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店から街をたくらむ

こんばんは、「函館観光者」の佐伯です。

そして、あけましておめでとうございます。2021年ですね、

函館旧市街へやってきて、ちょうど明日で1か月となります。
内向きの威光に身を寄せる観光にこだわり、この街で営むお店に足を運んできました。いやそれはむしろ、共鳴したお店に自然と引き寄せられているかのようでした。だからこそ、それぞれのお店で、常に自分の心の深奥が温められるのでした。お店を営む人たちと、ひとり旅をする自分に、通じ合う精神があるように思われることも、その感覚を強める一因のようにも思えてきました。(前回の僕の記事はコチラへ)
お店と、そのお店をつくりあげた人々を、渡り歩いてきた1か月でした。

そんな観光の日々を経て、僕の視野は、個々のお店から函館西部地区という街へと広がってきています。それは、お店から街をたくらむ人たちに出会ったから。今日は、そんなお話です。

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最近、気づいたことがあります。
何人もの店主さんが、示し合わせたかのように、あるフレーズを口にするのです。
それは次のフレーズです。

「西部地区をなんとかしたい」

ドーナッツ&雑貨店「いどはどドーナッツ」の浜田いずみさんは、「わくわくの波動を届けて、西部地区を元気にしたい」と語ります。
このお店は、自ら創作した遊び心あふれるドーナッツと、自らセレクトした雑貨を販売しています。いまは店舗での販売だけですが、感染症が流行する以前は、移動販売車で西部地区内を回っていました。
それは、いずみさんが旦那さんとともに掲げた「810(はどう)計画」に基づくものです。わくわくの「波動」でこの街を幸せにするという世界観が、このお店には詰まっています。
「いどはどドーナッツ」さんがいまこのようにあるのは、ただドーナッツと雑貨を売りたいがためだけではないのです。

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パン屋「tombolo」の荢坂淳さんは「パンを手段として、西部地区を豊かな街にしたい」と語ります。
このお店は、自家製天然酵母・小麦・塩・水のみを使ったシンプルなパンを販売しています。一般的なパン屋にあるようなパンは、ひとつも見当たりません。天然酵母パンが日常生活の中にある街に、淳さんは「成熟さ」を見て取ります。
また、このお店にはパンを乗せるトレーもありません。そうすることで、お客さんと店員との間に自然と繋がりが生まれるようにしています。その想いは、tomboloという店名にも現れています。というのも、その名前は、函館の地形である陸繋砂州(別名トンボロ)に由来しており、離れたもの同士を繋げるという意味が込められているのです。
「tombolo」さんがいまこのようにあるのは、ただパンを売りたいがためだけではないのです。

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BAR「hanabi」の金崎昌之さんは「お酒と料理を介して、西部地区を函館市民にとってより身近な存在にしたい」と語ります。
このお店は、クラフトビールを中心としたお酒を提供しています。
マスターの金崎さんは、西部地区が函館市民と乖離していく現状を変えようとしています。観光地としての顔だけが目立つことで、西部地区は市民が日常的に足を運ぶ場所ではなくなっているのです。さらには、西部地区に暮らす人々が行く店と観光客が行く店も分断されてきているといいます。
金崎さんは、観光客と函館市民を繋げることを志し、近々西部地区内に新店を出すことを計画しています。
「hanabi」さんがいまこのようにあるのは、ただビールを売りたいがためだけではないのです。

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店が違えど、人が違えど、函館や西部地区に向かう想い、つまり「街への志向」があるのです。


そして、もうひとつ気づいたことがあります。
その志向が、僕に新鮮さと浪漫を感じさせ、僕の心を掴んでいるのです。

新鮮さを感じたのは、店を営む方とここまで深く接させていただいたことが無かったからというのもあるでしょうけれど、都会で育ったということも関係している気がします。

僕は神奈川県の横浜で生まれ育ちました。中学、高校、大学はすべて都内にあり、渋谷や新宿といった大都会が遊び場でした。
そこには、それはもう数えきれないほどのお店がありました。当然、飲食店や雑貨店もありました。決して単純化するつもりも非難するつもりもありませんが、しかし、ほとんどの店は、客ばかりを凝視していました。

それは、少なくとも常識的なことなのでしょう。
商売は、売り手と買い手という二者のゲームです。商品をお客さんに売り、利益を得る。売上データを蓄積し、お客さんが一層買いたくなるような商品開発へ生かす。そして、その新商品を売る。お店というものは、その螺旋状の構造の中にいる存在です。
たしかにこの街には、その構造外に位置するお店も輝きを放っているとはいえ、いまここでその是非を問いたいわけではありません。

問題なのは、都会ではお店が街を志向していないことです。
街についてはただ市場として捉え、その街に寄生するのみです。街は消費者に商品を売るための舞台に過ぎないのです。だから、街にいながらして、街を、街の未来を、見ることはありません。
それが、僕の目に映る都会のお店の在り方でした。

もしかしたら、都会で街を志向するなんてことは不可能なのでしょうか。
無数の店が客の取り合いに鎬を削るなかで、よそ見をする暇なんてないのかもしれません。あるいは、無数の人が出入りし行き交う都会では、一個人が街としての輪郭を捉えることなど出来ないのかもしれません。
だから、街への志向は、行政の役目だと思っていました。

そんな都会で23年間生きてきたから、お店が、しかも個人レベルで営むお店が「この街をどうにかしたい」という想いに突き動かされていることが新鮮だったのです。

浪漫を感じたのは、店と街のスケール差が原因です。
個人経営のお店を営むことは、相手にする人数や影響を及ぼす広さにおいて、街をつくることよりもスケールの小さなイメージがありました。
だから、個人経営のお店という小さなスケールの中にいながら、街づくりという大きなスケールを描くということは、「秘かな野望」として僕の目に映ったのです。その、お店が街づくりを「たくらむ」様が、僕に浪漫を抱かせたのです。


いくつもの個人経営の小さな店が街を志向し、街づくりをたくらむということに、僕は惹きつけられてしまいました。

なぜ、街への志向がこれほどまでに根付いているのでしょう。
たしかに、店主の方々には函館出身の方も多いです。生まれ故郷を盛り上げたい、という郷土愛が多分に作用していることは否定できないでしょう。

しかし、それだけではないと僕は思います。
それはきっと、この街ならではの何かなのですが、残念ながらそれはまだ靄の中です。

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前回の僕の記事はこちら

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⭐︎お店情報⭐︎
いどはどドーナッツ
営業時間:13:00 ~17:00
定休日:水・木
住所:函館市大町3-16
アクセス:市電大町駅すぐ
TEL:090-5075-5026
ホームページ:https://idohado.com/

tombolo
営業日時:11:00~17:00
定休日:月・火(祝日は営業)
住所:函館市元町30-6
アクセス:市電十字街駅より徒歩10分
駐車場 :なし
TEL:0138-27-7780
ホームページ:http://tombolo.jpn.org/

BAR hanabi
営業日時: 17:00~翌1:00 (L.O. 翌0:30)
定休日:水
住所:函館市宝来町34-1
アクセス:市電宝来町駅より徒歩3分
駐車場:なし
TEL:050-5572-3479

⭐︎宿泊施設情報⭐︎
SMALL TOWN HOSTEL Hakodate
私たちが情報を発信する函館旧市街(西部地区)の中心地で、ローカルの案内役を務める宿泊施設”スモールタウンホステル”のご予約はこちらから
https://bit.ly/3kR3Vwo


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