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アキレス腱と天丼と私


天丼ってなんであんなに美味しいの? 窓から星を見ながらつぶやいて見る。どなたかご存知なら、そっと答えを教えて欲しい。そんな和食界のドン、天丼。

ダイエット中でカロリーの高いものを控えている俺が、そんな天丼への熱い思いを友人に伝えたら、彼女は俺のダイエット自体にはあまり興味がないようだったが、その代わりに、「そういえば、腱(けん)を英語で tendon というが、印象が強くてすぐに単語は覚えたものの、文章の中では出会ったことがない」と言った。腱とはご存知の通り「筋肉を骨に結合する繊維性組織の束」、要するに筋肉と骨をつなぐスジである。

そうなのだ。天丼はこれほど有名なのに、腱を英語で tendon と呼ぶことは一般にはそれほど知られていない。腱をテンプラにして御飯の上に載せてタレをかけて、「これがホントのテンドン、なんつって」なんて言っても、そこに秘められた笑いに気づく人は稀だろう。だがそもそも「腱」なんて、「肉のハナマサ」でも見かけたことがない。

そんな腱。その中でも唯一知られている腱のエースと言えばアキレス腱だろう。英語で言うと the Achilles tendon だ。皆さんもアキレスの名前は聞いたことがあるのではないだろうか。私も「なんかギリシャ神話か何かに出てきた足が速い人だっけ」というくらいの認識ならある。靴のメーカーの名前になっているくらいなので、とにかく何か足関係の人なんだろうなとも思う。

しかし、だからって足のここ(指さしてる)をなぜ「アキレス腱」と呼ぶのだろう。なんとなく「アキレスの急所だったから」みたいな話を子供の頃に聞いたような記憶もあるが、薄ぼんやりとしか覚えていないので今回ちょっとググってみたのである。するとそこにはこう書いてあった。

【アキレス腱の語源・由来】
アキレス腱の「アキレス」は、ギリシャ神話の英雄『アキレウス』のラテン語名。 アキレスのギリシャ神話によると、アキレスが生まれて間もなく、母のテティスが冥界のステュクス河に頭から彼の全身を浸し、アキレスは不死身となったが、 その時、母がかかとをつかんでいたため浸すことが出来ず、そこがアキレスの急所となってしまった。

ギリシャ神話とはなんとドラマティックなのだろうか。踵(かかと)が不死の水につからなかったため急所になっただなんて。しかも「母のテティスのステュクス河」なんてアナウンサーだって三回続けて言えない。

そしてものの本によると、「その後アキレウスは人中最大の英雄となりトロイア戦争で活躍したが、ついにはパリス王子に弱点のかかとを弓で射抜かれ命を落とした」というのである。

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そんなに凄い英雄だったのか、アキレス。辛かっただろう、そして無念だっただろう、アキレス。そんなことがあったとは知らず、小麦粉にまぶして揚げようとした俺を許して欲しい。

しかし、そうだよなアキレス。人間明日のことなど判らないよな。

俺は窓から空を見上げると、今日はもうダイエットのことは忘れて天丼食べちゃおうと決めたのである。



(了)

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