【詩】やさしさのメロディ、かなしみ
私は、「やさしさ」に触れるのが人よりも上手だった。
自分は、ずっと強い人だと思っていたけれど、こころは何とも繊細だった。
繊細だから強いとも言える。
とにかく感じて、受け止めて、影響を受けて、鎮める、その回数が人よりもずっと多かった。
多いと慣れる、上手になる。上手というのはうまく出来るということだ。
だから、勘違いしてしまう。自分は強くなったのだと。
本当は違う。現象を受け止められることと、受け入れて、消化できることは違う。時間は感情を風化させるが、無かったころに戻る訳じゃない。
一度切った切符が元に戻らないように、失った信用が戻らないように、世界はそういう風に出来ている。
『世界は昨日とは違う。』
私はその事実を、どうしても受け入れられない。
正確には、受け入れている。受け入れて生きているが、たまに気が付くのだ。
「私は傷ついている。」
そう、どうしようもなくその事実に傷つけられる。
『繊細・敏感』
その特性が、私に多大な情報を与えてしまう。
たくさんの情報に踊らされる、その間にも、世界は色を変えていく。
じゃあいったい何のために、私は多くの情報に曝されるのか。
世界は人と分け合いにくいこの甘い苦しみを、私たちに課すのか。
だから私は、「やさしく」在ろうとする。
この試練に対抗する為。世界に反抗する為。
人より多くを知り、傷ついた分だけ。
「やさしさ」なんていいものではない。
「やさしいひと」は、気づき、傷つく、不幸な人だ。
私が育ったのは、海も空も近い町でした。風が抜ける図書室の一角で、出会った言葉たちに何度救われたかわかりません。元気のない時でも、心に染み込んでくる文章があります。そこに学べるような意味など無くとも、確かに有意義でした。私もあなたを支えたい。サポートありがとうございます。