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800文字日記/20220326sat/022

起きる。8時6分。鳴く猫をベランダに。雨。物干し竿から水が滴(したた)る。濡(ぬ)れた道路を車が走る。用にたつ。起きる。15時半。外は明るい。海は暗雲。猫にカリカリを。濡れた窓に蚊(か)が。掃除。16時。窓を開ける。生温かい湿気を吸う。

ロードバイクを担(かつ)いで屋内駐車場に降りる。ベトナム人が四人いた。工場の研修生。19〜35歳。三階と四階に部屋を借りるという。皆好青年。

畦(あぜ)を歩く。腋(わき)が汗ばむ。ベトナム人と話した緊張感か、蒸し暑さか、単に歩いて身体が熱(ほて)ったからか。上着を脱ぎ肩にかける。

雨上がりの濡れた薺(なずな)と菜の花畑で番(つが)いの紋白蝶(もんしろちょう)が飛ぶ。高圧線の鉄塔の下で空を見上げる。山手は暗雲(あんうん)、海は羊雲(ひつじぐも)。浄水場の脇を抜け、土手に上がる。左に曲がる。豆柴(まめしば)の親子犬を連れた男とすれ違う。「桜はまだだね」「そうですね」。堰(せき)から落ちる河の流れは存外(ぞんがい)、穏やか。空が暗いだけでいつもの河だ。

土手沿いの桜並木の、太陽が当たった一本の枝の蕾(つぼみ)だけが開いている。改めて白い桜の花びらを見る。ソメイヨシノだ。すると先週散った桜は山桜だったのか。


雲間から土手に温かい夕陽が射(さ)し込む。地面が白い蒸気を発する。周りの山野を見る。濡れた山々から霧(きり)が沸(わ)いているようだ。菜の花の黄色が雨で落ちている。そのせいか菜の花の背丈が高く見える。

コンクリート橋の中央に立つ。太陽が出た為か、河の両側で雀が姦(かしま)しく囀(さえず)る。陽を背に歩く。前方から土鳩(どばと)が滑空(かっくう)してきて団地に掛かる橋の下へ潜(もぐ)る。別の土鳩が飛び立つ。

河面に鴨(かも)の一群が。止まる。ぼくの位置を要にして鴨らは放射状に離れる。鴨の一羽一羽が矢印の波を作ってぼくから離れていく。その互いの波がクロスする。美しい幾何学(きかがく)模様(もよう)を創(つく)り出す。八芒星(はちぼうせい)、十六芒星(じゅうろくぼうせい)のように波状は広がる。

スーパーに入る。タイムセールで鮨(すし)が半額。まず清算を済ませる。残金576円。2パックの組み合わせに悩む。女がきてウニのないパックを二つ籠(かご)に入れる。計算する。膝(ひざ)を打つ。(800文字)


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