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400字日記(リニューアル版)

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400字日記をリニューアル 日記に通底するテーマ 「すべては作家人生のために」 400字に入れること➡︎日々に見た感じたもの(具象) 四百字をどのような形式で見せるか? ➡︎「第…
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#文章の書き方

丸山健二塾第三回(文章をドラマチックに書く) 映像は有料

5770文字・15min ■□■□■□ ◉前回丸山健二先生の改稿: 重油の匂いに溢れかえった浜。黒い波が寄せては返す。 カモメの代わりにカラスが群れている。 陽光が虚無を放っている。 風が踊り狂っている。 辺りには人っ子ひとりいない。 いや、誰かがいる。 娘だ。 そうではない、少女だ。 穢れた砂の上に横たわっている。 全裸だ。 僕はひざをつく。まじまじと顔をのぞき込む。知らず知らずくちびるに迫っている自分に気づく。 気配を察した少女は肩を小刻みに震わせる。 「寒いか」と訊

有料
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なぜ文章が失敗してしまうのか? / 文章レッスン(基礎講座)

3371文字・20min 稚文をさらすこのぼくが先日文章教室をやりました。 相手の属性は年齢43歳で女性です。 KYさんとしましょう。 文章は原爆に関する文章でした。 ということはこれは本人の目撃シーンではない。 文章の原型なる「風景」はある人から「伝聞」で聞いたそうです。 ■□ 爆心地 原文) あの時、爆心地の真上の空では、核爆弾が閃光のように、眩(まばゆ)い光とともに炸裂した。爆心地の近くの地面には、原爆で焼かれ、生きたまま彷徨い倒れて、死屍累々と積み上がって死

お返しの記事(読書と書物について)

3588文字・34min ぼくは基本、パソコンもケータイも画面もディスプレイカラーを反転させています。これは京都に住んでいた時分の設計士の友人に教わりました。設計士はいまはデスクでCAD作業です。立体の橋、教会、タワー、図書館、家などを無数の線で白地に黒線で書き続ける。やはり目が疲れるそうです。 執筆も基本はおなじです。 僕はディスプレイを黒地にして文字は柔らかいオレンジや青色などにしています。 さて、野原綾さんの下記の記事にて  ぼくのnoteでは村上春樹さんの作品

800文字日記/20220417sun/048テーマ「脱力、嘔吐感」011

腹に猫が頭を擦りつけて目覚めた。仰向けになったまま足で敷布団を窓際へ追いやって左半身は畳で寝ていた。 春になって出したブランケットは壁に寄せてある。カーテンは締め切られ部屋は暗い。気温を感じる。陽が高いのか揺れるカーテンの下に光の帯が射す。時計をつかむ。まだ朝九時半だった。 目をつぶる。身体のどこかに違和感を感じる。胃より下で腹部より上、みぞおちだ。呼吸で波を打ったみぞおちの底で重いゴロゴロした何かが転がっているように感じる。まるで横たわる下腹部の内臓の底に、中途半端に砂を

800文字日記/20220416sat/046テーマ「老いた顔と手」010

自分の顔を鏡で見る。自分の老いと醜さに驚く。頭はバリカンを当てゴマ塩だ。右目が潰れていて血が混じる。向かって右の上まぶたに二つと下まぶたに一つ脂肪を含む疣(いぼ)が突起する。上まつげは長いが色が薄い。左眉のなかに薄茶色のホクロがある。メガネのパッドがいい加減な角度で鼻梁を挟む。奥歯を強く噛むクセがここ何年も続き、下顎の奥の関節を動かすスジと筋肉が隆起する。頬と顎が二段腹に見える。 顔を左右に振って見る。頬骨より外側の肌に茶色や焦茶色が染みた老人斑が散見される。が、引きこもり

800文字日記/20220406wed/033

猫のウンコの臭いで起きる。14時半。晴れ。部屋と猫のトイレの掃除をする。開けた窓から虻(あぶ)が入る。猫が窓に張りつく虻に飛びつく。猫と遊ぶ。ロードバイクを担いで外に出る。 屋内駐車場で二人の老婆が集合郵便箱に折り込みチラシを入れている。片方は跛(ちんば)の身障者に見える。部屋番号を訊(き)かれる。お前らには言わない。どこにも入れるなと言う。 菖蒲(あやめ)が一輪咲く、その石垣の段々畑に満開の桜の木が立つ。周りは椪菅(ぽんかん)と仏の座と菜の花だ。坂の上の変電所をバックに

800文字日記/20220405tue/032

猫が足を噛(か)む。起きる。15時。猫を撫(な)でると毛が抜(ぬ)ける。音楽をかけ敷布団を干す。猫が部屋を駆(か)ける。台所でガラスの割(わ)れる音がする。シンク周りとトイレと風呂場を掃除する。猫と遊ぶ。ロードバイクを担(かつ)いで外に出る。 曇(くも)りだ。菖蒲(あやめ)が一輪咲く石垣まで来て見上げる。電線にとまった一羽の雀がピヨピヨと騒(さわ)いでいる。 ロードバイクを山手に走らせる。タクシー会社の前で止まる。奥の屋内駐車場で整備中なのかコンプレッサーの音がする。福寿

