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800文字日記/20220328mon/024

塵芥車(じんかいしゃ)が来て目覚める。13時3分。猫が鳴く。曇(くも)り。窓を開ける。外を見る。畦で頬(ほお)かむりを巻いた女が犬を連れている。土手で山手から青い車が来て離合帯(りごうたい)で止まる。男が犬をおろす。猫にカリカリをやる。部屋を掃除。ロードバイクを担(かつ)いで外に出る。

ペダルを踏む。風は穏やか。肌寒い。左手に「川舟祭」のポスターを見る。郵便局の配達車が通り過ぎる。左に寺の掲示板が立つ。A3の紙に楷書(かいしょ)で「自分は自分、人に何を言われたって気にしない」。石垣が積まれた家の檻(おり)から犬が吠(ほ)える。

路地は曲がりくねっている。右に建つ刃物店のレジの上に白猫が見える。陶器の置物のようだ。路地は開ける。河が現れる。右手は堤防になる。鴨(かも)が山手から飛んできて着水する。

道の真ん中に白い車が停車している。エンコか。ライトをつけたセダンとスクーターが避(さ)けて通る。近づく。左の家の玄関から女が出てきて白い車に乗り込む。発進する。後部座席に老婆が見える。養護(ようご)ホームの車ではない。

空はいよいよ暗くなる。縁台に座った老婆が回覧板を捲(めく)る。県道を渡る。港郵便局に入る。貯金をおろす。切手を買う。女局員のネームに「◯◯海愛」。「名前なんて読むの?」「みあです」「いくつ?」とは訊(き)けずに立ち去る。

セブンのATMで借金を返す。自動ドアの前で立ち止まる。高橋留美子の、タイトルさえ初めて知った新刊「MAO」税込550円。36年前「Dr.SLUMP」は税込360円。ぼくの世代のこち亀、キャプ翼が棚に並ぶ。さらに、ちばてつやのキャプテン2からゴルゴ、鬼平、名作は強い。小説は相変わらず赤川次郎、西村京太郎。村上春樹はアカデミー賞の影響か。ググる。全国にセブンは21,327店舗だ。

セブンを出る。河口橋で少女が大型犬を連れて歩く。頬(ほほ)に雨がパラパラ当たる。ベランダの洗濯物を思い出す。窓が開けっ放しだ。隣(となり)がベトナム人だ。部屋にノートパソコンがある。ペダルを強く踏み込む。

部屋の窓は開いていた。パソコンはあった。寝ている猫がぼくを見あげ欠伸(あくび)をする。(800文字)



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