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『TENTのTEMPO』が、パワーアップして再始動。

あおき量産

2021年6月からはじまった『TENTのTEMPO』は、10月のある日から、突然の長期休業をすることになりました。

当初は「数ヶ月後には営業再開できるかな」なんて思っていたんですが、結果的に半年ほどの長期休業になってしまいました。

訪問を楽しみにしていた方には、本当に申し訳ありません。

今回は、TENTのTEMPOに何が起きたのか。そして、この先どうなるかについてお伝えしたいと思います。

ああ、まだ無事だった
僕たちの店舗が懐かしい


恐るべし真砂土

まずは2021年6月ごろのお話から。

BONUS TRACKの僕たちの店舗の前の道を、芝生ではなく真砂土(まさど)というものに入れ替える工事が行われました。

この真砂土、踏み固めた土のようなもので、質感もナチュラルで、風で舞い散ることもなくて良いことづくしだと、思っていたんですけど。

実は、重要な欠点があったんです。

見た目としては良い感じだった真砂土



恐るべしゲリラ豪雨

真砂土はあくまで押し固めた砂のようなものなので、雨水が降り注ぐと、そこから微細なドロが排出されます。そのドロは、排水溝の排水機能を瞬時にゼロにするという恐ろしいものでした。

そして迎えた7月ごろ。東京にはゲリラ豪雨や台風が何度もやってきました。
当然、TENTのTEMPOの店内に、雨水が大量に注ぎ込まれることになりました。

ちょっとしたゲリラ豪雨で
すぐにこんな様子に

なぜ他の店舗は無事なのにTENTのTEMPOだけに雨水が注ぎ込まれたんでしょう。

お店の前は坂道になっているんですが、真砂土の工事の際につけた坂の勾配が、ちょうど僕たちのお店に向かって下がるように作り込まれていたのです。

つまり、空から降ってきた雨水は全て、僕たちのお店に注ぎ込まれる仕組みが完成していたんです!なんということでしょう。

こんなふうに
堤防を作ったりもしました

とはいえ、外の排水溝を大きくする緊急工事をしていただけたり、僕たちも雨水が侵入するたびに店内を雑巾掛けし、排水溝を掃除し、なんとか営業は続けていました。

しかしある日、さらに恐ろしい事実に気づくのです。

恐るべし床下浸水

梅雨も抜け、ゲリラ豪雨もなくなった8月ごろ。店内に違和感を感じました。

「なんか、他の店よりもジメっとしてない?」

「そういえば、お店の入り口の段差を無くすために、床を30cmほど上げていたよね」

「まさか…床下に、雨水が残っているんじゃないだろうか」

すぐさま急いで床下を開けて、僕たちが見た光景がこちらでした。

床下の様子
見えにくいけど床下全体に5cm程の水溜りができている

床下が…魚を飼えそうなくらいの水溜りになっているじゃないですか。これは、もう、ダメです。店舗をなんとか営業してる場合じゃないです。

「床を全て撤去して、水を抜いて。内装も全部壊さないと」

「いやそもそも、店に雨水が入ってこないようにしないと」

「ってことは、外の真砂土を別のものにしてもらわないと」

「さらには、坂の勾配から変えてもらわないと」

そうして、問題の根本原因である外の道路の工事を待つこととなり、結果的に半年ほどのお休みをいただくことになってしまったのでした。

床をはずした状態
水がまだまだありました


トラブルをなんとかプラスにしたい

あまりにも不本意な突然の長期休業。でも、凹んでいても何も解決しませんから。僕たちは3つの決意をしました。

1.休業期間中にデザインワークを超がんばる

ありがたいことに、こんなトラブルの最中にあっても、プロダクトデザインのお仕事依頼はたくさんいただけていました。

店舗のトラブルにいつまでもクヨクヨするのではなく、お店ができない今だからこそ、すごい新商品をどんどん作るのだ!と気合を入れることができました。

実際に、かなりの量のすごい商品を開発できたと思います。これらの製品は遠くない未来に順次発表できると思うので、ご期待いただけると嬉しいです。

2.お店を根本から見直す

たった数ヶ月ではありましたが、僕たちにとって店舗の運営は初めてで。想像していたよりも大変で。こうしておけばよかったと思うことも多々ありました。

今回の休業を前向きに捉え、僕たちなりに「なんのためにお店をやるのか」を見直して、パワーアップした店舗として再起動できるのはないかと考え、コンセプトから見直す機会と位置付けました。


