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野球のコーチに本気でお尻を蹴られた日。ぼくは敬語を学んだ。

小学校2年生から卒業までの5年間、
地元の少年野球チームに入っていたのですが、


元々クラスの中でも中間的で、静か過ぎず、
はしゃぎすぎない感じだった僕は、

野球を始めて友達も増え、毎週土日にある野球クラブにも楽しく通っていました。



そして小学5年生のある日のこと。

少年野球の練習中、内野と外野に分かれて、
内野の練習は監督が、
外野練習はコーチが、それぞれノックをしてくれました。


外野練習に振り分けられたのは、
僕と仲の良い友だちで計5人ほど。


ノックをしてくれるコーチは友達のお父さんで、
そのコーチのことは小学3年生の頃から知っていて、よく可愛いがってくれてました。


『さっ コーイ!』

と声を選手がだし、

『キーン!』

という音と共に、コーチがフライを打ち、

『ザシュ!』

とキャッチをして、


キャッチャー役をしている選手に返球する。


そしてまた、

『さっ コーイ!』

と声をだし、

『キーン!』

とコーチがノックを打ち、

『ザシュ』

とキャッチをして返球する。




このやり取りが何度か続くと、

時々コーチのノックの勢いが強すぎて、
場外にいったり、横に大きくズレて取れない時がありました。


そんな打球が2.3球あった後、仲の良い友だちが、


『そんなの取れんぞー!』



と声をあげました。



その瞬間、一緒にノックの順番待ちをしていた友だち達はタメ口を使った友だちからドッと笑いが起こりました。


その流れを見て、僕の心に込み上げてきたのは、





(僕も言って笑いを取りたい)





という絶望的にアホな考えでした。


そうしたことを考えてると、
珍しく僕の父が小学校にやってきて、何か僕のカバンの中に何かいれてくれて、

そして以前から顔馴染みだったコーチと一言、二言話すと僕の方を見て手を振り、帰っていきました。


『何か届けてくれたのかな?』


少し不思議に思いましたが、すぐに帰っていった為それほど気にすることはなく、
また練習を続けました。



頭の中には、

場外のフライこい。取れないレベルのノックが来て、コーチにタメ口を使って笑いを取りたい。



その考えが巡り巡っていました。笑



そうして少し経って僕の番になったとき、


『キーーン!!』



明らかに横方向にずれた、ライナー気味の打球が飛んでくると、


(来た〜)


調子に乗った僕は


『それは無理やー!取れんぞー』



そして最初に言った友達も便乗し、


『そうだー!取れんぞー!』


周りからドッと笑いが起こり、満足していると、



カタンッ。




コーチがバットを地面に置き、
僕たちの方を見ながら歩いてきました。



(これはマズイ、、)

一瞬で嫌な予感がしましたが、
逃げるのもカッコ悪いと思い留まっていると、


そうして近くにきたコーチが僕と、友達の方を見て、


『今言ったのはお前ら2人か?』




ドキッとして、とてつもなくビビりましたが、そのコーチはよく冗談も言う人なので、
頼むからジョークであってくれと想い続けていました。


そしてまずコーチは友達の方へ、


友達も逃げることなく、その場に居ると、

コーチのキックが

『ドンッ』


っとお尻の少し下に直撃。



そこを手で抑えながら、痛みを緩和するためにケンケンしながら歩く友達。


とても痛そうではありましたが、それを見た僕が最初に思ったのは、



(今のキック、手加減してくれてるな)



幼稚園から空手を習っていた僕の経験的にはそう見え、少しほっとしてると、

コーチが僕の方に近づいてきました。


しかし、近づいてくるコーチの本気の眼を見た時、

僕は走馬灯のように、先程コーチと父が話していた光景が思い出されました。


(礼儀に凄く厳しい父さん。

帰り際にコーチと何を話したんだろう?

凄くやばい気がする。)



ただここで僕が逃げたら、既に一発食らっている友だちを裏切ることになる。

そしたら明日の小学校で僕は根性なしと呼ばれてしまう。


ここは耐えよう。
大丈夫。一発なら必ず大丈夫。


そうしてコーチが僕の前に立ち、

左足を軸にした、地面を這うような鋭い右のローキックが僕のお尻の少し下に直撃。



『ドンッッ!』

と鈍い音が僕の身体に響きわたると、

お尻を抑えつつ、その場に倒れるぼく。

そして何故か笑いが込み上げてきました。


※経験ある人はわかるかもしれませんが、
キックされて本気で痛い時は、感情がおかしくなり、逆に笑えてくるのかもしれません。


その後泣けてきて、
しばらく起き上がれず、その場に倒れ、



(完全に僕が悪い。

調子に乗るんじゃなかった。)



友達の前で涙を見せたカッコ悪さと、
明らかに調子にのっていた自分への恥ずかしさ、

寝転がった時に見えた大きな空が、
より自分のちっぽけさを強調した気がしました。


その日の練習後、
コーチのところへ行き謝りました。


『すみませんでした。
僕たちが調子にのってました。』


コーチは少し微笑みながらも、


『すまんな。俺もちょっとやり過ぎた。
大丈夫か?』


『いえ、明らかに僕らが悪かったです。
すみませんでした。』



ーーーーーーーーーーー

その日の夜、家に帰ると父から、

『たくま。今日は練習どうだった?』


『何で?』


『お昼にコーチに会ったとき、
「うちの子には厳しくして下さい」って伝えといたから笑。

礼儀正しくするんだぞ。』



そうだったのか。


多分父もコーチも、最近の僕の生活を見て何かを感じ取っていたのかもしれない。



そして今振り返ると、
あの時の生意気な僕には、あの“痛み”が必要だったのかもしれません。

結構痛い勉強代になりました。笑


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