なにもいわないでいいよ
静かな朝だった。
カーテンの隙間から溢れんばかりに漏れ出る控えめだけど眩しい光、ベッドの傍らに脱ぎ捨てられた自分の足の形を記憶したままのスリッパ、半分だけ微かに膨らんだ、消失の惑星。
全部いつも通りの朝だった。だけど今日で終わるとわかっていた。
ひなちゃんのお家で消しゴムを盗ってしまった日から多分ずっと間違ってきたんだろう。
お腹が減っていた。
飲みかけの紙パックのりんごジュースと少ししけたバゲットを頬張る。ペットボトルが捨てられなくなって、洋服が畳めなくなって、それらが部