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大変だから楽しくなる

岐阜に家を建てようと思う!

昨年末に突然そんなことを言い出したTENTのアオキこと私ですが、その後も順調に進んでまして、現在は大工仕事の段階まで来ています。

今日は大工さんとして、この家の工事作業の真っ最中なシマケンの中島 彰宏さんと、私の父であるヒゲじいと三人でお話したいと思います。

株式会社シマケン
代表取締役
中島 彰宏 さん

アオキ
はじめて中島さんと会ったとき、僕と同世代っぽかったんで驚いたんですよね。僕は勝手に「建築現場の人は年齢層が高い」ってイメージを抱いてたので。

ちなみに中島さんは何歳ですか?


中島さん
いま39歳ですね。たしかにこの世代は多くはないです。

左:中島さん
右:TENTアオキ

アオキ
僕がいま43歳なので、近い世代ですね。だから中島さんがどのような経緯で大工さんになって、そこから自分の会社を作って、今この現場を取り仕切っているのか。これまでの流れなんかを聞かせてください。


1. 図らずも二代目


中島さん
僕は親父が大工やったんです。中3から親父の手伝いしてました。それで就職先もなく親父について。


アオキ
それは「手伝いに来い!」みたいな


中島さん
そうですね。僕の兄はインテリだったんで大学へ行ったんですけど、僕はもう真逆で。高校いくかどうかギリギリみたいな子やったんで。じゃあ職人だってことだったんでしょうね親の中では。


ヒゲじい
お父さんの元で修行したんですね。でもすごいな、中島さんはその後に自分で会社を起こしちゃうんだから。

左:中島さん
右:ヒゲじい(アオキの父)

アオキ
シマケンはお父さんの会社ではないんですよね?


中島さん
そうですね、お父(とう)は契約大工というか、一社と専属で大工をずっとやってて。僕もまずはそれを手伝ってました。お寺とかもたくさんやりました。


アオキ
へえー!ちなみに中島さんは、中3のお手伝いの頃からモチベーション高く仕事してたんですか?


中島さん
いや全然。ちゃんと働き始めたのは18歳からで。最初は「自分にはこれしかないから」っていう感覚で、ただ仕事してました。

22歳のときに、結婚したってのもあったんですけど、親父が「いろんな世界を見てこいよ」って言ってくれて。あ、良いんだって思って、フリーランスみたいな形でいろんな現場の仕事するようになりました。

それで35歳の時に会社にして、その頃から仕事が楽しくなってきました。

アオキ
なんとなく仕事していた時から、楽しく仕事できるようになったキッカケとかあったんですか?


ヒゲじい
お父さんが楽しそうに仕事してたんじゃないですか?


中島さん
はい、それはあるかも。


ヒゲじい
そうでしょう。多分そうやと思う。子どもはそういうの見とるんだよね。


アオキ
あ!そうか、図らずも二代目トークなのか、これは。
そうね。親を見てるからこの仕事の報われなさや苦しさは十分知ってて。

だからこそ実際に自分がやってみて「え、意外と楽しい部分もあるじゃん」って思えて、楽しみやすいっていうのはあるかもしれない。


ヒゲじい
一代目としてはヤキモチ妬きますね。僕ができなかった夢を息子がどんどんやってるわけだから。


中島さん
うちの親父も思っとるんですかね。

ヒゲじい
思ってると思いますよ。悔しさもあるし嬉しいしっていう気持ち。


中島さん
絶対に勝てんすけどね、親父には。


アオキ
僕もスキル的な意味では絶対に勝てないですね。

ちなみに中島さんは、具体的に「あの物件からすごく仕事が楽しくなった」とかはありますか?


2. 大変だから楽しい


中島さん
確実に、ミユキデザインさんとの仕事が始まってからだと思います。出会いはワークショップだったんですけど。


アオキ
ああ、たしかミユキデザインさんが担当してる物件があって「ワークショップ」として一般の人を集めて、ボランティアみたいな形で、みんなでペンキ塗りやフローリングを敷く機会があったと。

そこに、なぜかプロである中島さんが参加していたと聞きました。


中島さん
そうそう、それです。


アオキ
そういう場所にプロが参加って普通やらないですよね。プロとして有料でやっていることをボランティアみたいな形で行うわけだから。どういう気持ちでそこに参加したんですか?


