『水辺のビッカと月の庭』 第3話
月夜に帰る
「あいつ影も形もなくなっちゃたね」
びっくりした様子でムンカが言います。
「本当に居たのかな」
ビッカは不思議そうな面持ちで言います。
「あの整備員、いつもあんな調子なの?」
ムンカはつまらなさそうに歩きはじめたヒロムに尋ねます。
「ブランコを揺らしていると、あの男が姿を現すんだ」
ビッカとムンカはなるほどとうなずきます。
「いつの間にか、後ろとか前とかに姿を見せるんだ」
「それってなんか気味悪い」
ムンカは尾を震わせながら言います。
「初めは一言もしゃべらなか