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旅先の夏にて|詩

「旅先の夏にて」

夏の真似事をした坂道のさき
潮の薫りよりも強い瞳の向こう側に
モノクロの優しさがうずくまる

下りかけた言葉の尻尾をつまんで
ひょいと掬いあげ微笑むと
僕は選ばれたから此処にいる
そう言って君は僕を抱きしめた

水割りを頭から浴びるような夜
物言わぬ背中に時を重ねた

愛だとか、恋だとか
例えば悲しい物語だとしても
確かに其れは
僕のためだけに書かれた小説だった

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