中島さん
単純に「ワークショップってどういうことするんだろ?」って興味があったんですよ。


ヒゲじい
好奇心旺盛だなあ!


中島さん
そうすね。好奇心すね、本当に。それで午前はペンキ塗りだったんで、僕もあんまりやったことなかったんで、普通に参加させてもらって。


アオキ

なんかミユキデザインさんが「道具を忘れたからどうしようか」って話してたら中島さんが「僕その道具持ってますよ」って持ってきて、そこでプロであることがバレたって言ってましたね。


中島さん

そうです。午後はフローリング敷くってことだったんですけど、プロだってバレたから、気づいたら僕が「先生」みたいになってました。

で、そこからお知り合いになって、僕の自宅の設計をミユキデザインさんに依頼することになったりして。


アオキ
ええ!?中島さんのお家を、ミユキデザインさんが設計して、中島さんが施工するってことですか?


中島さん
そうです、僕は建てるスキルはあっても、設計というかデザインするセンスがないもんだから。

ミユキデザインさんは、いまアオキさんが僕と話してくれてるみたいな感じで、すごく意見を聞いてくれる設計士さんじゃないですか。


アオキ
たしかに、この家も僕の意見をものすごく通してもらえてます。

中島さん
だからミユキデザインさんとなら良いものできるって思って。それで自宅を一緒にやってから、フィーリングが合うというか、よく仕事させてもらえてますね。


アオキ
ちなみに、ミユキデザインさんとの仕事が始まる前は、大手の仕事が多かった感じですか?


中島さん
そうすね。大手ハウスメーカーの仕事をたくさんしてました。実はその時の方が売り上げはよかったんです。でも面白いことのほうが勝っちゃって、いまはこういう仕事を多くしてますね。


アオキ
その大手ハウスメーカーの仕事と、今回の案件みたいなのの違いってどんなことなんですか?


中島さん
こっちのほうが大変なんすよ。だから楽しい。

ハウスメーカーや大手の仕事って「図面どおりに作る」ってものなので、極端な話、誰がやっても一緒なんです。でもミユキデザインさんとの仕事なんかだと自分で考えて工夫する部分がすごく多いから。

中島さん
このアオキさんの家も本当ワクワクしかないんすよ。こんなん僕らの年代の大工さんは触らんもんで。

アオキ
ふむふむ、具体的には、どういうことですか?



3. 構造から考える



中島さん
屋根が7寸勾配って言って、かなり急勾配なのと、20mの長い軒とか、雨樋がないってこととか。

やったことないことだらけで。構造自体から考えないと作れない。そこが難しくて楽しいんですよね。

ヒゲじい
僕も母屋(もや)が無いのはびっくりした。こんな方法があるのか!って。

棟上げ中の頃の写真


中島さん
そうすね。柱が少なくて、柱と柱のスパンを広く取るためには母屋がない構造のほうが良くて。あと母屋があると天井が下がってくることになるしってことで、この構造になりました。


ヒゲじい

昔の建物は力がかかる場所は大黒柱みたいに太くしたりしてたけど、今回の建物は同じ太さの材でできてるじゃないですか。これは力をうまいこと分散してるんですか?


中島さん
そうですね。在来工法ではあるんですけど、ボルトとか金物を多く使って、あとは面材を構造として使うってのが今の方法で。こんな形が実現できてますね。

中島さん
他に個人的に面白いなと思ったのはロフト部分ですね。こんな急勾配の屋根だとロフトとしては使いづらいから普通は角度を変えるんですよ。でもこの角度でOKって言う施主は潔いなあって思ってました。

アオキ
なるほどー。というわけで今は上棟が終わって、ガチっと全体の構造が組み上がった感じなんですけど、ここから先にも中島さんにとってのドキドキワクワクポイントはあるんですか?

