猫の余命

飼っている猫の食欲が落ちている気がして、仕事から早く帰れた日に動物病院へ連れて行ったら、悪性リンパ腫で余命は長くて100日、と言われた。それから40日ほど経つ。
抗がん剤を投与しながらの猫は食欲にムラがあるので、少しずつ痩せていく。お風呂場の床とかシューズボックスの下とか今までそんなところにいなかったじゃん、というようなところにいる。
でも朝は私を起こしにくるし、私に目薬をさされるのが嫌でニャーニャー鳴く弟猫の声を、いじめられていると思って助けに入ろうとしたりする。
大事なことであればあるほど、ネットの情報が自分を助けてくれることはない、と思うまでに2週間もかかった。猫が何を食べたくて、何をしたくて、何をしたくないかは、猫を見つめることでしか分からず、分からないことの方が多かった。何の記事を読んでも納得できないけれど、これまで通ってきた獣医さんの言葉なら腑に落ちた。
これまで身体によくないからと、猫には食べさせなかった人間用の塩鯖を、「食べる?」と切り分けて、それを目の前で食べる猫を見るとき、一緒に生きていると、はじめて実感したような気がした。
まだ猫の病気に気づいていなかった7月のはじめ、私は自分のクラスの子どもたちが七夕の短冊を書くのを眺めながら、何も願わなかった。天に願って失いたくないものが自分にあることに気づきもせずに、私はその1日を過ごしていた。

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