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私が恋愛できない理由

28歳のときに付き合うことになった26歳の男が、変だった。国立大学を出て、地元の優良企業に勤める普通の男だ。 早く結婚したいという考えを持つ彼は、私を早く両親に会わせたいと言い、話題はほぼ結婚後の暮らしについてだった。 (とりあえず付き合ってみるか)くらいのテンションで付き合っている私は、今一つ彼の話に乗り切れない。「そうだね」「そうなんだね」くらいの相槌しか打てない。 私はコーヒー中毒者なのだが、「妊娠したら飲めなくなっちゃうもんね」と彼が言ったとき、最初から感じていた違和

    •  盆か正月のどちらかに、長野県に住む母と、同じく長野県に住む祖父母に会いに行っている。なんとなくこの正月と、前の盆は行かなかったので、1年半ぶりに行く予定を立てている。かれこれ17年続く文化だ。  今回行く理由も別段無いが、何となく母に連絡を取ったら、なぜか7月末を打診された。珍しい。私は本当に察しが悪いので、2ヶ月前に「祖母(86歳)が入院している」という話を聞いたのを本気で忘れていた。  便りが無いのは良い便り、ということで………と思おうと思ったが、やはり7月末が引っかか

      • 家族の終わり方

         たまに、「最後に家族揃ってごちそうさまをしたのはいつだったか」ということを考える。  私は3人家族で、両親の仲がそこまで良くないことに物心ついたときには気づいていたように思う。かといって両親はそこまで仲が悪いということもなく、あまり友人もおらず近所付き合いもあまりない両親が仮面夫婦を演じる必要もなく、まぁどこの家庭もこんなもんでは?と思える程度の子ども時代を送った。  欲しいものは買ってもらえ、食べたいものを食べて見たいテレビを見て、家族で外食や旅行をした思い出も一つや二つ

        • 何年経っても思い出してしまうなぁ。

           私が「若者のすべて」を聴いたのは、社会人になってからだった。多分、24,5の頃だと思う。  カウントダウンTVを一人リビングで見ながら受験勉強に励む高校3年生の私は「赤黄色の金木犀」を聴いて志村正彦を天才だと思い、出る曲出る曲みんなTSUTAYAで借りて、MDウォークマンで聴いていた。「茜色の夕日」まで。  「ロキノン系」の幼馴染みとはお互い実家に住みながら違う大学に進学し、彼女と同じ温度で音楽を愛する中学からの同級生は誰よりも頭が良かったのに大学には行かずに就職した。アジ

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          メメンとモリ

           私の勤める中学校には朝読書の時間があり、今朝本を忘れた私は自分のクラスの図書委員の選書である『メメンとモリ』を手に取った。中学生にそんなつもりはないだろうがこれを手に取る大人は多分疲れている。  これがよかった。10分間で読み切れたのだがじわりと心に残る。「メメントモリ」という言葉はミスチルきっかけで知った。なんとなくさみしくてこわい言葉だ。「生き物は別に楽しむために生きているわけじゃないからね」とメメンは言う。「思ってたのと違う」とびっくりするために人は生きている、と。

          メメンとモリ

          幸せの記憶③

           母は長く専業主婦だったが、私が大きくなった頃には小遣い稼ぎのためにパートに出るようになった。ジムにも通っていた。あまり家にいることが好きじゃなかったんだろう。まぁ夕方には帰ってくるので「寂しい思いをした」という話にはならない。  とはいえ、学校から帰ったときに家に母がいる日は嬉しかった。母は大体、寝室でごろごろと、図書館で借りてきた本を読んでいた。実家の寝室は風通しがよく、程よく田舎である我が家の窓からは夏の空が広く見えたものだった。その寝室には私が赤ちゃんのときに買われた

          幸せの記憶③

          別に能天気に笑えている

           私は終わった、と思ったのは2022年の12月だった。今は2024年の6月なので、別に終わっていない。  敬愛する藤原基央は「終わらせる勇気があるなら続きを選ぶ恐怖にも勝てる」と歌った。終わらせる勇気がなかった私であるが続きを選んだということだ。恐怖に勝てているとは言い難い。勝つとか負けるとか以前に戦わないようにしているというのが表現として正しい。  仕事に失敗した。  相対的には「別に?そんなもんじゃない?良いとは言わないし断罪する人はするでしょうけど、それがあなたの力量

          別に能天気に笑えている

          幸せの記憶②

          小学生の頃のある休日、父は私を「かに釣り」に誘った。建具屋を営む父が運転するトラックの助手席は、日頃はカタログや工具が積まれていて、私のみ乗ることが許されていた。 フェリー乗り場がある港の駐車場にトラックをとめ、公園と呼べなくもない敷地(テニスの壁打ちができるような壁があるので、ここで紐付きのボールを持って行って、テニスの練習をしたこともあるような気がする)を通り抜け、テトラポットのようなところに腰掛けて、父と私はかにを釣った。父はポケットからタバコを取り出して、さらにタバコ

