幸せの記憶②

小学生の頃のある休日、父は私を「かに釣り」に誘った。建具屋を営む父が運転するトラックの助手席は、日頃はカタログや工具が積まれていて、私のみ乗ることが許されていた。
フェリー乗り場がある港の駐車場にトラックをとめ、公園と呼べなくもない敷地(テニスの壁打ちができるような壁があるので、ここで紐付きのボールを持って行って、テニスの練習をしたこともあるような気がする)を通り抜け、テトラポットのようなところに腰掛けて、父と私はかにを釣った。父はポケットからタバコを取り出して、さらにタバコからフィルターを取り出して竿につけた。かにが釣れたかどうかは覚えていないが、その頃の私は母が働きに出るようになって毎日寂しくて、だから父が遊んでくれてるんだなと思ったことは覚えている。多分小学生4年生ごろだった。

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