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“捨てる勇気っているじゃない?でも武器を絞るってすごい大事やなって。ひとつのジャンルとか、手法をマスターするのって本当、一生かかるかもしれないことだから”

13. 黒田卓也 / トランペッター

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NYを拠点に活動するジャズトランペッターの黒田卓也さん。

アメリカの歌手、ホセ・ジェイムズに見出され、日本人初のブルーノート・レコードと契約し、アルバムデビューをされました。

華々しい経歴を培っても、おごることなく、アートと実直に向き合い続ける彼のその姿勢や、心のありようについてお話しを伺いました。

■黒田卓也(クロダ タクヤ)
ジャズトランペッター。
NYを起点に自身のソロ活動をはじめ、DJプレミアやアコヤ・アフロビート・アンサンブルなど多岐に渡って活躍。2014年に日本人として初めてブルーノート・レコードと契約、『ライジング・サン』でワールドデビューした。
国内では、MISIAやJUJUとのコラボレーション、『報道ステーション』のテーマ曲「Starting Five」の演奏をJ-Squadのメンバーとして担当。
2018年から音楽忘年会として結成されたaTakでは黒田がホストとなり、 先日「ZASU」をリリース、新たな盛り上がりを見せている。

▶︎黒田さんへのインタビュー後に書いたわたしの編集後記です。このマガジンの主題でもある「自分らしさ」というものの形成の仕方について、一筋の光を指してもらったようなお話でした。

_今の仕事を始めたきっかけは?
中学生のときに『マウント富士ジャズフェスティバル』っていう、日本ですごい大きなフェスのビデオをクラブ中に観たんだよね。
その中ですごく、有名なトランペッターをカメラが背中から撮っていて、みんなが野外で地面に寝そべったり、座ったり、聞き惚れてる様子を見たときに、「うわ、こんなん将来やりたいな」と思ったのが最初。

それから大学に進んで、周りが就職活動をしだしたときに、同じようにすることが考えられなくて。自分に自信はなかったけど、諦めるにしても、ジャズの最高峰NYで試してみたいと思って、卒業後はアメリカに行くことにした。

でも俺、ほんと内弁慶で。家族の外では、人見知りだったし、海外に行くなんてとんでもないくらい怖くって(笑)
音楽があったから、それでも行ってみようと思ったけど「何かあったらすぐ帰ってきたんねん!」ぐらいの気合いで行ったよね(笑)

_自信を無くしたときはどうやって自分を軌道に乗せ直しますか?
自分で立ち直るしかないから、その気持ちと向き合う。書いてみるのがすごくいい方法だと思ってる。

意外と「調子悪い」っていう大きなファクターに支配されて、いざ書き出してみると問題だったのは2、3個だけだったっていうのはよくあることで。

ネガティブになることも単なる事実の1つだから、ちょっと引いてみたら「この2個さえなけりゃ、そんなに悪くないやん」とか気付けるものだと思う。


_発想やクリエイティビティの源泉は?
20代の頃はやっぱりいかに「あいつすごい」ってみんなに思ってもらえるかが源泉だったんだけど…。

34歳の時にすごいラッキーで、ホセ・ジェイムズっていうシンガーに見出されてブルーノート・レコードと契約できたのね。そこからは、彼や周りからいただいた自分のいる場所を大切に、自分にしかできないことをいつもゆっくりと考えている感じ。


_憧れや尊敬している人、あるいはロールモデルにしている人はいますか?
音楽的にはロイ・ハーグローヴさん。
NYで週に何回も彼が演奏するのを観に行って感動させられまくって。
トランぺッターとして彼と同じ時代に生きられたっていうのは、やっぱり感謝してますね。


_影響を受けたアドバイスはありますか?
ずっと教えてもらってたローリー・フリンク先生からの言葉やな。それは初めてのワールドツアーから帰ってきたときのことなんだけど…俺の前に演奏してたのが、ずっと憧れていた、そのロイ・ハーグローヴさんで。

ロイみたいになりたい!って彼の真似ばっかりしてやってきたのに、彼がいた同じステージに、同じお客さんを前に、彼の後に俺が吹くん…?と思ったら緊張しすぎて、頭が真っ白になっちゃって(笑)
みんなは「よかったよかった」って言ってくれるんだけど、自分の中では丸裸された感じ。

それで、帰りの飛行機の中でメモ書いて。
これからまたこういう大きなステージで戦っていくときに、今回みたいな感じやったら自分でいられない。パクリまくったロイさんの後に、黒田卓也になれなかった。どうしようって。

で、帰ってすぐにローリー先生のところに駆け込んだ。ガンガンガン!先生!ってドア叩いて。こういうことがあってと。自分は何もできなかったんで、もっと上手くならないといけないと思いました。だから、もっと厳しく指導してください。上手になりたいから、そのモチベーションに合わしてカモーン!みたいな感じで言ったら、先生は「うんうん、そうかそうか」って。

サラサラサラっと譜面を書いて、「じゃ、これやってきて」って言って俺に渡したのが、前回と全く同じ練習内容だった。

先生、これ前回と一緒よね?
「はい」って。
「あなたが初めてここに数年前来たときのことを思い出してください。今の自分と比べてどのくらい上達した?」って言うの。
いや、すごい上達しました。
「ですよね。これからも同じように頑張ってね。」って。

沸騰しまくったヤカンが水かけられて一気にしゅんっ…ってなった感じよね(笑)

もうひとつ。そのときにね、2人のすごい有名な過去のジャズトランペッターの名前を出された。クリフォード・ブラウンさんとケニー・ドーハムさん。

スタイルは全然違うんだけど2人ともめちゃくちゃ有名なジャズトランペッターでみんな大好きな人たち。でも、技術でいうと、明らかにクリフォードさんの方が高い。

その先生が2人を引き合いに出して、
「どっちの方が卓也にとって上手い?」って聞く。
いや、やっぱりクリフォードさんの方が絶対に上手です。
「じゃ、どっちの方が素晴らしいアーティストですか。」って先生が聞く。
いや、2人とも素晴らしいですって俺は答える。

「ですよね。トランペットを上手になるっていうのは、1つのファクターとしてすごい大事だけど、いいアーティストになるっていう意味ではないんだよ」って。

それはそこからの活動のモチベーションに本当になった。自分にしかできないことが何なのか、何がいいアートなのかについて、向き合うようになった。今も向きあっている最中です。


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_「自分らしさ」はどうやって形成されましたか?
_今日までに学ぶのに最も時間がかかったことや教訓を教えてください
_仕事をやり続ける原動力は?
_ 働く中で、あるいは生きてる中で大切にしているキーワードを教えてください
_これからの夢あるいは目標は?
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