幼稚園年長のぼく。小学2年の兄が見せたつよさ。
もう20年以上前になりますが、今でも覚えている記憶があります。
当時兄と僕は家から1キロぐらいの所にある空手道場で空手を習っており、
空手の時間は火曜日の夜19時〜20時。
基本的に親が18時55分くらいに車で僕らを送ってくれて、
また20時5分くらいに迎えに来てくれるという流れになっていました。
事件が起きたのは11月の夜でした。
いつものように空手を終え、空手道場の外でジャンバーを着て待っている兄と僕。
5分が経ち、
「かあさんこないなぁ。」
と兄。
「こないねー」
とぼく。
特に記憶に残っているのは、その日は風がとても吹いていて寒かったこと。
兄のお古を着ていた僕の道着のズボンは少し短く、下から入る風がより「帰りたい」気持ちを増やしました。
更に10分が経ち、
「よし、たくま歩いてかえろ。」
と兄。
「うん。わかった。」
と僕。
当時幼稚園児の僕は、深く考えずオーケーをしましたが、
正直帰り道もわからず、とにかく兄についてく事にしました。
「かあさんわすれてるのかなぁ」
「わからんー。でもかえれるし大丈夫。」
僕はこの日をきっかけに「11月は寒い」という刻印を頭の中に刻むのですが、
とにかく帰り道はビュンビュンと風が吹き、
空手道場から、川が流れる道の横を通り、
工場のよこ、ホテルのよこを通りました。
このとき僕は兄が当たり前のようにぼくの前を進み、
当たり前のように家に(おそらく)向かっていることを何もフシギにおもいませんでしたが、
小学2年生の男の子が、夜20時に歩いて1キロ
先の家に歩いてかえるのは、
今思うとすごいなぁと感じています。
「さむいー。」
弱音をはきながらあるくぼくに、
「だいじょうぶ。もうかえれるよ。」
一歩一歩すすむ兄。
そうしてかなりの距離を、小学2年生と幼稚園児があるきました。
この次にある記憶はぼくが玄関にいて、
おじいちゃん、おばあちゃんにすごく心配してもらった記憶。
あのときのぼくと兄は、
最後まであるいて家に帰ったのかなぁ。
それともあと少しのところで、探しに来た母の車に乗って帰ったのかもしれない。
どっちの記憶もあるような、ないような感じがしています。
家に帰ると家族みんなが、
「たくまがそんなに歩けるなんて凄い。」
「よくがんばったなぁ」
と褒めてくれましたが、
一番凄いのは冬空の中、
恨み言ひとつ言わず、前を歩き続けてくれた兄でした。
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