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恋愛エッセイ『過ぎ去ったいくつもの夜』

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このマガジンでは過去の恋愛について書いたものをまとめました。いくつもの夜が過ぎて、あなたに幸せが訪れますように。
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#恋人

そばにいるのに、いない人

そばにいるのに、いない人

 あたしは安らいで、恋人の体にもたれる。恋人の体は頑丈で大きく、あたしがもたれかかったところで、びくともしない。彼はTVから目を離さずに器用に缶ビールを持ち替えて、片手であたしの体をなでる。額やら、胸やら、唇やら、顎やら。あたしは目を閉じて恋人の体温と匂いを感じながら、あたしたちが今ともに生きていることを確信する。

 ともにいる時間を幸福に感じることが、そもそも幸福なのだ、とあたしは知っている。

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一年のおわりに貴方は誰と過ごしますか

一年のおわりに貴方は誰と過ごしますか

 別れて数年経つ昔の恋人を思い出すことは、もうほとんどない。それなのにふと思い出すのは、きっともうすぐ一年が終わるからだ。
 当時、あたしと彼は一年の終わりを一緒に過ごすのが常だったのだ。

 彼はあたしよりも3歳年上だったけれど、どこか少年のような人だった。苦手な食べ物がたくさんあって、カラオケと体を動かすことが大好きで、人に批判されるといつもムキになって反論するような人だ。
 あたしの価値観や

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ありふれた秘密

ありふれた秘密

 誓って言うが、恋に落ちたわけじゃない。あたしには愛するパートナーがいるし、彼以上に大切なものはこの世に存在しない。それなのに気が付けばあたしは、ある一人の男と少しばかりややこしい関係性になっている。

 その人はあたしよりもいくらか年上で、お洒落ではないけれど身綺麗にしている。細いフレームの眼鏡がよく似合っていて、親切で、すばらしく頭がいい人だ。
 あたしとその人——その人のことをここでは先生と

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