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800文字日記/20220405tue/032

猫が足を噛(か)む。起きる。15時。猫を撫(な)でると毛が抜(ぬ)ける。音楽をかけ敷布団を干す。猫が部屋を駆(か)ける。台所でガラスの割(わ)れる音がする。シンク周りとトイレと風呂場を掃除する。猫と遊ぶ。ロードバイクを担(かつ)いで外に出る。

曇(くも)りだ。菖蒲(あやめ)が一輪咲く石垣まで来て見上げる。電線にとまった一羽の雀がピヨピヨと騒(さわ)いでいる。

ロードバイクを山手に走らせる。タクシー会社の前で止まる。奥の屋内駐車場で整備中なのかコンプレッサーの音がする。福寿山を右に入る三叉路(さんさろ)の左のアパートの駐車場で、犬を抱(かか)える女と赤ん坊を抱える女が大声で話す。頭を下げる。路地の塀(へい)の陰(かげ)で、乗用車とすれ違いざまにクラクションを鳴(な)らされる。

冷たい風が体の前面に当たる。生垣に紫木蓮(しもくれん)が植(う)わる庭の奥で、草刈機のような高音が煩(うるさ)い。立ち止まる。違う種類の音も聞こえる。見えないが大きな岩をショベルカーあるいは別の重機で退(ど)かそうか持ち上げようかしているらしい。岩のような物体が岩肌のような所に落ちる鈍(にぶ)い音がする。落ちた岩は割(わ)れてはいないようだ。

図書館に入る。閉館一時間前だ。持ち込んだノートPCを開く。四ヶ月返事を出していない文通相手へ手紙を書く。筆(ふで)が乗り始める頃、受付で女司書らが大声で騒(さわ)ぐ。集中できない。目の前の全面ガラス張りの峠(とうげ)の風景に風が強く吹く。山の緑に桜の桃色が一斉に揺れる。

図書館を後にする。スーパーへ急ぐ。風が冷たい。寒くて体が震える。追い風のなか全力でペダルを踏む。顔に虫が当たる。半キロも走ると体は温まる。路地に入る。朽(く)ちて積もった椿(つばき)の花びらに後輪を一瞬、滑らせる。

スーパーに入る。切れたシャンプーを籠(かご)に入れレジに並べる。女店員が同僚の話に大声で笑って置かれた商品に気づかない。

山からの風で竹がびゅうびゅう唸(うな)る。コンクリ橋で止まる。河面で魚が跳(は)ねる。「はねるのは鰡(ぼら)じゃろ」すれ違う老人が笑う。

今日は散歩のあちこちで重機も人間も鳥も植物も魚も騒がしかった。(796文字)


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