中島さん
いや僕は大工なんで、ここからが主役。ようやくこれから始まる感じですよ。構造についてもここから気配りというか、歪みを防ぐために細かくボルト閉めたり、面材で工夫したり、補強していきますし。

もちろん仕上げを綺麗にするのも腕の見せ所ですし。


アオキ
でも今の時点でも本当に綺麗ですよね、最終的には今見えている構造のほとんどが隠されて見えなくなっちゃうから、すごく勿体無い気持ちです。

棟上げ途中の写真

ヒゲじい
僕は基礎のコンクリート打つ前の鉄筋を組んでるところも見てたんだけど、あの鉄筋もすごく綺麗でした。職人さんも「このままにしてもらいたいくらい」って言ってたくらいで。

鉄筋が見えている頃の写真

アオキ
一つ一つが丁寧な仕事の集積で。本当にありがたいことです。


中島さん
いやー、そこまで見ててもらえて嬉しいですね、ここからも綺麗にやらないと。プレッシャーですね。

ヒゲじい
僕は毎日工事現場を見てるんですけど、上棟の時はびっくりしましたよ。中島さんがキビキビ動いて、屋根の上を走り回ったり重い材料を持ち上げたりトンカンやってるから。


ヒゲじい
あのスピーディで軽やかな動きは本当にすごいわ。

ヒゲじい
屋根が急勾配だから滑るんだけど、そこをタタターって走ったりして。


アオキ

中島さんは監修みたいな立場で、実際に現場で手を動かす人は入れ替わり立ち替わりしていくのかなって思ってたんです。

でも中島さんは、ガッツリ現場で手足を動かす感じなんですね。そういうのって珍しいんじゃないですか?


中島さん
そうですね。職人上がりっていう僕みたいなタイプは珍しいとは思います。

ヒゲじい
同時に並行していくつの案件をやってるんですか?


中島さん
自分が職人も兼務しとるんで、同時並行でいくつも案件を抱えることはできなくて。一棟入魂って形でやらせてもらってます。

ミユキデザインさんからもよく言われるんですけど、打ち合わせする人と仕事する人が同じなのが良いって。そこはメリットですね。


アオキ
あー!それすごいわかります。引っ越し屋さんなんかも、営業さんは良い人だったけど、当日荷物を運ぶ人は全然違う感じで話が噛み合わない事とかありますもんね。

あと、そのやり方だと何よりも中島さん自身が達成感を感じやすそうですね。



4. 大工は楽しい


アオキ
ちなみに中島さんは全工程の中で一番楽しい瞬間ってありますか?


中島さん
どんどん形になっていくから毎日楽しいっていうのはあるんですけど、そうすね、一番は、完成ちょっと手前ですね。


アオキ
完成した瞬間ではないんですね。


中島さん
変な言い方ですけど、完成したら手ぇ離れちゃうんで。


アオキ
ああそうか。何ヶ月も通った現場が、完成したら関わりがなくなっちゃいますもんね。ってことは、学校を卒業する前の3月上旬の気持ちみたいな。


中島さん
そうそう!まさにそうです。大工としては、上棟の時が入学式のワクワクする気持ちで、完成の時が卒業式の気持ちなんですよ。それが何回もある仕事なんで、本当に楽しいです。

中島さん
でも実は大工って、完成物件を見れる機会がないんですよ。それこそ分業、システマチックなんで。とくにメーカーの大工さんとかは自分の担当だけ終わらせたら次の仕事ってなる。

でも嫌じゃないですか。せっかくなら完成したところ見たいじゃないですか。こういうやり方ができてて、今は本当に楽しいですね。

アオキ
僕もプロダクトの企画から設計、そして発送までやらせてもらってるんで、今のやり方をすごく楽しめてて。中島さんの楽しみ方と近い気がして、勝手に共感しました!

最後に、インタビューなんかで僕がされて困る質問を、あえてしますね。

これから中島さんがやりたい事とか夢とかってありますか?


中島さん
夢…やりたい事…うーん。

僕は今が続けばいいなって思ってて。今の状態がずっと続いて。歳をとっていくとどうしても仕事が薄くなってきたりとか感覚が鈍ってきたりとかそれが嫌だなって。


アオキ
うわぁ、それめちゃくちゃ共感です。僕たちも全く同じ回答をしてます!

できるだけ全体に関わるこのやり方で、毎日の達成感を糧に良いもの作っていきたいですね。


アオキ
今日はありがとうございました!


中島さん
ありがとうございました。




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