラヴェナさん率いるELEMENTALという事務所で働いていたのですが、そこではスラム街のことに取り組んでいるプロジェクトがありました。

スラム街の人たちはDIY能力がすごく高いので、そこでは半分増築できる住宅タイプを作っていると。そんな内容の記事をグリーンズで書いてたんですね。


千葉さん
ボーナストラックのコンセプトも、入店する人たちと一緒に作っていきたいというものなので、その知見が活かせるんじゃないかとか。

他にもいくつもの縁がつながって、計画の初期段階から参加してました。


アオキ
こういう規模感のプロジェクトに関わるのは初めてだったんですか?


千葉さん
総面積で言えば、もっと大きなビルの計画もやったことはありましたけど、こういう小さな建物を群で作るのは初めてで、非常に面白いプロジェクトでした。



作れる人に依頼される気持ち

アオキ
そんなボーナストラックがオープンしてから二年くらい経過した今回、TENTから店舗リニューアルの依頼があったわけですけど、最初はどう思いました?

千葉さん
以前の店舗も素敵だなと思ってて、あれはTENTさんが設計されたんですよね?

以前のTENTのTEMPO


アオキ
はい、主にケンケンさんが。

ケンケン
そうですね。あくまでラフな図面までで、詳細な図面は施工業者さんにお願いしましたが。


千葉さん
正直「あそこまで自分たちでやれちゃう人たちに、僕たちがなんかできることあるのかな?」って最初は思いました。


藤本さん
これをどう新しいものにしたら喜んでもらえるのか。プレッシャーはありましたね。

藤本さん


千葉さん
ただ、その後TENTさんから資料をいただいたじゃないですか。
お店30 :スタジオ70 っていうやつ。



千葉さん
働きながらお店もやれるみたいな話は非常に面白いし、建築的な話としても限られた面積の中でどうバランスさせるか、こちらもアイデアを出せる余地があるなって。

この資料を見て、僕らができることがありそうだと思えました。



新しいノイズが生む新しい着想



アオキ
ちなみにケンケンさんは、この資料を見た時は納得してました?


ケンケン
アリだと思いましたよ。以前の店舗でもTENTのファンの方がご来店されることが多かったんですけど、その時はただのお店っぽくて期待に応えられてない感じがしたので。

ケンケン
ただのお店よりは「ここで作業してるんだ」っていう場所があった方が、そういったファンの方に、もっと楽しんでもらえるんじゃないかなって。

藤本さんは当時どう思われましたか。


藤本さん
建築家もそうですけど、プロダクトデザイナーさんも、実際に買ってくれる人や使ってくれる人と触れ合う機会って今までは少なかったと思うんです。

そういう場所を設けながら常に活動できるっていうのは、作り手としてもかなり刺激をもらえるんじゃないかなと思いました。

アオキ
在宅ワークやリモートワークとか、みんなもそうだと思うんですけど、この二年で仕事のあり方をいろいろ実験できたと思うんです。

僕も最初はやっぱり子どもがいる場所で作業するとかすごく難しかったんですが、この間のお正月あたりから変化があって。

子どもが「来てー!」「見てー!」って何度も呼ぶような、いわゆる邪魔が入る環境で、なぜかすごく良いアイデアが出て。図面作業なんかも短時間で集中できてすごく捗(はかど)った実感があって。

アオキ
たとえばカフェで仕事したほうが捗るって人もいるみたいに、雑音があったほうが良い結果につながる場合もあるんだなと実感しました。

そんな期待もあって、お店で仕事もしちゃおうと思えました。


目地を補助線として活かす


アオキ
2回目の提案の時でしたっけ。
「補助線」っていうテーマが明確になったのは。


藤本さん
そうですね。「目地(めじ)をどう活かすか」というイメージを資料としてもっていきました。


アオキ
目地、補助線、グリッド。打ち合わせの会話の中で、このキーワードが出てきた時に「やっぱりツバメさんに依頼してよかったー!」って思えました。


千葉さん
ありがとうございます。

建築って部材のサイズが決まってるので、どうしても材料同士のつなぎ目である目地が常に出てきちゃう。なので、いっそ目地を活かす方向性で提案してみたんですよね。

アオキ
僕たちはプロダクトデザインするときもグラフィックやるときも、とにかく補助線を引きまくるんです。

TENTのTENTH展やったときもマスキングテープでマス目を作ってたりしましたし。

アオキ
補助線って、製品が世に出た状態では表に現れないのに、僕たちがデザインを考える上ではすごく重要なものなんですよね。


ケンケン
僕もTENT入ってからは補助線をすごく使うようになりました。


アオキ
今回の提案は、棚柱という機能部品をうまく使うことで、空間に補助線を描いている。

壁に埋め込まれた棚柱

アオキ
そう解釈すると、裏に隠すものを表に見せてしまってると言える。それが「お店30:スタジオ70」という要望への回答として完璧だなと感心しました。

棚柱が梁と同じ間隔で配置されている




毎日現場で確認と微調整


アオキ
と、ここまではコンセプトの話でしたが、実際に完成するまでに苦労された点とかありますか?