          幸せの記憶②

          幸せの記憶①

          ふと頭をよぎる幸せの記憶がある。繰り返し思い出すから書き記すことにする。こういうのが枕草子になったりするのかもしれない。ならない。 小学生の頃の、土曜日の昼の記憶。午前中に学校に行って、午後に遊ぶ約束をして家に帰る。父親が用意したと思われる、お皿の半分に焼きそば、半分にごはんが乗ってるのとか、カップラーメンとか(我が家は母親が食生活にうるさくジャンクフードの方が子供心にごちそう感が残っている)を、吉本新喜劇を見ながら家族3人で食べる。吉本新喜劇は、小学3年生で同じクラスにな

          幸せの記憶①

          『推し燃ゆ』を読んだ時の話

          キャッチーなタイトルで「推し」をもつ全国の皆さんの関心を引き、芥川賞を受賞し本屋大賞も受賞した本作品をなぜすぐ読まなかったかというと私に「推し」がいないからなのだが、ベテラン国語教師である同僚の先輩が『くるまの娘』の単行本をくれて、読んでみたところ圧倒されたので、本作も読むに至った。結果、この話の主題は別に「推し」にまつわるあれこれ、というものではない気がした。 自分に関心のあることしかできない主人公。主人公に「ちゃんと」させたい周囲の人。当然主人公にそんなもの求めない存在

          『推し燃ゆ』を読んだ時の話

          セクシー田中さんを観ています

          「老いを受け入れる」ことを目標に掲げて2023年を生きてきた私にとって、まさにアンサー、天からの啓示ともいうべきドラマが放映されています。セクシー田中さんです。 たぶん何年も前から漫画の広告とかで見てきてるんだろう。「地味なOLが実は」みたいな筋書きで始まる漫画は多いし私にはそういうものしか目に止まらない。 これ、田中さんはただのいい人なんですけど朱里ちゃんと笙野が素晴らしすぎて目が離せません。コメディタッチでくすっと笑えて、ついに6話では笙野と田中さんの友情にボロ泣きし

          セクシー田中さんを観ています

          MIU404の劇伴を聴いて

          MIU404が好きである。 夏休みが終わる頃またアマプラで観れるようになっていたので観ている。5周目くらい?青池透子の個人データをはじめて一時停止して見たんだけど誕生日の次の日にあの事件だったなんてむごい。 ところでApple Musicで劇伴が聴けることを知った。 私の思うベスト劇伴の1位はアンナチュラルで、そのあとグッドワイフ、MIU404、 PSYCHO-PASS、アルドノアゼロと続くのだが得田真裕氏が所属しているのがワンミュージックで師事したのが菅野祐悟氏ということ

          MIU404の劇伴を聴いて

          好きなもの百裂拳

          あまりにも気持ちが落ち込んでいるけれど生きていかなくてはいけないですね。noteで好きなもの百裂拳なるものを拝見してこれだ!と思ったのでやってみましょうと思いました。多分一回で百いかないから何回かに分ける。 猫 BUMP OF CHICKEN パスタ 及川ミッチーや福士誠治といった地味な顔のイケメン BTSのJIN(↑?) 海 大型橋梁 肉 可愛いネイル 星モチーフ コーヒー チーズケーキ 瀬尾まいこの小説 スクエニのRPG 熱い漫画 ホワイト

          好きなもの百裂拳

          猫の余命

          飼っている猫の食欲が落ちている気がして、仕事から早く帰れた日に動物病院へ連れて行ったら、悪性リンパ腫で余命は長くて100日、と言われた。それから40日ほど経つ。 抗がん剤を投与しながらの猫は食欲にムラがあるので、少しずつ痩せていく。お風呂場の床とかシューズボックスの下とか今までそんなところにいなかったじゃん、というようなところにいる。 でも朝は私を起こしにくるし、私に目薬をさされるのが嫌でニャーニャー鳴く弟猫の声を、いじめられていると思って助けに入ろうとしたりする。 大事なこ

          猫の余命

          「いまこそ、ちゃんと生きるときだ。」

          大袈裟だが年末年始より個人的に生死の境をさまよっているため、著名な精神科医の方々と(心の)距離がぐっと近づいている。その中でも目に留まるのは大抵この方のお名前であるので、著書を購入して拝読している。 ちなみに買ったのは、あと2冊。 生死をさまよっている、と言いながら完全に生きようとしていてウケる。ちなみにこの三冊、現代医学、東洋の神秘、禅の教え、という異なる観点でありながら「早寝早起きをしろ」「朝起きてすぐ白湯を飲め」「運動をしろ」が共通アドバイスであるのが興味深い。私は怠

          「いまこそ、ちゃんと生きるときだ。」

          楽しもう。

          滅法楽しくない。三浦春馬、竹内結子、芦名星、神田沙也加…と、あいついで同年代が命を絶った2020年代よりこちら、「30代、40代は楽しい」なんて嘘だ、と確信を強くしていた。とはいえ本当に身近にいる同年代は子育て真っ盛りで、それはお気楽な独身には想像もできぬハードな日々を生きているのだろうけれど、そこには「確かなもの」があるわけで、それは「楽しみ」だろうし、そうであってほしい。 一方、仕事に手応えがあるでもなく大した趣味もない独身30代は楽しくない。お金も時間も、自分のために使

          楽しもう。