800文字日記/20220329tue/025
腹に猫が乗る。起きる。11時9分。曇り。猫に食事を。ごろ寝。正午。部屋の掃除。散歩に出ようとしてロードバイクのタイヤのパンクに気づく。自分のロードバイクをググる。部品類、タイヤ、高額。途方に暮れる。昼食を作って食べる。自転車屋に電話。車で来てくれる。ぼくも乗せてもらい自転車屋へ。13時。
店内は油まみれの部品が散らばる昔ながらの自転車屋さん。奥にレザーソファ、埃(ほこり)を被(かぶ)ったアコギ、昭和のテレビの横に山下達郎やオーティス・レディングのレコードが、漫画本が山積み。
主人は手よりも口が動く。自転車の歴史(昔の自転車は、部品を交換するなら新品を買う文化、消耗品だった)に始まり、自転車は警察の管轄、車は国交相の管轄、自転車税、しまなみ海道、琵琶湖、霞ヶ浦、太平洋自転車道の四大サイクリングコース、自転車レーンのブルーライン、別府競輪、輪行袋(戦後の競輪選手の移動のためだった)、手回品(てまわりひん)切符、鉄道チッキ、折りたたみ自転車、分解自転車、マウンテンバイク、ビーチクルーザー、E-bike、映画石原裕次郎主演「ある兵士の賭け」、トライアスロン競技公式写真集、ホリエモンがトライアスロン大会で齎(もたら)した罪、地元ラジオ局の開局、店の裏に宇佐神宮からの縁で自転車神社を。などの講釈(こうしゃく)が延々と三時間。長い。まるで落語の地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)だ。「タイヤは古いのを付けた。千円でいい」。結局主人の千円分の講釈で足が棒。落語のサゲのよう。17時の時報。店を後にするとき主人の幼馴染(おさななじみ)が。ジャズピアニストだという。CDを貰(もら)う。
帰りに紫色の木蓮(もくれん)が満開に。坂でペダルを踏み込む。路面との粘り気で安物タイヤだと歴然(れきぜん)。文句は言えないが。左手に「毎月29は肉の日」の幟(のぼり)が。スーパーで豚肉を買う。
コンクリ橋で止まる。女が、河原の菜の花畑の中にひょいと隠れる。野糞か? 土手へ回る。女と同じく太陽に背を受ける。夕陽に照る菜の花が美しい。女は携帯で菜の花畑の中で犬の写真を撮っていた。(800文字)
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