3.店舗の設計を外部に依頼する

最初のTENTのTEMPOは、僕たちTENT(主にケンケンさん)が内装設計を担当していましたが、今回のリニューアルでは、プロダクトデザインの業務に集中したいこともあり、外部に設計を依頼することにしました。

単に依頼するだけでなく、僕たちにとっての学びの機会と位置付け、この経験を将来に活かしていくのだ!と。

今回は「コンセプトから一緒に組み立てられる設計会社さん」ということで、BONUS TRACK全体の設計をしたツバメアーキテクツさんに依頼させていただけることになりました。


新しい店舗のコンセプト資料

僕たちの考えをツバメアーキテクツさんに伝えるために、簡単な資料を作成しました。

ここからは、その資料を一緒に見ていきましょう。

田久保彬さんから
紹介いただきました

ツバメアーキテクツさんは、要件を満たすだけでなくコンセプトから一緒に考えられる人たちだと聞きましたので、コンセプト立案の参考になる素材を伝えますね。

以前のTEMPOは「仮設(temporary)」つまりすべての什器にキャスターがついていて、すぐにレイアウトを変えられる作りにしていました。

まずは「お店らしいお店」として商品展示を行ったのですが、その後、レイアウト変更をする時間も気力もなかったため「仮設」というコンセプトが全く活かされませんでした。

そして運営面では。
TENTがいま販売できる全商品を並べ「こういうものを作る人たち」だと周知するという目的は、達成できたんですが

デザイナー本人が商品を説明すること、お客さんと作り手との交流の場にすること、これらは忙しすぎて店頭に立つ機会が作れず、無理があることがわかりました。


しかし、その一方で

7月にギャラリースペースで開催した『TENTのTENTH展』はすごく手応えを感じました。

当時の様子の記事


TENTのファンの方からも、初見の方からも評判が非常に高く。小さなお子さんが「こういう仕事したい」と言ってくれることもありました。

そして、この展示を見て、僕たちのやり方を深く理解した方からのプロダクトデザインの発注がいくつもいただけました。

オンラインでも購入できる「量産品」を作っている僕たちにとって「店を持つ」ってどういうことなんでしょう。

もともと、直販の究極系みたいな場所を作りたいと思ってました。(それは、ファンが尋ねる聖地だったり、モノづくりの面白さを感じられる場所だったりしそうです)

野菜なら畑が「現地」
製品なら工場が「現地」
ならば、
僕たちができる「現地」ってなんでしょうか?

以前のTENTのTEMPOは、完全に「お店」として運営していました。

次のTENTのTEMPOでは
「お店」成分30%
「現場」成分70%
くらいにしたいと思います。

それは、モノを買うこと"も"できる楽しい現場。

初見の人にとって「モノづくりは楽しそう」が伝わる場所
ファンの人にとって「刺激をもらえる聖地」
僕たちにとっては「ちょっと素敵な作業場」

つまり
平日は作業場として機能し、土日はその一端を感じ取れるスタジオのようなお店が作れないかな、と考えました。


さてここで、TENTのスタジオ(中目黒の事務所)の過去10年間を振り返ると、1つのことに気づきます。

TENTは結成以来ずっと、大きなテーブルをみんなで囲んで、考案し制作してきていたんです。

というわけで、やることが定まってきました。

大きなテーブルと、スケッチや試作や材料が存在すること、製品とその在庫がしっかり展示できること。

これら2つの要素をバランスよくまとめた、スマートな設計を考えてください!


なんていうインプットを行い、後日、ツバメアーキテクツさんからプランを提案いただくことになりました。

とっても狭い店舗空間で、このわがままをどうかなえるのか。

その結果は、次の記事で↓


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