藤本さん
そんなに工期も長くなかったんで、とにかく毎日現場で立ち会いをして、施工する方と細かく話し合いました。

たとえば有効ボードのところ。普通は裏に構造材をつけるといくつか使えない穴ができてしまうんですけど、細い材を工夫してとりつけて、全ての穴にフックなどが差し込めるようにしました。


藤本さん
棚柱の穴のところも、裏側の色が見えてしまうことがわかったので、あらかじめ奥の方も白く塗っていただいたり。本当に細かな調整をたくさんしましたね。


アオキ
毎日、現場から確認と報告をいただけて、本当に助かりました。おかげで僕たちは中目黒の事務所で、新製品の開発業務に集中できました。ありがとうございます。



店で生まれた製品が店に並ぶ未来


アオキ
実際にお店になった今の状態を見て、いかがですか?


千葉さん
やっぱり使い方がうまいですよね、さすがだなって感じます。


藤本さん
引き渡しさせていただいてから、見違えるように変わりましたね。棚をこんな形で有効活用できるんだなとか。

ケンケン
実際に設営をする中で、この補助線の優秀さに助けられてます。

ケンケン
たとえばテーブルの位置を決めるときも「2本目の位置まで」とか見やすいですし、スポットライトも線に合わせて等間隔に配置できたりしますし。


アオキ
ちなみに「この店をこうやって使ってみたら?」とか今後のTENTに期待することはありますか?


千葉さん
僕はこの、テーブルで仕事している感じと後ろの有孔ボードが本当に面白いなあと思っていて。

千葉さん
今はやっぱり過去の製品が店内に並んでいたりしますけど、このテーブルで本当に思い付いた商品が、実際にお店に並んだらさらに面白いなあと思います。


藤本さん
スケッチや試作が並んだりしててもすごく楽しそうですよね。


千葉さん
この店で、そういった循環が起きていくのが楽しみです。



作り手が作り手を盛り上げていく場所


アオキ
実はいま写真を撮影してくれている上田くんが、このゴールデンウィークに彼個人の製品をここで展示するイベントを開催するんです。



千葉さん
へえー!


アオキ
若い作り手自身が展示してお話できる。そういう取り組みを実験としてやってみてもらおうと思ってて。


千葉さん
僕たちツバメアーキテクツも、実はそういうことをやろうとしているんですよ。

7月下旬ごろ、このボーナストラックの隣に、僕たちのオフィスを移転するんですけど、そこの一階をドーナツスタンド兼公民館にしようと思ってて。


ケンケン
ドーナツスタンド兼、公民館、ですか?


千葉さん
はい、東京藝大出身で建築をやっていた子がドーナツ屋の店長をやるので、彼女の知り合いの画家さんとかに来てもらって、絵の教室をやってもらいつつ展示もしてもらったりとか。



藤本さん
ここボーナストラック自体が若いビジネスを応援するという施設ではあるんですけど、その中の店舗がさらに若い人たちを応援するというのは面白いですね。


千葉さん
そういう形でも、今後何かTENTさんとも一緒に楽しいことができると嬉しいです。


アオキ

そうですね。ぜひ一緒に盛り上げて行けると嬉しいです。



好きなTENT製品



アオキ
最後に1つだけ、すみません。図々しい質問を。
TENTが関わった製品で、お二人が好きなものはありますか?



千葉さん
僕はまずは、DRAW A LINEですね。事務所で使ってますし、この店舗でTENTさんが使いこなしている状態が素晴らしいなって思います。

本当に「自分たちが欲しいもの」を作ってる感じがします。

DRAW A LINE


千葉さん
あとは、僕の家では象印STAN.のポットを使ってます。TENTさんと知り合う前に買ったものなんですけど。気に入ってますよ。

STAN.


藤本さん
僕はテーブルランプ イチ を近々買おうかなって悩んでます。これいいですよね。乾電池式だからどこにでも置ける、夜とかベッドサイドに置きたいなって。

TABLE LAMP ICHI





アオキ
ありがとうございます!

今日はもう、いろいろなお話、本当にありがとうございました!


ケンケン
ありがとうございました。


千葉さん 藤本さん
ありがとうございました。


TENTのTEMPO(テントの店舗)

〒155-0033
東京都世田谷区代田2-36-13
BONUS TRACK SOHO1
営業時間:12:00~19:00
定休日:月曜日

※平日は不定期で休業することがあります。
 ご来店の前にTENTのtwitterで最新情報をご確認ください。



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