800文字日記/20220404mon/031

草刈りの音で起きる。9時5分。寝る。腹に猫が乗る。14時。快晴。洗濯をする。布団を干す。ベランダに流れる洗濯の排水に猫は興味津々だ。県道の向こうで見覚えのある影が揺れる。双眼鏡で覗(のぞ)く。鯉のぼりだ。部屋を掃除する。ロードバイクを担(かつ)いで外に出る。 風は山手から吹く。タクシー会社の敷地で鎌(かま)を持った老人がしゃがむ。背の高い老婆とすれ違う。大紫羅欄花(オオアラセイトウ)が鮮(あざ)やかに咲く家を通り過ぎる。 郵便局に入る。昨日、パンクの修理を立て替えてくれた

800文字日記/20220331thu/027

腹に猫が乗る。11時24分。用に立つ。曇(くも)り。時報を聞く。寝起きをくり返す。猫と遊ぶ。傘を持って外に出る。17時。玄関を開ける。ベトナム人と鉢合わせをする。戸締りを確認して階下に降りる。 畦(あぜ)に出る。上空は雨雲だ。風が強い。土手へ出る。自転車で走る中学生のスカートがすれ違いざま、翻(ひるがえ)る。籠(かご)に、釣り道具とポケットラジオを入れた自転車に追い抜かれる。ラジオの音が遠ざかる。 橋を渡る。右へ曲がる。河辺一帯の草木や雑草が風で騒(ざわ)めく。遠くから中

800文字日記/20220330wed/026

腹に猫が乗る。起きる。7時。曇(くも)り。窓から土手を自転車で通学する詰襟(つめえり)姿を見る。寝る。用に立つ。13時。猫にカリカリをやる。近寄ってくる猫が臭い。パンツを脱ぐ。寝糞(ねぐそ)だ。シャワーを浴びる。洗濯機を回す。猫と遊ぶ。干した洗濯物が風で揺(ゆ)れる。ロードバイクのタイヤの空気を入れ直し、担(かつ)いで外に出る。 バイクを転がす。風は強い。畦(あぜ)で杖を突いた老婆とすれ違う。雨粒が頬にあたる。白い犬を連れた老人が前を歩く。湿度が高い。菜の花の臭いが強い。土

800文字日記/20220329tue/025

腹に猫が乗る。起きる。11時9分。曇り。猫に食事を。ごろ寝。正午。部屋の掃除。散歩に出ようとしてロードバイクのタイヤのパンクに気づく。自分のロードバイクをググる。部品類、タイヤ、高額。途方に暮れる。昼食を作って食べる。自転車屋に電話。車で来てくれる。ぼくも乗せてもらい自転車屋へ。13時。 店内は油まみれの部品が散らばる昔ながらの自転車屋さん。奥にレザーソファ、埃(ほこり)を被(かぶ)ったアコギ、昭和のテレビの横に山下達郎やオーティス・レディングのレコードが、漫画本が山積み。

800文字日記/20220328mon/024

塵芥車(じんかいしゃ)が来て目覚める。13時3分。猫が鳴く。曇(くも)り。窓を開ける。外を見る。畦で頬(ほお)かむりを巻いた女が犬を連れている。土手で山手から青い車が来て離合帯(りごうたい)で止まる。男が犬をおろす。猫にカリカリをやる。部屋を掃除。ロードバイクを担(かつ)いで外に出る。 ペダルを踏む。風は穏やか。肌寒い。左手に「川舟祭」のポスターを見る。郵便局の配達車が通り過ぎる。左に寺の掲示板が立つ。A3の紙に楷書(かいしょ)で「自分は自分、人に何を言われたって気にしない

800文字日記/20220327sun/023

起きる。7時3分。猫が音にビクつく。隣室に人の気配を感じるのか。寝る。時報。起きる。晴天だ。猫にカリカリを。猫は窓辺で丸くなる。燃えるゴミを階下へ。下からベランダを見上げる。二階に赤い花柄のブラジャーが。掃除をする。外に。 青空。風は強い。背丈が高くなった菜の花や薺(なずな)や畑の麦が揃(そろ)って揺れる。鴉(からす)が畦(あぜ)を闊歩(かっぽ)。畦(あぜ)の、雨の後で固まった靴跡やトラクターのタイヤ痕(こん)の上を紋白蝶(もんしろちょう)が飛ぶ。 ニット帽を被った老婆が

800文字日記/20220326sat/022

起きる。8時6分。鳴く猫をベランダに。雨。物干し竿から水が滴(したた)る。濡(ぬ)れた道路を車が走る。用にたつ。起きる。15時半。外は明るい。海は暗雲。猫にカリカリを。濡れた窓に蚊(か)が。掃除。16時。窓を開ける。生温かい湿気を吸う。 ロードバイクを担(かつ)いで屋内駐車場に降りる。ベトナム人が四人いた。工場の研修生。19〜35歳。三階と四階に部屋を借りるという。皆好青年。 畦(あぜ)を歩く。腋(わき)が汗ばむ。ベトナム人と話した緊張感か、蒸し暑さか、単に歩いて身体が熱